進化し続ける“美男”チャン・グンソク!ドラマ「餌【ミッキ】」での新たな魅力とは?マンガ家・こざき亜衣が語る&イラスト化 (2/2)

被害者と加害者のグラデーションが描かれたドラマ

──今作は、詐欺事件が起きた年から現在まで、2006年・2010年・2023年と3つの時代がクロスオーバーしていきます。ストーリー展開についてはいかがでしたか?

これは難しい作り方ですよね。時代が交差すると、観ていて混乱する作品もあるかもしれませんが、「餌【ミッキ】」に関しては混乱せずに見入ることができました。そう言えば、詐欺師から被害に遭って、そのまま自分も詐欺師になる人物が登場するのですが、そういったキャラクターの描き方もすごくよかったです。

エリート弁護士だったク・ドハン(チャン・グンソク)。

エリート弁護士だったク・ドハン(チャン・グンソク)。

チンピラ同然の闇金業者だったノ・サンチョン(ホ・ソンテ)。

チンピラ同然の闇金業者だったノ・サンチョン(ホ・ソンテ)。

──それは人間の欲深さが象徴されているという意味でしょうか?

被害に遭ったあとでどう動くかによって、人間性が出ますよね。だまされたからこそ「自分だって詐欺をやっていい」という方向に進むなんて、気持ちがわかるとは言わないですが、なぜそうなったかのルートはわかる。人間らしいなと思います。詐欺師になったものの100%悪人ではなく、なんならほかの被害者も助けてあげようくらいのキャラクターもいたりして。さまざまな人間模様が味わい深かったです。

ノ・サンチョンの側近。左からソン・ヨンジン(パク・ミョンフン)、チョン・ソラム(オ・ヨナ)。

ノ・サンチョンの側近。左からソン・ヨンジン(パク・ミョンフン)、チョン・ソラム(オ・ヨナ)。

被害者の会。左からキム・ヨングァン(イ・ウォンジョン)、イ・ビョンジュン(イ・スンジュン)。

被害者の会。左からキム・ヨングァン(イ・ウォンジョン)、イ・ビョンジュン(イ・スンジュン)。

──そう思うと、だます側のこともいろいろと描かれていましたね。

こういったネズミ講のような詐欺は、先にやり始めた人だけが儲かるシステムですが、あとに続いていく人は被害者であると同時に加害者にもなるという、グラデーションがよく描かれていました。被害者だと言っている人たちも、一瞬はいい思いをしている。そう思えば、この人たちは欲に目がくらんだ瞬間があったんだよなと、かわいそうな目で見られないところがありました。

──そういうこともストーリーに盛り込んでいるのがリアルです。

そうですね。ただ、ク・ドハンとチョン・ナヨンの2人は、完全に同情できる人間として描かれているので、応援したくなります。主人公とヒロインとして、すごくまっとうで、味方になりたくなるんですよね。

悪役でも“瞬間最大風速”で輝く姿を描いてあげたい

──こざき先生が「餌【ミッキ】」をご覧になった中で、ご自身の作品にも今後、生かせるようなものはありましたか。

自分のマンガの中でも、悪役を描くことがすごく好きなんです。ただ純粋に悪を描くのではなく、瞬間最大風速で輝いている姿を悪役でも描いてあげたいなと思っていて。そういう視点でいえば、ノ・サンチョンのようなキャラクターを作ってみたいなと思います。

ドラマ「餌【ミッキ】」より、ノ・サンチョン(ホ・ソンテ)。

ドラマ「餌【ミッキ】」より、ノ・サンチョン(ホ・ソンテ)。

──現在ビッグコミックオリジナルで、16世紀イングランドの女王・エリザベス1世とその忠臣を描いた「セシルの女王」を連載中ですね。「餌【ミッキ】」も実際にあったお話がモチーフになっていますが、実在した人物を描く難しさはありますか?

ドラマとマンガでは違うかもしれませんが、現実の物語をベースにするにあたって、作り手によって得意不得意はあると思います。ゼロから作りだすことが得意な作家もいれば、事実からエッセンスを取って想像を膨らませるのが得意な人もいて。私は後者なので、同じ出来事と人物像が現実にあっても、それをどう解釈するかで、話もまったく変わってきます。歴史の研究では「この人物はこう思った」というような主観や感情が入ってはいけないらしいんです。実際の事件にしても、ニュース報道で感情は入らないですよね。その点、マンガは自分の好きなようにできるので「セシルの女王」も描いていてとても面白いです。

──ドラマの見どころのみならず、作り手としてのお話もありがとうございました。最後に「餌【ミッキ】」の推しポイントを改めてお聞かせください。

ドラマ「餌【ミッキ】」より、捜査に臨むク・ドハン(チャン・グンソク)。

ドラマ「餌【ミッキ】」より、捜査に臨むク・ドハン(チャン・グンソク)。

スリリングな展開で、一気に観てしまいます。繊細な印象のク・ドハン役のチャン・グンソクさんはもちろん、ノ・サンチョン役のホ・ソンテさんにも注目してほしいです。そして全然関係ないかもしれませんが、ク・ドハンが透明な電子黒板のようなものに捜査情報を書き込んでいるのを見て、すごく便利そうだなと。日本の刑事ドラマはまだホワイトボードを使っていますよね? 韓国はすごいな、こういうので捜査しているのかと(笑)。登場人物やストーリーなど、いろいろな見方ができるドラマですので、楽しくご覧いただけると思います。

韓国ドラマ「餌【ミッキ】」第1回特別公開中

プロフィール

こざき亜衣(コザキアイ)

2007年に「さよならジル様」で、ちばてつや賞一般部門大賞を受賞しデビュー。2011年、週刊ビッグコミックスピリッツで「あさひなぐ」を連載開始し、2015年に第60回小学館漫画賞一般向け部門を受賞する。同作は2017年に実写映画化・舞台化された。2021年よりビッグコミックオリジナルで歴史劇「セシルの女王」を連載中。現在、5集まで刊行されている。