映画ナタリー Power Push - 「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」松岡禎丞&戸松遥インタビュー
ひたむきな姿と具なしパスタにぐっとくる!? 初心を思い出させる圧巻の物語
井上芳雄さんは本当にカッコよかった(松岡)
──友情や愛情を感じさせる場面などさまざまな魅力的なシーンがありますが、特に好きなシーンを教えていただけますか?
戸松 正直ありすぎて選べないんですけど……一番最後の戦闘シーンは本当に鳥肌が立ちました。戦闘シーンに関しては、どれもカット割がすごく細かくて、アフレコしてるときも4、5カットがあっという間だなと思いました。劇場の大きなスクリーンで観ると自分もその場にいるんじゃないかと錯覚してしまうほどの臨場感を覚えるんじゃないかな。あとキャラクターそれぞれの個性も出ていて、クライマックスの戦闘シーンは圧巻でしたね。
松岡 本当に、終盤にかけての加速具合はすごいですよね。僕的にはエイジとキリトの戦闘シーンもオススメなんですが、エイジがクラインの首を持って、モンスターに突き付けているシーンがすごく怖いです。
戸松 怖かった。それ考えられるエイジの発想すごいよね。
──エイジはミュージカルを中心に活動する俳優の井上芳雄さんが声を吹き込んでいます。共演されていかがでした?
松岡 一緒に収録させていただいたんですが、吸収がすごく早くて「本当に初めてのアフレコなんですか?」って思いました。ミュージカルという生で観客と向き合う世界で場数を踏んできた方の度胸というか、普通だったらあたふたしてしまうと思うんですけど、すごくビシっとされていて本当にカッコよかったです。
──声の演技も素晴らしいですね。
松岡 はい。あと疑問があったら聞いてきてくださるんで、僕も真剣に返さなくては失礼だと思い気が引き締まりました。いい意味で緊張感を持って井上さんと向き合うことができました。
──お二人はキリトやアスナとして山寺宏一さんや子安武人さんなどそうそうたる方々と衝突してきたわけですが、今回はその相手が井上さんという他分野の第一線で活躍する方だったことが効果的に働いたと思いますか?
戸松 ほかのゲストキャストの神田(沙也加)さん、鹿賀(丈史)さんも、私たちにはないものをたくさん持っていらっしゃって、そういうふうに役作りされるんだって発見がありました。普段は違う場所で活躍されている方とご一緒させていただくとすごくいい刺激になりますし、今回も本当に勉強になりました。
──神田さんはARアイドル・ユナとして歌声も披露されています。
戸松 どの曲も素晴らしかったです。戦闘シーンで流れるんですけど、イントロが流れただけでゾクッとさせられる曲もあって、シーンの緊張感を高めてくれていました。しかもキャラクターの内面とリンクするような曲調になってるんです。
──ユナの歌は、2月22日に発売されるサントラにも収録されていますね。
戸松 カッコいい曲だけじゃなくて、アイドルらしいかわいい曲、前向きになれる楽曲もあっていいんですよね。しかもアスナがリズたちとカラオケをする場面があって、少しだけど歌わせていただけてうれしかったです。
アスナが歌っていると思ってもらえることが大切(戸松)
──お二人もそれぞれキリト、アスナとして歌を歌われることがあるかと思うんですが、そのとき注意することはありますか?
戸松 気持ちとしてはそのキャラクターとして歌わせていただくので、歌詞を読んで、このキャラクターだったらどういうふうに歌うのかな、表現するのかなっていうことを考えますね。アスナの場合は、ふわっとした柔らかい声質を表現することを心がけてます。裏声を多めにしてみたりとか技術的な部分で意識することもありますけど、何よりも聴いてる人にアスナが歌っていると思ってもらえることを大切にしています。
松岡 キリトの声は、ずっと演じてきて体の中に入っているので、キャラクターソングはその延長線上にあるのかもしれませんね。アフレコで培ってきたことを踏まえたうえで歌っているんだと思うんです。もし「先にキャラクターソングを」と言われたら絶対歌えない。
──3月22日にはキリト、アスナの楽曲が入った「ソードアート・オンライン ソングコレクションII」も発売されますね。聴きどころを教えていただけますか。
戸松 アスナとして「Tomorrow's Rosario」「空へと宛てた手紙」を歌わせていただいています。どちらも歌詞から《マザーズ・ロザリオ》編の記憶がよみがえってきて、その気持ちを大切にしながら歌わせていただきました。
──「空へと宛てた手紙」は新曲ですが、歌ってみていかがでした?
戸松 ユウキ(CV:悠木碧)との楽曲になるんですが、離れてしまってからを歌った曲なのですごく切ないんです。でもユウキと一緒に歌えたことで、離れてしまっても心はつながっているという歌詞をより強く感じさせる楽曲に仕上がっています。あと、楽曲は明るくポップなので、1つの別れを乗り越えて前向きに進んでいくアスナを表現できたらなと思い歌わせていただきました。
松岡 僕は沢城(みゆき)さんと一緒に「BLAZING BULLET」という楽曲を歌わせていただいたんですが、第2期の《ガンゲイル・オンライン》編の雰囲気が如実に表れた歌詞になっています。沢城さんの声に乗っかっていく箇所が難しかったですね。シノンとキリトが一緒に1つの道に向かって突き進んでいこうとする気持ちを疾走感、爽快感とともに受け取れる曲になっています。
──ユナの楽曲の一部、ならびに劇伴はテレビシリーズ同様、梶浦由記さんが手がけられていますね。
戸松 そうなんです! だからユナちゃんの歌は新しい楽曲なのに、すごく「ソードアート・オンライン」になじんでました。
松岡 1回ライブで梶浦さんによるテレビシリーズの楽曲を聴かせていただいたんですけど、鳥肌が立ちました。作られる曲が本当に神秘的ですよね。梶浦さんの音楽をはじめとするさまざまな音により、自分の演技が全然違うもののように受け取れるんです。
敵を敵とは思えない(松岡)
──では最後にこれから作品を観る方々に一言お願いします。
戸松 今まで、テレビシリーズを観てきてくださった人は涙腺が崩壊してしまうシーンが要所要所に詰まっています。私は号泣しちゃいました。新しい登場人物はもちろんですが、それ以外のところでもいろんな人間ドラマが描かれていて、キャラクターの表情なども、後に生かされる伏線になっていたりと演出もすごく細かいんです。約2時間の中にいろんな要素が凝縮されていて、あっという間に時間が過ぎるんですが、全部のシーンに意味があるのでまばたきするのも惜しいぐらいの作品になっています。
松岡 冒頭に丁寧な説明があるので、初めて「ソードアート・オンライン」を観てみようという人も楽しめると思います。そして原作、テレビシリーズを観てきてくださった方々にも観てよかったと思っていただける作品になっています。エイジや重村がキリトにとっての敵として現れるんですが、僕個人として敵とは思えませんでした。その理由はネタバレになってしまうのでここでは言えないのですが、観たあとに本当にいろんなことを考えさせられる作品になっています。ですので、何回も観ていただいて、自分なりの解釈を導き出していただけたらうれしいです。
ストーリー
2022年、天才プログラマー・茅場晶彦の陰謀によりVRゲーム「ソードアート・オンライン(SAO)」の世界に約1万人のユーザーが閉じ込められるという事件が発生。ユーザーたちはゲーム中の死がそのまま現実の死につながるデスゲームをプレイすることに。そのゲームは、“英雄”キリトの自己犠牲的な行為によりクリアされるが、多くの死者を出す結果となった。ゲームクリア後も、「SAO」の中で出会った恋人アスナをはじめとする仲間たちとVRの世界での冒険や生活を満喫していたキリト。そんな中、次世代ウェアラブル・マルチデバイス「オーグマー」が発売され、AR機能を最大限に利用したゲーム「オーディナル・スケール」がブームに。アスナたちに誘われ、しぶしぶゲームに参加したキリトは、新たな陰謀に巻き込まれていく……。
スタッフ
- 原作:川原礫(電撃文庫 刊)
- 監督:伊藤智彦
- 脚本:川原礫、伊藤智彦
- キャラクターデザイン・総作画監督:足立慎吾
- 音楽:梶浦由記
- 主題歌:LiSA「Catch the Moment」(アニプレックス)
- 制作:A-1 Pictures
キャスト
- キリト:松岡禎丞
- アスナ:戸松遥
- ユイ:伊藤かな恵
- リーファ:竹達彩奈
- シリカ:日高里菜
- リズベット:高垣彩陽
- シノン:沢城みゆき
- クライン:平田広明
- エギル:安元洋貴
- 茅場晶彦:山寺宏一
- ユナ:神田沙也加
- エイジ:井上芳雄
- 重村:鹿賀丈史
- 「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」公式サイト
- 「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」 (@sao_anime) | Twitter
- 「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」作品情報
松岡禎丞(マツオカヨシツグ)
9月17日、北海道生まれ。2009年、テレビアニメ「東のエデン」で声優デビュー。2011年放送のテレビアニメ「神様のメモ帳」で初主演を飾り、同年第6回声優アワードで新人男優賞に輝く。その後、「ソードアート・オンライン」「食戟のソーマ」「虹色デイズ」「モブサイコ100」などでメインキャラクターを演じる。放送待機作に「冴えない彼女の育てかた♭」「弱虫ペダル NEW GENERATION」など。主演作「劇場版 トリニティセブン -悠久図書館と錬金術少女-」が2月25日に公開される。
戸松遥(トマツハルカ)
2月4日、愛知県生まれ。2005年に行われた「第1回ミュージックレインスーパー声優オーディション」の合格をきっかけに声優活動をスタート。2008年に放送されたテレビアニメ「かんなぎ」で初主演を飾り、その後「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「妖怪ウォッチ」「ハピネスチャージプリキュア!」などで存在感を残す。出演作「魔法少女リリカルなのはReflection」が7月22日に封切られる。
2017年2月18日更新