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宮藤さんと大石さんの色がきれいに融合（松坂）

──まずは作品の感想を伺いたいんですが、脚本を書いた大石静さんは「宮藤（官九郎）さんと2人で力一杯書いたせいか、押しの強いぶっ飛んだ台本になってしまいました」とコメントされていました。キャラクターは全員個性が強く、目まぐるしいストーリー展開の中に動きのある笑いがたくさん入っていて、確かに“ぶっ飛んだ”作品だなと思いました。

松坂桃李　そうですよね（笑）。脚本を読んだときは「合作最高！」と思いました。そして、完成した映像を観ても笑いあり、涙あり、爽快感ありのすごく楽しい作品だなと感じました。脚本家のお二人が投げてくるハードルは思った以上に高くて、「えっ？ どう演じようかな？」という難しいシーンもあったんですけど、映像を観たらキャスト・スタッフみんなで乗り越えられたんだなという実感が湧きました。

──「合作最高！」というのはどのあたりから？

松坂　オファーをいただいたときは、1話ごとに宮藤さんと大石さんが交互に書かれるのかなと思っていたんですが、実際は各話の中にそれぞれが担当されたシーンが交ざっていました。台本を読んでみると宮藤さんの色が出ているところもあれば、ここは大石さんだろうなという部分があって、それがきれいに融合している感じが楽しかったです。

──仲さんは最初に台本を読んだときどう思いましたか？

仲里依紗　女優役ということで2重に演じる必要のある場面がありますし、ゆいのいろんな感情がうごめいているのが本を読んでいてもわかったので、いろいろとハードルは高そうだなと。（錦戸亮演じる）恭二とのシーンのセリフはきっと大石さんが書いてるだろうなと思っていたら実際にそうだったり、大志に対してガーッと怒る場面では宮藤さんが私のそういう部分を見たいんだろうなと感じたり、共同で書かれたものを演じるのは楽しかったですし、挑戦でもありました。完成した作品を観たときは、これを世界に配信できるなんて日本もすごく楽しくなってきたなと思いましたね。役者として、いろいろな方に観てもらえる機会をいただけるのはうれしいです。

松坂さんだからこそ憎めない（仲）

──お二人は今作が初共演になりますが、撮影に入る前とあとでイメージは変わりましたか？

松坂　僕は賀来賢人くんから仲さんについて「共演するんだね！ ぶっ飛んでるよ！」と言われていて（笑）。

仲　（顔を覆いながら）キャー！

松坂　そういう情報を持って現場入りしたんですが、実際はセリフのやり取りをしていてもすごく安心感があるんです。夫婦喧嘩のシーンでも思い切り球を投げられましたし、返してくる球も「そう来るか！」という面白さがあって。喧嘩してるんですけど、すごく心地がよかったです。

仲　えー、ほんとですか？

松坂　ほんとほんと。ゆいちゃんとのやり取りのシーンはずっと楽しかったです。

──仲さんは松坂さんと共演してみていかがでしたか？

仲　すごい役者さんじゃないですか。トップオブトップですよ。

松坂　いやいや！

仲　なので夫役が松坂さんと聞いた時点で安心感がありましたし、その分しっかり付いて行かないといけないという気持ちがありました。台本を読んでいるときは大志に対してどんどんイライラしてきたんですが、松坂さん演じる大志は憎めないんですよね。そこは松坂さんだからこそなんだろうなと思いました。……やっぱりちょっと（大志に）ムカつきはするんですけど（笑）。

松坂　ははは（笑）。

チョコレートの原材料見ながら泣けないですよ（松坂）

──劇中のゆいのセリフにもありますが、大志はクズというよりはバカという感じで、いろいろなことをその場しのぎで対応してしまう人間です。あくまでイメージですが、松坂さん自身とは全然違う人物のように感じました。

松坂　パブリックイメージと異なる役をいただけるのはうれしいですし、宮藤さんと大石さんはこういうふうに僕のことを見ているのかなと想像したりするのも楽しかったです。今までやったことがない役にチャレンジしていかないといけないと思ってますし、全力で応えていきたいです。

──大石さんは取材のときに「発情している大志がすごくかわいかった」とおっしゃっていました。松坂さんは過去にR18+指定作品の「娼年」にも主演していますが、「今回が一番色気があった」とも。仲さんから見ても色気がありましたか？

仲　……大志よりも恭二の色気がすごくて（笑）。

松坂　漏れてましたもんね（笑）。

仲　でも選挙活動で男っぷりが上がる大志にゆいが心動かされる場面がありますが、その気持ちはすごくわかりました。不倫して、子供っぽくて、空気も読めない大志が回を追うごとにどんどん成長していく。人生ってこういうことかと思いました。

──松坂さん自身は色気を意識したんですか？

松坂　いや、してないです（笑）。監督からも「ここはエロい感じで！」なんて言われてないです。大志はゆいちゃん、不倫相手、選挙活動などすべてに対して正直で、必死なんです。それが大石さんから見たかわいらしさ＋色気につながったのかもしれないですね。

──一方でゆいは、一言で言えばしっかり者です。女優の仕事をバリバリこなして、自分の意見を主張できて、抜けているところがない。でも道で偶然会った恭二に付いて行ったり、不思議な面もあります。

仲　いろんなところに気を使える人なんですよね。自由奔放な自分の母親や跡継ぎとなる子供のことでうるさい大志の母親、所属している事務所など、あらゆる方面に気を使いまくっていて、アンテナを張り巡らせています。だから大志の不倫が世の中に出ると知ったときも、まず考えるのが夫婦円満なイメージから外れてしまうことで発生するCMの違約金。お金がもらえなくなったら実家の面倒を見ることができなくなるんじゃないかと心配します。日々、強い責任感を感じて生きているので、自分の日常とはかけ離れた恭二にふらっと付いて行きたくなったんじゃないかなと。派手に見えますけど、意外と優等生なんだと思います。共演者の男の子から連絡先が書かれた紙を渡されても、ぐしゃって捨てるじゃないですか。そこでころっといかないところがかっこいいなと思いました。（しみじみと）いいですね、あれは。

──そんなゆいだからこそ、たまに大志の前で感情を爆発させることがありますが、早口でまくし立てる場面の演技が印象的でした。宮藤さんも仲さんの演技を「ゾーンに入ってる」と表現されていて。

仲　精一杯のことをやった結果、ああいう感じになりました（笑）。

──ちなみに片目だけから涙を流すというシーンが何カ所かありますが、仲さんが実際に泣いているんですか？

仲　やってみたらできましたね。

松坂　全部自前の涙ですよ。

──俳優さんとは言え、片目のみから適切なタイミングで、しかも複数回も涙を流すことってできるのかな？と思ってしまいました。

仲　普通はあんなふうに涙が出るわけないって思うのかもしれないです。だからここで言っておきます。自分の涙です！

松坂　いやー、チョコレートの原材料見ながら泣けないですよ（笑）。

仲　ですよね（笑）。