映画ナタリー Power Push - 「黒執事 Book of the Atlantic」
小野大輔(セバスチャン・ミカエリス役)×坂本真綾(シエル・ファントムハイヴ役)インタビュー ゾンビに震え「不死鳥」でほっこり!? 劇場版は「黒執事」の魅力が“全部盛り”
枢やな原作の劇場アニメーション「黒執事 Book of the Atlantic」が、1月21日に封切られた。原作コミックの「豪華客船編」にあたるエピソードを描いた本作は、アクションあり、ホラーあり、新旧キャラが入り乱れる盛りだくさんな1作だ。
ナタリーでは公開を記念したジャンル横断企画を展開中。映画ナタリーではセバスチャン・ミカエリス役の小野大輔とシエル・ファントムハイヴ役の坂本真綾に、収録時のエピソードや「黒執事」への思い入れを聞いた。
取材・文 / 金須晶子
劇場版は“「黒執事」全部盛り”(小野)
──「黒執事」のナタリー横断企画ということで、お二人には映画ナタリーにご登場いただきます。よろしくお願いします。
坂本真綾 よろしくお願いします。
小野大輔 ちなみにお笑いナタリーさんは?
──ごめんなさい、今回はちょっと……。
小野 ですよね、すみません(笑)。
──(笑)。それではさっそくお伺いしていきたいのですが、まず「豪華客船編」の劇場アニメ化が決まった際の率直な気持ちからお聞かせください。
小野 原作の中でもすごく人気があるエピソードなので、満を持して映像化できるっていうことが純粋にうれしかったです。僕自身も観てみたい気持ちがずっとあったので「やっと来た!」という感覚でした。
坂本 私は3期(「黒執事 Book of Circus」「黒執事 Book of Murder」)が終わったとき、「もうこれでシエルを演じるのは最後かも」と勝手に寂しい気持ちになっていたのでびっくりしました。「豪華客船編」はアクションが満載だし、ゾンビが襲ってくるホラー要素もあって、新キャラクターが出てくる一方で既存のキャラクターの新しい顔も見れたり、この1本を観れば「黒執事」の世界観がわかるので劇場向きですよね。
小野 確かに全部盛りだ! 劇場版は“「黒執事」全部盛り”です(笑)。
──いいキャッチフレーズができました。久々にシエルとセバスチャンを演じるにあたり、お互い意識しあったことはありましたか?
坂本 前回からちょっと間が空いていたので、自分に対して心配がありつつ。でも3期で小野さんとの距離も縮まり……。
小野 1、2期はまだ遠かったよね(笑)。
坂本 基本的に人見知りなので、だいたい誰とでも遠いんですよ(笑)。それにシエルという役をやるのにいっぱいいっぱいすぎて、あまり共演者の方たちと話せずにいたんです。
小野 でもそれっていい意味で真綾ちゃんがストイックに役を背負ってたってことだよね。真摯に役と向き合っているのがすごく感じられたし、僕もそうだった。
坂本 最初は2人とも「この役難しいな」と感じてましたからね。でも3期までやっていくうちにセバスチャンとシエルの呼吸がわかってくる感じがして、それが楽しくて。なので今回も、小野さんがいれば「黒執事」もシエルも大丈夫!という気持ちでした。
小野 (しみじみと)今、ご褒美をもらっている感覚です。よかった、本当に。これってシエルとセバスチャンの関係性と似てるのかもしれませんね。最初はそれぞれの目的のためっていう意志だけなんだけど、でも一緒にいろんなことに立ち向かっていく中で、だんだん絆に変わっていく。僕たちの関係性も、真綾ちゃんと8年かけて「黒執事」に取り組んできたリアルな証だと思います。だから今めちゃくちゃうれしいです。
シエルの男らしい部分が際立っていました(坂本)
──8年かけて積み上げてきた演じ方もそれぞれあるかと思いますが、「豪華客船編」ではこれまでと少し違う一面も見せていますよね。何か新しいアプローチはあったのでしょうか。
小野 セバスチャンって熱量を乗せすぎない引き算のお芝居が求められていたので、演者としてはどこかもどかしい感覚があったんです。でも1期、2期とやっていくうちに、自分が引けば引くほど、ほかのキャラクターがより際立ってくるのがわかってきて。そういう引き算の面白さを見つけたうえで、3期ではセバスチャンにブレや怒りが生じる場面が少しずつ出てきたんですよ。そして今回、実は阿部(記之)監督にも枢(やな)先生にも「(熱量を)出していいですよ」と許可をもらえて。「やってください」と。なのでシンプルに言うと、すごく楽しかったです。
──そのような指示があったんですね! シエルはいかがでしたか? セバスチャンとの出会いから今に至るまでの回想も描かれましたが。
坂本 今より幼いシエルは、もっとわがままで、機嫌の悪さを相手にぶつけてしまうところがあったので、監督に「もっと傍若無人な感じで」と言われた記憶があります。あの回想シーンはすごく愛おしい場面でした。2人はお互いにないものを教え合って、お互いに世界を広げていたんですよね。セバスチャンは最初から完璧だったわけじゃなくて、お茶の淹れ方や料理の味はシエルから手ほどきを受けていたんだなとか。一見冷たく「これじゃ駄目だ」と言うけれど、それすらも愛のある掛け合いに見えて。その積み重なりが伝わってきました。
──今回、婚約者のリジー(エリザベス・ミッドフォード)を守ろうとするシエルのカッコいい姿も見ることができました。
坂本 リジーは空気を読まないところがあるので、これまではシエルがちょっと迷惑そうにしたり、なんとかしてまこうとするシーンがよくあったんですよね。このぐらいの歳の男の子って、女の子に優しくないよなあとか思ったり(笑)。でも今回、シエルはこんなにもリジーのことを大切に思ってたんだっていう場面やセリフがたくさんあって。リジーと一緒にいることによって、シエルの男らしい部分がいつもより際立っていました。「男の子はこうであってほしい」という願望も含めて演じるのが楽しかったです。
小野 うん。カッコよかった、シエル!
坂本 まあ結果的にはリジーに守られちゃうんですけど。いつもセバスチャンに守られてるイメージの強いシエルですが、「自分も男として弱いものを守りたい」っていう思いが健気でいいですよね。
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あらすじ
19世紀英国──名門貴族ファントムハイヴ家の執事セバスチャン・ミカエリスは、13歳の主人シエル・ファントムハイヴとともに、“女王の番犬”として裏社会の汚れ仕事を請け負う日々。ある日、まことしやかにささやかれる「死者蘇生」の噂を耳にしたシエルとセバスチャンは調査のため、豪華客船「カンパニア号」へと乗り込む。果たして、そこで彼らを待ち受けるものとは──。
スタッフ
原作:枢やな(掲載 月刊「Gファンタジー」スクウェア・エニックス刊)
監督:阿部記之
脚本:吉野弘幸
キャラクターデザイン・総作画監督:芝美奈子
音楽:光田康典
制作:A-1 Pictures
配給:アニプレックス
キャスト
セバスチャン・ミカエリス:小野大輔
シエル・ファントムハイヴ:坂本真綾
エリザベス・ミッドフォード:田村ゆかり
葬儀屋:諏訪部順一
グレル・サトクリフ:福山潤
ロナルド・ノックス:KENN
ウィリアム・T・スピアーズ:杉山紀彰
スネーク:寺島拓篤
バルドロイ:東地宏樹
フィニアン:梶裕貴
メイリン:加藤英美里
チャールズ・グレイ:木村良平
チャールズ・フィップス:前野智昭
エドワード・ミッドフォード:山下誠一郎
フランシス・ミッドフォード:田中敦子
アレクシス・ミッドフォード:中田譲治
ドルイット子爵:鈴木達央
リアン・ストーカー:石川界人
ほか
©Yana Toboso/SQUARE ENIX,Project Atlantic
小野大輔(オノダイスケ)
1978年5月4日生まれ。高知県出身。テレビアニメ「進撃の巨人」エルヴィン・スミス役、「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの空条承太郎役、「おそ松さん」松野十四松役など多くのキャラクターを演じている。劇場アニメでは2016年に「GANTZ:O」「この世界の片隅に」などに出演。公開待機作に「劇場版 黒子のバスケ LAST GAME」「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」や、日本語吹替を務めた「ドクター・ストレンジ」などがある。
坂本真綾(サカモトマアヤ)
1980年3月31日生まれ。東京都出身。テレビアニメ「物語」シリーズの忍野忍役、「舟を編む」林香具矢役、劇場アニメ「コードギアス 亡国のアキト」シリーズのレイラ・マルカル役、「攻殻機動隊 新劇場版」草薙素子役などを担当。コンサートや舞台など活動は多岐にわたる。2017年11月上演のミュージカル「ダディ・ロング・レッグズ」にジルーシャ役で出演。キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード役で出演している「傷物語〈III冷血篇〉」が現在公開中。