映画ナタリー Power Push - 「黒執事 Book of the Atlantic」
小野大輔(セバスチャン・ミカエリス役)×坂本真綾(シエル・ファントムハイヴ役)インタビュー ゾンビに震え「不死鳥」でほっこり!? 劇場版は「黒執事」の魅力が“全部盛り”
絶対いい男に成長すると思う!(坂本)
──シエルのどんな魅力が人を惹き付けると思われますか?
坂本 まっすぐさと言うとちょっと普通すぎるんですけど……。根性ですかね。
小野 何気に泥臭いよね。気高くて泥臭い。人間の魅力的な部分を内側に持っている人だから、みんな惹き付けられるんじゃないかな。でも男の意地で、それをうまく表に出せない部分もある。きっと周りは気付いてるんですよ。「シエル我慢してるよね」「がんばってるね」って。人間力が高いんでしょうね。かわいいしカッコいい……ずるい!
坂本 あはは。シエル、絶対いい男に成長すると思う!
小野 今話していて思ったんですけど、「黒執事」ってギャップ萌えみたいなものが各キャラクターにある作品だと思うんです。ギャップというと簡単な言葉になっちゃうんですけど。でもそこが魅力的だと改めて思いました。
──過去が明らかになったり、新たな一面を垣間見れたことで魅力が増したキャラクターはたくさんいますね。
小野 ギャップがないのドルイット(子爵)くらいですよ。あの人は「黒執事」のお笑い担当だから。
坂本 私、ドルイットが出てくるとシエルの気持ちになっちゃうんです。「うわあ」って(笑)。でもそういうところも含めて、これからも定番になってほしいなあ。
ホラーが苦手な人も劇場で観たら楽しそう(坂本)
──シエルとセバスチャン、長い付き合いとなったこのキャラクターたちはご自身の声優人生にどのような影響を与えてきたのでしょう。
坂本 私は少年役を演じたのはシエルがほぼ初めてだったんです。おかげさまでシエルを皮切りに少年役をいただく機会も増えて(笑)。最初は手探りだったんですけど、やりながら学ばせてもらえたので本当に大きい存在です。ほかの作品で少年役を演じるときのベース。シエルより幼いとか、シエルより明るいとか。そうやって無意識のうちに基準値になっているところはありますね。シエルのおかげで出会えるキャラクターの幅が広がって感謝しています。
小野 初めてのものって大きいよね。
坂本 小野さんはどうですか?
小野 そうですね。「黒執事」は自分が30歳になった節目の年に座長を任されたのもあって、「背負わなければ」と勝手にプレッシャーを感じていたんです。でも自分1人で背負おうとしていたところに、こうやって隣で真綾ちゃんも一緒に背負ってくれているのを感じて。あと枢先生がアニメにすごく熱量を傾けてくれたのも大きかった。1人で背負っちゃ駄目なんだなと。「面白いね、好きだね」という気持ちを分かち合わないといい作品にならないぞ、と気付いて。「これからもこんなふうに作品に関わっていきたいな」と思えたので、そういう部分で僕の中では大事な作品になりました。
──ありがとうございます。それでは最後の質問です。「豪華客船編」を連載するにあたって枢先生と編集の熊剛さんはあらゆるゾンビ映画を観て研究されたそうですが、お二人はそういったジャンルの映画はお好きですか?
小野 ゾンビ……全然得意じゃないです(笑)。
坂本 私も(笑)。すごい苦手なんですけど、仕事柄、洋画の吹替をやるときは何度も映像を観なきゃいけないんですよ。おばけやゾンビが出てくると、わー!って顔をそむけちゃって観れなくて、もう1回巻き戻すんだけど、また驚いて観れないっていう。その繰り返し(笑)。
小野 何その光景(笑)。でもすごいわかる。
坂本 本当に大変なんですよ。だからこうやって(指の隙間から目をのぞかせて)チェックしますもん。あと深夜に1人でヘッドフォンして観たり。ホラー苦手なのに。
小野 もうそれコアな楽しみ方みたいになってる! でもスタッフさんたちが研究されただけあって、ゾンビ映画へのオマージュを感じられるようなシーンもけっこうあったよね。娘の死体が蘇生して家族が喜んでいたらガブッと喰われるところとか。ああいうのは“あるある”的な要素だなと。
坂本 好きな人が観たら「これは王道だよね」とか「このシーンはあの映画から来てるのかな」とか、そういう面白さもあるでしょうね。でも怖いのが苦手な人も劇場で観たら楽しそうです! みんなで怖さを分かち合えるので心が落ち着くかもしれません。
あらすじ
19世紀英国──名門貴族ファントムハイヴ家の執事セバスチャン・ミカエリスは、13歳の主人シエル・ファントムハイヴとともに、“女王の番犬”として裏社会の汚れ仕事を請け負う日々。ある日、まことしやかにささやかれる「死者蘇生」の噂を耳にしたシエルとセバスチャンは調査のため、豪華客船「カンパニア号」へと乗り込む。果たして、そこで彼らを待ち受けるものとは──。
スタッフ
原作:枢やな(掲載 月刊「Gファンタジー」スクウェア・エニックス刊)
監督:阿部記之
脚本:吉野弘幸
キャラクターデザイン・総作画監督:芝美奈子
音楽:光田康典
制作:A-1 Pictures
配給:アニプレックス
キャスト
セバスチャン・ミカエリス:小野大輔
シエル・ファントムハイヴ:坂本真綾
エリザベス・ミッドフォード:田村ゆかり
葬儀屋:諏訪部順一
グレル・サトクリフ:福山潤
ロナルド・ノックス:KENN
ウィリアム・T・スピアーズ:杉山紀彰
スネーク:寺島拓篤
バルドロイ:東地宏樹
フィニアン:梶裕貴
メイリン:加藤英美里
チャールズ・グレイ:木村良平
チャールズ・フィップス:前野智昭
エドワード・ミッドフォード:山下誠一郎
フランシス・ミッドフォード:田中敦子
アレクシス・ミッドフォード:中田譲治
ドルイット子爵:鈴木達央
リアン・ストーカー:石川界人
ほか
©Yana Toboso/SQUARE ENIX,Project Atlantic
小野大輔(オノダイスケ)
1978年5月4日生まれ。高知県出身。テレビアニメ「進撃の巨人」エルヴィン・スミス役、「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの空条承太郎役、「おそ松さん」松野十四松役など多くのキャラクターを演じている。劇場アニメでは2016年に「GANTZ:O」「この世界の片隅に」などに出演。公開待機作に「劇場版 黒子のバスケ LAST GAME」「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」や、日本語吹替を務めた「ドクター・ストレンジ」などがある。
坂本真綾(サカモトマアヤ)
1980年3月31日生まれ。東京都出身。テレビアニメ「物語」シリーズの忍野忍役、「舟を編む」林香具矢役、劇場アニメ「コードギアス 亡国のアキト」シリーズのレイラ・マルカル役、「攻殻機動隊 新劇場版」草薙素子役などを担当。コンサートや舞台など活動は多岐にわたる。2017年11月上演のミュージカル「ダディ・ロング・レッグズ」にジルーシャ役で出演。キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード役で出演している「傷物語〈III冷血篇〉」が現在公開中。