「デッド・ドント・ダイ」特集|ファンアンケートも実施!私たちの好きなアダム・ドライバー。 “スマホ・ゾンビ”はあなたかも…!?ジャームッシュ監督がゾンビコメディをつくったワケ

「パターソン」などで知られるジム・ジャームッシュが手がけたゾンビ映画「デッド・ドント・ダイ」。新型コロナウイルス感染拡大の影響で公開延期となっていた同作が、ついに6月5日に封切られる。アメリカの田舎町センターヴィルの警官たちが、突如発生したゾンビに立ち向かうさまを描いた本作。ビル・マーレイ、アダム・ドライバー、ティルダ・スウィントン、クロエ・セヴィニー、そしてイギー・ポップら、ジャームッシュ作品のオールスターが集結し、“コーヒー・ゾンビ”や“スマホ・ゾンビ”といったキャッチーな生ける屍がユーモアを添えている。

映画ナタリーでは、本作の魅力を紐解く特集を展開。まず前半では、「スター・ウォーズ」のカイロ・レン役や「マリッジ・ストーリー」などで知られ、人気急上昇中の実力派俳優アダム・ドライバーに焦点を当てる。熱いアダムファンを公言する業界人・映画ファン約60人に“アダム・ドライバーの魅力”に関するアンケートを実施したほか、本作で見られる彼の新しい一面を解説。そして後半では、ジャームッシュがゾンビ映画というフレームを通して本当に描きたかったものとは?という真のテーマを、彼のインタビューなどから追求していく。大のアダム・ドライバーファンである德永明子、そしてジャームッシュ流ゾンビ映画の魅力をインパクト大に切り取った川原瑞丸のイラストにも注目してほしい。

文 / 浅見みなほ イラスト / 德永明子(P1~2)、川原瑞丸(P3)

私たちの好きなアダム・ドライバー。

まずは「デッド・ドント・ダイ」のアダム・ドライバーの魅力をイラストで紹介!
後半では場面写真と動画でさらに魅力を徹底解析!

イラスト / 德永明子

Illustration
德永明子が描き下ろした「デッド・ドント・ダイ」のイラスト。
Profile

アダム・ドライバーについて知ってほしい6つのこと アダムの基礎情報をおさらい!

アダム・ドライバー。写真提供:Faye''s Vision / Cover Images / Newscom / ゼータ イメージ
大きな体とセクシーボイス
アダム・ドライバー(写真提供:Image Press Agency / Sipa USA / Newscom / ゼータ イメージ)

1983年11月19日生まれ、米カリフォルニア州サンディエゴ出身。約190cmの高身長と、鉤鼻、大きな耳が特徴。手も大きく、手首から指先は約21cm、中指は約10cm(※腕時計の広告から編集部が推測)。落ち着いた低音ボイスも魅力で、その歌声は「マリッジ・ストーリー」や、淡々とハモる姿がシュールな「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」で聴くことができる。しかしアダム本人は自分の演技や歌を振り返るのが大嫌い。ラジオ番組で歌唱シーンが流れた際には、こらえきれず退席してしまったほど。なおアダムは2013年に、自身と同じジュリアード音楽院出身の女優ジョアン・タッカーと結婚。SNSなどのアカウントを持たず、私生活には謎も多いアダムだが、2019年に1人息子がいるとスクープされ、本人もそれを認めた。

9.11で自分自身を見つめ直し、海兵隊へ
「GIRLS/ガールズ」撮影中のアダム・ドライバー。筋肉質な体が確認できる1枚。(写真提供:Jose Perez, PacificCoastNews.com / Photoshot / ゼータ イメージ)

インディアナ州のミシャワカという田舎町で育ったアダム。高校卒業後は俳優を志してジュリアード音楽院を受験するも、不合格に終わった。そして当時の恋人に別れを告げ、わずかなお金を持ってロサンゼルスを目指したが、なんとテキサスで車が壊れて資金が尽きてしまう。結局サンタモニカでビーチを散策し、ロスにたどり着くこともなく帰宅した。家賃を納めて実家の部屋に住み、芝刈りやテレマーケティング、掃除機の販売などをして生活していたアダムだが、2001年9月11日の同時多発テロをきっかけに海兵隊へ入隊。人間関係にも恵まれたそうで、兵役経験についてアダムは「人生で誇れることの1つです」と語っている(ちなみに当時は、もう1人の耳の大きい新兵とともに、周囲から「イヤーズNo.1」「No.2」と呼ばれていたそう)。しかしアダムは、マウンテンバイクの事故を受け退役。ひどく打ちのめされたというが、その後ジュリアードを再受験し、見事合格する。2009年に卒業を果たした。

名監督から引っ張りだこ
左からアダム・ドライバー、ジム・ジャームッシュ。(写真提供:Abaca Press / Marechal Aurore / Abaca / Sipa USA / Newscom / ゼータ イメージ)

アダムが映像作品で脚光を浴びたのはドラマ「GIRLS/ガールズ」。主人公ハンナの恋人“アダム”を演じ、2013年から2015年のエミー賞に連続でノミネートされた(不安定な青年役のアダムが基本的に上半身裸で登場する本作は、ファン必見のシリーズと言える)。さらに2014年には「ハングリー・ハーツ」で子供を守ろうとする父親を演じ、ヴェネツィア国際映画祭の男優賞に。そして2018年には「ブラック・クランズマン」、2019年には「マリッジ・ストーリー」でアカデミー賞やゴールデングローブ賞の候補になった。演技派のアダムは、クリント・イーストウッド、スティーヴン・スピルバーグ、ジョエル&イーサン・コーエン、マーティン・スコセッシ、スパイク・リー、テリー・ギリアム、ノア・バームバックといった名監督の作品への参加が続いており、まさに“出演作にハズレなし”の無双状態。そして「デッド・ドント・ダイ」は、「パターソン」に続く名匠ジム・ジャームッシュとのタッグとなる。

愛されヴィランのカイロ・レン
笑顔のアダム・ドライバー。(写真提供:Hahn Lionel / ABACA / Newscom / ゼータ イメージ)

アダムを一躍有名にしたのは、ご存知「スター・ウォーズ」シリーズのカイロ・レン役。悪役ながらどこか憎めない人間らしさを垣間見せ、その名を世界に轟かせた。さらに彼は、コントでもその演技力をフル活用! バラエティ番組「サタデー・ナイト・ライブ」では、これまでに2回、「もしもカイロ・レンが一般労働者 / インターンのふりをして自分の組織に潜入したら?」というコントに出演。悪く言われるとすぐ相手を殺してしまう傍若無人ぶりと極端な繊細さで、大爆笑をさらった。なおアダムは同番組で、過去にも「アラジン」パロディのコントや、“ゴールデングローブ賞を受賞したどうしようもない俳優夫婦”などのコントに参加しており、その動画は公式YouTubeで視聴可能だ。

チャリティ団体の発足
左からジョアン・タッカー、アダム・ドライバー。(写真提供:Euan Cherry / Photoshot / ゼータ イメージ)

元軍人のアダムは、妻とともに2008年に非営利団体「Arts in the Armed Forces(軍隊のための芸術 / 通称AITAF)」を立ち上げた。これは「軍と市民という一見異なる2つの集団を結び付け、人々に娯楽を提供する空間を作りたい」というアダムの考えが発端となった組織。軍人時代、クイズに正解するとチアリーダーとデートできる、といったような“強制された典型的な娯楽”を体験したアダムが、“恩着せがましくない芸術”の提供を目指して始めたものだ。AITAFはこれまでに、クウェートや韓国、日本の基地、そしてニューヨークの劇場などで軍人たちに演劇プログラムを提供してきた。参加アーティストにはアダムのほか、ジェイク・ギレンホール、ローレンス・フィッシュバーン、デヴィッド・ハーバー、マーク・ラファロ、ベン・スティラー、リリ・テイラーも名を連ねている。

犬好きに悪い人はいない
左からマーク・ハミル、アダム・ドライバー。犬好きの2人は「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」のPRのため、2017年にそろって来日している。(写真提供:KEIZO MORI / UPI / Newscom / ゼータ イメージ)

「パターソン」でブルドッグのマーヴィンとテクテク散歩するキュートな姿を見せてくれたアダム。実はアダム自身も、愛犬のムースを溺愛している(2017年のインタビューでは「何よりも愛してる」と語るほど)。ロットワイラーの血を引く雑種であるムースは、アダムが妻から誕生日にもらったプレゼント。ハロウィンが大嫌いであるアダムは、「犬がいればハロウィンも一緒に遊んで過ごせる」としつこくおねだりしたという。さらにアダムの犬好きエピソードはほかにも。2019年にミュージカル映画「Annette(原題)」の撮影中、監督レオス・カラックスの愛犬ジャヴェロが失踪してしまった際、アダムは自ら動画に出演して「ジャヴェロは大事なクルーの一員なんだ」「もし見つけてくれたら、映画に出してあげるし、僕らが子供に名前を付けてもいいし、チョコレートだってあげる」と人々に協力を呼びかけた。またアダムはSNSを使っていないため、その動画は「スター・ウォーズ」シリーズで共演したマーク・ハミルのInstagramにアップされたのだから驚きだ。なおハミルは「Annette」には一切関わっていない(そして彼のInstagramには高確率で犬が登場する)。尽力のかいあって、ジャヴェロはその後無事発見された。