発情する大志がすごくリアル（大石）、仲里依紗さんは解像度が高い（宮藤）

──そんな、離婚という目標に向かって協力する夫婦を演じたのが松坂桃李さんと仲里依紗さん。お二人についてはいかがでしたか？

大石　あの人たちは基本何を演じたってうまいんですけど、発情する大志がすごくリアルで、初めて「松坂桃李エロい！」と思いました。

左から東海林大志役の松坂桃李、黒澤ゆい役の仲里依紗。

宮藤　桃李くんは、妄想とか心の声が好きなように書ける。（宮藤が脚本を担当した）ドラマ「ゆとりですがなにか」では童貞の役で、こっちの作品ではやりまくってる役なんですけど、一緒ですからね、人間性は。かわいいですよね。

大石　本当にチャーミングでした。

宮藤　仲里依紗さんは、解像度が高いというか、ぱきっとしてる。肝が据わってるし、思い切りがいい。特に1話で大志にキレるところとか、イメージしていた通りのトーンで演じてて「あー上手」って思いました。ゆいのきつい部分と、（錦戸亮演じる）恭二といるときの女らしくしようとしている感じの使い分けがすごくよかったですね。

宮藤官九郎

──そのほかも印象的な登場人物ばかりでした。お二人が特に好きなキャラクターはいらっしゃいますか？

大石　誰が好きっていうのはいつも聞かれますが、特にはいないです。だってみんな一生懸命生み出したキャラですから。でも、（竹下景子演じる）大志の母・峰子の政治に懸ける情熱はすごいなって思いながら書いてました。友達になりたいとは思わないキャラですけど、役として面白みがありましたね。

──恭二とのシーンで、パチンコ台の上で手を重ねられて“女子”になる峰子も魅力的でした。

大石　“女は灰になっても”的なパワーが（笑）。

宮藤　僕が初めてご一緒したのは山本耕史さん。敵役だけど「やっぱりこういう人がのし上がっていくんだよな」っていう人物像をちゃんと表現してくれて、とてもよかったですね。

大石　野党の政治家という感じもよく出てました。

「離婚しようよ」場面写真

想田豪役の山本耕史。

宮藤　あと僕はいつもそうなんですけど、一番どうでもいいやつが一番いいこと言うように持っていこうとする癖があります。たまにいいこと言う（少路勇介演じる）ゆいのマネージャー・笹井とか、番頭として大志の父の代から東海林家に仕えてきたのに、大志の選挙結果次第では自分も無職になってしまう（尾身としのり演じる）秘書の早乙女五郎とか。

大石　「どうでもいい人がいいことを言う」、これは覚えておこう。

「離婚しようよ」にはちゃんと“ときめき”がある（大石）

──本作はNetflixで全世界に配信されていますが、そんな中で日本の政治のちょっと恥ずかしいところや、田舎の古い価値観も脚本に入れ込まれています。

宮藤　告発してもしょうがないですけど、やっぱり変ですもんね。自転車に乗って選挙運動するとか、雨が降っている中で選挙運動するとみんな同情してくれるとか。日本の政治ってこうなってるんだっていうのを、偏った情報でも海外の人が観たら面白いかなあと。

大石　私は、違う国の人が観たらどう思うのかしらって言ったら、磯山さんに「私たちが面白いと思うものを作れば通じる」って言われて、そうですねと。やってみないとわからないですもんね。

大石静

宮藤　今の人たちって、結婚相手との出会いがそんなに運命的ではないと思うんです。マッチングアプリとかで“結婚するために”条件で出会った人と考えると、離婚も本当はそんなにドラマチックなものじゃないんだろうなって。

大石　結婚も離婚も、“しちゃうかも”のハラハラ感がないですもんね、今は。「離婚しようよ」にはちゃんとときめくものがあるから、大志とゆいのキスシーンがきれい。ラブシーンが本当に素敵に撮れていて夢があります。

左から宮藤官九郎、大石静。