「恋する寄生虫」林遣都×小松菜奈 共演|“確かな手触り”のファンタジックなラブストーリー 川村ナヲコの描き下ろしイラストも掲載

林遣都と小松菜奈が共演した「恋する寄生虫」のBlu-ray / DVDが3月23日に発売された。

本作では極度の潔癖症を抱える青年・高坂賢吾と、視線恐怖症の女子高生・佐薙ひじりが紡ぐ恋愛模様が描かれる。林が高坂役、小松が佐薙役で出演。三秋縋による小説を原案に、CMやミュージックビデオを中心に活躍する柿本ケンサクが監督を務めた。

映画ナタリーではソフト発売を記念し、本作の魅力をコラムで紐解く。寄生虫×恋という新鮮な設定、幻想的な世界を“確かな手触り”のある物語に着地させた俳優陣の実力、VFXで描き出される強烈な心象風景とは。また特集後半には、本作の印象的なシーンをモチーフにした、イラストレーター・川村ナヲコによる描き下ろしカットを掲載している。

文 / 渡邉ひかるイラスト / 川村ナヲコ

恋をするのは虫のせい?コラムで読み解く本作の魅力

“虫”が浮き彫りにする、普遍的な恋の物語

脳に寄生した虫の仕業で、人と人が恋に落ちる。気鋭の作家・三秋縋の同名小説を原案にしたストーリー設定は一見突飛だが、その中で描かれるのは誰もが共感できる普遍的なラブストーリー。特定の相手に惹かれるのが虫の影響だとして、ならば恋をするときに胸がズキンとするのはなぜなのか? 脳に棲みつく虫の支配を逃れたら、相手を想うたびに芽生えるウキウキした気持ちや会えない時間に感じる胸の痛みもすべてなくなってしまうのか? 頭では分かっていること、けれども心ではどうにもならないことが人間にはあるのだと、“虫の仕業で恋に落ちた”と信じ、もがく男女の物語が教えてくれる。そんな心と頭のもどかしくもリアルな関係を、ファンタスティックな展開の中で真っ向から生真面目に描写した世界観に距離を感じる人はいないはず。この物語の中心にいるのはあくまで、慣れない恋の到来に戸惑う不器用な2人であり、恋は誰にでも訪れるものなのだから。

「恋する寄生虫」より。左から小松菜奈演じる佐薙ひじり、林遣都演じる高坂賢吾。

林遣都×小松菜奈が演じ切った幻想的かつリアルなキャラクター

極度の潔癖症に悩まされ、人生を謳歌できずに生きてきた青年・高坂賢吾と、視線恐怖症のせいで不登校にまで陥った女子高生・佐薙ひじり。ある出来事をきっかけに出会い、距離を縮めていく2人を、実力派の呼び声高い林遣都と小松菜奈が演じている。記念すべき初共演となった両者だが、幻想的ですらある作品世界から確かな手触りを感じられるのは2人のリアルな熱演あってこそ。幼い日の悲劇をきっかけに重度の潔癖症を患い、血が滲むまで洗っても洗っても消えない手の汚れに嘆く高坂の絶望。他者からの視線に恐怖を感じ、ヘッドホンで耳を塞いで外界を遮断しながら歩き続ける佐薙の決意。それぞれ大きな違和感を抱えながら生きざるを得ない2人の生身の葛藤、やがて互いの存在にもたれることで変化していく心の機微を、林と小松が繊細に表現している。その一方、各々の美しいビジュアルがファンタスティックな世界観と融合し、絶妙なバランス感覚の作品に。

心の内を具現化したような視覚効果

監督を務めた柿本ケンサクは、CMやミュージックビデオ制作を中心に活躍の場を広げ、大河ドラマ「青天を衝け」のタイトルバックを手掛けたことでも知られる映像作家。潔癖症の高坂や視線恐怖症を患う佐薙の心象風景など、ポップでアーティスティックな映像が本作の不可思議な作品世界に直結する。なかでも、佐薙の目に、他人の瞳が異様なまでに大きく映るシーンがなんともグロテスクでユニーク。時折挟み込まれる寄生虫のイメージ映像も、簡単にはいかない恋の道行きを容赦なく暗示する。また、当初はマスクの装着も必須だった高坂の顔が露わになったり、佐薙がヘッドホンで自らを防御しなくなったり、互いへの距離を縮めるにつれ身にまとうアイテムが減っていく変化も。鮮やかな色づかいに美しい主演2人、VFXを用いた映像処理も相まって大人のための絵本のような印象すら受けるが、映像面でもリアルな人間ドラマへの着地を怠ってはいない。

「恋する寄生虫」

イラストレーター・川村ナヲコが映画のワンシーンを描き下ろし!

イラストレーター・川村ナヲコによる描き下ろしカット。左から小松菜奈演じる佐薙ひじり、林遣都演じる高坂賢吾。
川村ナヲコ(カワムラナヲコ)
書籍、雑誌、マンガ、アニメの張り込み素材などを手がけるイラストレーター。海外コミックと日本のマンガの中間のようなテイストを得意としている。