“かわいいの伝道師”に言われても……（戸次）

──成瀬と四宮は、ともに連続ドラマの物語が進むにつれていろいろな顔が見えてきた人物ですね。千葉さんと戸次さんはお互いが演じたキャラクターについて、どんな印象を抱いていますか。

千葉　シノさんは、ドラマの回を重ねるごとにかわいくなっていくんですよ。

──そうなんですね。戸次さん、なんだか渋い表情をされていますが……（笑）。

千葉　（戸次の腕をつかみつつ）えーっ、どうして？

戸次　こんな“かわいいの伝道師”に、かわいいと言われても（笑）。NBAの選手に「お前バスケうまいな」と言われているみたい。

千葉　ちょっと、例えが（笑）。いやその、まあ……顔とかしぐさは僕のほうがかわいいんですけどねっ！

戸次　もちろん。俺はそこにツッコみもしないよ！ 事実だもん。

千葉　あはははは。四宮は自分の気持ちをひた隠しにしたり、「俺はいいんだよ」と言ってみたりしますよね。そういう人間っぽいところが好きだし、むずがゆさを感じるとともにギュッてしたい気持ちになります。第6話の“1週間お試し”は成瀬的には思うところがいろいろあったのですが、一視聴者として最後の「手をつなごう」のシーンに本当にグッときて。

戸次　あれは、脚本や監督、貴島（彩理）プロデューサーの存在に助けられたところもあるよ。誰がどう演じてもいいシーンになる。

千葉　いやいや！

戸次　だってさ、“手をつなぐ”じゃないんだよ？ “手をつなごう”。その控えめな誘いがいじらしいじゃない。四宮の謙虚なところが「ごう」に出ている気がして、カードを見ているだけで泣けてきた。脚本に本当に助けられて、あの場面ができました。

千葉　いや、でもシノさんは戸次さんだからシノさんなんですよ！

戸次　ありがとう。それは成瀬にも言えることだと思う。千葉雄大と成瀬……下の名前はなんだっけ？

千葉　（戸次を軽くたたきながら）ちょっと！

戸次　竜だ、竜！ 千葉雄大と成瀬竜は、シンクロ率がとんでもなく高い印象があります。ライブ感を大事にする現場だからこそ、その役者にもともとないものは絶対に出てこない。それが「おっさんずラブ」なんです。成瀬竜と千葉雄大は、どちらが物語の中のキャラクターなのかわからなくなる瞬間が何度かあった。

千葉　そうですか？

戸次　うん。「自分が役に近付くか、役を自分に近付けるか」とよく言われるけど、そういうことでもない“第3の演じ方”みたいな感じがする。それは成瀬だけではなくてほかのキャラクターにも当てはまります。田中圭くんが演じるからあの春田創一になるし、吉田鋼太郎さんが黒澤武蔵を演じるからあのキャプテンになる。そういう姿は見ていて面白かった！

これからを想像してもらえる話（千葉）

──では最後に、配信オリジナル版の中でお二人が思い入れのある場面について聞かせてください。

戸次　僕は喧嘩のシーンだと思っています。……このタイミングでもそれくらいは言っていいのかな？ すごく喧嘩らしい喧嘩なんですよ。今までそういう場面はなかったよね。

千葉　僕たちはなかったです。

戸次　喧嘩というよくあるシチュエーションを「おっさんずラブ」の世界でやったときに、どういうものができあがるのか。今からすごく楽しみです。

千葉　喧嘩のシーンは最終日に撮影するんですよね。

戸次　そうそう。ドラマ本編で、春田と成瀬が売り言葉に買い言葉みたいなやり取りをすることはあったけど、喧嘩というほどではなかった。だから「おっさんずラブ-in the sky-」で初めて喧嘩らしい喧嘩が描かれるのは、この配信オリジナル版なのではないかな？と思っています。

千葉　ぜひ理由にご注目いただきたいですよね。

戸次　そう！ まさによくある喧嘩なんだよね。夫婦間でもよくある。

千葉　そうなんですね。僕はかわいい物語だと思ってます。成瀬としては、本編では共演シーンがあまりなかった皆さんとご一緒したり、いろんな人から言葉をもらう場面がたくさんあって。一歩進むとかではありませんが、これからを想像していただけるようなお話です。

戸次　まさにそうだね。このあとどうなるの？ こうなってほしい！とお客様に考えていただけるような話。ミッチー（鈴鹿央士演じる道端寛太）と（佐津川愛美扮する）緋夏の関係性とか、本編の中にうっすらと出てきた要素が濃く描かれているのも配信オリジナル版ならではですよね。それとやっぱり（MEGUMI演じる）根古さん！ 姉御肌ぶりがさらに増して優しさも感じられて、めっちゃかっこいいです。