無門は僕に近い、基本何もしたくないという意味で(大野)
──大野さん演じる無門は妻のお国に頭が上がらないというキャラクターでした。
大野 (石原演じる)お国が無門をすごく叱るんですけど、芝居というよりリアルな感じでしたね。
石原 どういう意味ですか?(笑)
大野 リアルにグサッと来るんですよ。
石原 ああ、そっちですね!
大野 うん、怒られて家に入れてもらえないのとかさ。あと「侍になりなさい」って言うお国に、「いやだ、このままがいい」って返したときのあの目付き。(おびえるように)あーっ!となりました。芝居なのに、夫婦間のリアルさが常にありましたね。
石原 私も無門に対して、本当にこの人は……!という思いは常々ありました。「いやあ、のんびり暮らせたら」なんて言うから、えっ何を言っているの!?となったり(笑)。だから気持ちは入りやすかったです。もちろん、イラッとしたのは役柄に対してですよ(笑)。大野さんは演じるのに無理したところはありました?
大野 ないよ。(中村義洋)監督から「そのままやってくれ」と言われてたから。「真剣な顔はそんなに必要ない。へらへら笑っていてほしい」と。僕の場合、読み合わせで普通にセリフを発したとき、さとみちゃんが「無門だ!」と思ったっていう感覚がよくわからないかな(笑)。だから変に作ったりせず、そのままの自分でいました。僕に近いっちゃ近いですからね、無門は。基本何もしたくないという意味で(笑)。
──普段は怠け者の無門ですが、伊賀一の忍びという設定もあります。メリハリは意識しましたか?
大野 そんなにないです。真剣なアクションシーンもありますが、基本はのうのうと。無門は戦うのも面倒に思うほど何もしたくないけど、心の中に秘めているものがある。でもその感じはあまり表に出さない。監督と話していく中で、そういう無門像が自然とできた気がします。
土下座してすがってくる愛には母性が働く(石原)
──そんな「何もしたくない」無門が、お国に惚れて連れ帰ってきてしまいました。いったいどこに惹かれたのでしょう。
大野 単純に一目惚れじゃないですかね。美しさに完全にやられたんでしょう。術にもかからないし、これはもう土下座して、お願いします!と言うしかないなと。
石原 お国って武士の娘なので意思が強いし、おそらく計画的でもあるんです。ストーリー上は「無門にさらわれた」とありますが、私はお国が連れ去られるような人間ではないと思う。きっとこれまで土下座してすがってくるような人間に出会ったことがないですよね。そんな中で無門を見て、この人と一緒にいたらどうなるんだろう?という不安やワクワクがあったんじゃないでしょうか。
大野 確かに、それはあるかも。
石原 あとは母性な気がしますね。ほっとけないとか、しっかり手綱を握っておかなきゃみたいな気持ちは理解できました。お国を演じて、無門みたいにずっと追いかけてきたり、土下座するくらいの愛には母性が働くんだなと発見しました(笑)。
──無門にピシャリとぶつけるセリフは爽快さもありました?
石原 そうですね、同じ状況だったら私も言うだろうなと(笑)。台本読みながらワクワクしていたんですよ。どんなふうに言おうかなって。
現場で繰り広げられるコントを眺めていました(大野)
──中村組の現場についてもお聞かせください。大野さんは主演作「映画 怪物くん」に続いて2回目の中村組になりました。
大野 6年ぶりですかね。基本は何も変わってなかったかな、監督の空気感も。いつも現場で、コント? 小芝居?みたいなことをされてるんですよね。
石原 小芝居って?
大野 監督がカメラマンさんたちと、急にコントみたいなことを始めるんだよ。なんて言えばいいんだろう。真面目に「ここはこうして」とか指示を出しているんだけど、そのまま監督がぐっと入り込んじゃうみたいな(笑)。それで周りのスタッフさんたちも乗っかり出して。とにかく監督が終始楽しみながらやっているのが伝わってくるんですよ。
──そういうとき、大野さんはどうされているんですか?
大野 眺めていました。(ニコニコしながら)あ、楽しそうだなー。よかったよかったって(笑)。
──石原さんは中村監督と初めて組んでみていかがでしたか?
石原 すごく的確に指示してくださるので、本当にわかりやすかったです。
──例えばどのような演出を?
石原 最初のほうのシーンで、お国が無門に「あなたこう言ったじゃない!」ってセリフをぶつけるシーンがあるんです。私はずっと無門を見たまま、追い詰めるように演じていたんですよ。そうしたら監督に「(目線を)外してみようか」と言われて。その通りにやってみたら、ちょっと柔らかさが出たんです。お国はただ気が強いだけじゃなくて、まったくもう!的な部分もある女性なんだって、そのときわかった気がして。
──たった一言でキャラクターに広がりを出せるのはすごいですね。
石原 「もっと柔らかくして」って言うだけの監督もいると思うんです。でも中村監督は、どうしたら柔らかく見えるかを具体的に表現して、気付かせてくれる。優しいですよね。そういう場面の積み重ねでした。
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監督が「ちょっと動き考えてくれ」って(大野)
- 「忍びの国」
- 2017年7月1日(土)全国公開
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時は戦国。魔王・織田信長は勢力を拡大し、織田家の天下統一に向け猛進していた。次に狙うは伊賀の国。そこには人を人とも思わない非情な忍者衆が暮らしていた。忍びの1人である無門は、彼の前ではどんな堅牢な門も意味をなさないと形容されるほどの凄腕ながら、普段は怠け者で、女房・お国に頭が上がらない。一方、無門の強さに匹敵する伊賀忍者・下山平兵衛は、家族の命でさえも粗末に扱う伊賀の考えに疑念を抱く。ある日、ついに織田の軍勢が伊賀攻めを開始。平兵衛が祖国を裏切り、伊賀への手引きを行ったのだ。武力・兵力では到底敵うはずもない伊賀だったが、無門率いる忍びの軍団は秘策を用意して織田軍に対抗する。
- スタッフ / キャスト
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監督:中村義洋
原作・脚本:和田竜
主題歌:嵐「つなぐ」
出演:大野智、石原さとみ、伊勢谷友介、鈴木亮平、知念侑李、立川談春、國村隼、マキタスポーツ、平祐奈、満島真之介、でんでん、きたろう
ナレーション:山﨑努
©2017 映画『忍びの国』製作委員会
- 大野智(オオノサトシ)
- 1980年11月26日生まれ、東京都出身。1999年、嵐のメンバーとしてデビュー。2011年、中村義洋監督作「映画 怪物くん」で映画単独初主演を飾った。ドラマ主演作には「魔王」「歌のおにいさん」「鍵のかかった部屋」「死神くん」「世界一難しい恋」などがある。絵画やオブジェの創作に励むクリエイティブな一面も持ち、2008年と2015年に個展「FREESTYLE」「FREESTYLE II」を開催した。
- 石原さとみ(イシハラサトミ)
- 1986年12月24日生まれ、東京都出身。2003年、映画デビュー作「わたしのグランパ」で第46回ブルーリボン賞新人賞をはじめ多数の映画賞を獲得する。2006年公開「北の零年」で第29回日本アカデミー賞優秀助演女優賞に輝いた。2016年公開「シン・ゴジラ」は第40回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞し、自身も助演女優賞に選出された。そのほか近年の出演作に「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」シリーズ、ドラマ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」など。