「劇場版 君と世界が終わる日に FINAL」間宮響の物語が堂々完結、竹内涼真が紡ぎ出す最終章への熱き思い

竹内涼真が主演を務めた「劇場版 君と世界が終わる日に FINAL」の豪華版Blu-ray / 通常版DVDが6月26日に発売された。

本作は日本テレビとHuluの共同製作によるオリジナルドラマの劇場版。ゴーレムと呼ばれる化け物に占拠された“終末世界”を舞台に、娘のミライを取り戻すため希望の塔ユートピアへ潜入する間宮響の最後の戦いがつづられる。竹内涼真が響を演じ、高橋文哉、板垣李光人らがキャストに名を連ねた。

映画ナタリーではソフト発売を記念し、ライター・明日菜子のレビューを掲載。シリーズを牽引してきた竹内の情熱や、高橋ら若手キャストの魅力を考察する。そして後半では本作の魅力をコラムで紹介。アクションの数々、豪華版Blu-rayに付属する特典映像の見どころを解説する。

文 / 明日菜子(レビュー)、大畑渡瑠(コラム)

竹内涼真は“本気(マジ)”が似合う俳優

寄稿 / 明日菜子

おそらく竹内涼真は日本で五本の指に入る“本気(マジ)”が似合う俳優である。他には誰がいるかと聞かれると、そうすぐには思いつかないのだが、竹内涼真は本気(マジ)が似合う。本気ではなく“マジ”である。爽やかな好青年や胸キュンドラマの相手役など、若手俳優のメインストリームを歩んできたかと思いきや、その一方で、難易度の高い作品にも挑戦しつづけてきた。いや、“請け負ってきた”という表現の方が正しいかもしれない。

誰もが知っている超人気韓国ドラマのリメイク、父親の冤罪を晴らすために過去と未来をタイムスリップする青年、そしてゴーレムパンデミックに立ち向かう男……。どんなに突飛な世界観だったとしても、竹内が演じていれば、自然と画面に引き込まれてしまう。そこにいる竹内が誰よりも“本気(マジ)”だからだ。

竹内涼真主演「君と世界が終わる日に」(日本テレビ系)シリーズが、この度「劇場版 君と世界が終わる日にFINAL」にて幕を閉じた。始まりは2021年1月期に放送された地上波連続ドラマだったが、Season2以降はHulu限定配信になり、Season5まで展開されている。昨今のドラマにおいて、医療ドラマや刑事ドラマ以外で長期シリーズ化するのは異例であり、海外のフォーマットを日本作品でも取り入れてみようと、かなりチャレンジングな企画だった。

竹内涼真演じる間宮響。

竹内涼真演じる間宮響。

かくいう筆者もHuluまでは追えず、テレビドラマ版のみ視聴していた。「Hulu配信になってグロテスクさが増したらしい」と風の噂には聞いていたのだが、今回のコラム執筆にあたり、約3年ぶりに「きみセカ」の世界に飛び込むことになったのである。全シリーズ見ていなくても大丈夫だろうか……と、そんな心配は無用だった。テレビドラマ版だけ視聴していた筆者のような人はもちろん、「劇場版 君と世界が終わる日にFINAL」は、シリーズを熱心に追いかけていた人も、そして「きみセカ」シリーズ初見の人も全力で楽しめる劇場版になっているのだ!

“ゴーレム”という言葉を初めて知った方へ、今作のあらすじを説明しよう。自動車整備工の間宮響(竹内涼真)は、高校時代からの恋人である研修医の来美(中条あやみ)にプロポーズをしようとしていたものの、その幸せな日々は一変。謎のウイルスが広がり、平和だった街は“ゴーレム”と呼ばれる化け物に埋め尽くされてしまう。荒れ果てた世界の中で、響たちの過酷なサバイバル生活が始まる。

劇場版の舞台は、ゴーレムたちが蔓延る世界の中で、唯一インフラが整った“ユートピア”にそびえ立つ2つのタワー。一つは政治家などの権力者たちが住み、もう一つでは科学者たちが対ゴーレムワクチンの開発に日々勤しんでいる。響はユートピアで出会った男たちとタワーの最上階を目指す。一人は行方不明の幼なじみを探して、一人は家族のためにワクチンを求めて、そして響は自らの夢や希望である娘・ミライを取り戻すために──。

左から高橋文哉演じる柴崎大和、窪塚愛流演じる藤丸礼司、板垣李光人演じる天城ジン。

左から高橋文哉演じる柴崎大和、窪塚愛流演じる藤丸礼司、板垣李光人演じる天城ジン。

シリーズの看板を背負ってきた竹内をはじめ、高橋文哉や堀田真由、板垣李光人ら今をときめく超人気キャストの共演は、スケールの大きい劇場版ならではの魅力だ(さらにサプライズゲストも!)。無事に明日を迎えられるか分からない世界だからこそ、ダイレクトな感情が行き交うストレートな人間ドラマが「きみセカ」シリーズの見どころである。

特に注目したいのは、高橋文哉が演じる柴崎大和。今作における“もう一人の主人公”といっても過言ではない。劇場版から登場する大和は、やんちゃ気質のわりに、看護師として働く幼なじみの葵(堀田真由)になかなか想いを伝えられなかったりとピュアな一面を持つ。とび職で高所にも慣れているため、サバイバルにはうってつけの新キャラクターだ。

高橋文哉演じる柴崎大和(右)と、堀田真由演じる羽鳥葵(左)。

高橋文哉演じる柴崎大和(右)と、堀田真由演じる羽鳥葵(左)。

ここでお気づきになった人もいるだろうか。大和と葵、二人はかつての“響と来美”を投影したキャラクターなのである。職業や性格、二人のパワーバランスだけでなく、初対面時にいきなり響に突っかかってきた大和の姿は、若かりし頃の響を思い出した。すぐ熱くなってしまう男たちをなだめようとする来美と葵も似た空気を感じる。しかし、ゴーレムウイルスに感染した来美はすでに亡くなっており、シリーズ全体を通して問いつづけてきた“究極の愛”の答えは、大和と葵に託されることになった。この絶望的な状況の中で、大和は愛する人と共に生き抜くことができるのか。今作がたどり着いた“もう一つの答え”にも注目である。

そして、この壮大な物語を背負いつづけた竹内涼真の“本気(マジ)”を、ぜひ最後まで見届けてほしい。

間宮響の物語が堂々完結、“愛”を体現したアクションなど劇場版の魅力をコラムで紐解く

娘のためならば…決死のアクションに圧倒され続ける

間宮響は弓道を習っていたことから、シリーズにおいて一貫して弓を使用しゴーレムに対抗。その手で何人もの生存者を救ってきた“勇者”たる佇まいは劇場版でも健在で、警備兵を相手に矢を放ち続け、ミライが捕らわれた「ユートピア」と呼ばれるタワーを登りながら冷静に状況を見据える姿には心躍らされる。また上層階では窓ガラスを銃で割ることで人々やゴーレムが外に吹き飛ばされていくシーンもあり、その判断力とアグレッシブな手法で圧倒する一幕も。「娘に会いたい」というリアルな感情に従って表出するアクションからは、彼自身が“無敵の戦士”へと成長したのだという実感も湧いてくる。一方で、彼とともにゴーレムに立ち向かう大和は、とび職であることから装具を着けた状態での戦闘に。そのダイナミックかつ荒削りな動きは少々の危うさも伴っているが、彼自身も愛する存在=葵を救出したいという思いが原動力となっていることが伝わってくる。タワーの窓から転落しそうになる危機を協力して乗り越えるなど共闘していく響と大和だが、ある場面においては2人が拳を交えるさまも描かれている。決死のアクションはまさに、彼ら自身からあふれる“愛”の体現なのだ。

左から竹内涼真演じる間宮響、黒羽麻璃央演じる加地裕也、高橋文哉演じる柴崎大和。彼らの共闘も本作の見どころ。

左から竹内涼真演じる間宮響、黒羽麻璃央演じる加地裕也、高橋文哉演じる柴崎大和。彼らの共闘も本作の見どころ。

最終章に挑む思いは特典映像にも、“ゴーレムメイク”のこだわりも明らかに

豪華版Blu-rayでは約1時間の特典映像を堪能できる。劇場版のクランクインはSeason4の撮影を終えたばかりの2023年3月5日。竹内からは4年にわたってシーズンを引っ張ってきた座長としての貫禄に加え、これから物語の最終章に挑むという決意も感じられる。インタビューでは竹内が本作の見どころを存分に語るほか、板垣、黒羽麻璃央、堀田らエネルギッシュな共演者たちそれぞれの印象を話す様子も。橘優輝にまつわる「メイキングでぜひ使ってほしい」というエピソードも明かされる。全編を通して生死を懸けたシーンが連続するために過酷な撮影が行われていくが、若手キャストと積極的にコミュニケーションを取る竹内の“兄貴感”が現場の空気を作り上げており、高橋が窪塚愛流らとじゃれ合いながらあどけない表情を見せる姿もあった。中盤には本シリーズにおいて重要な“ゴーレムメイク”を施される竹内の姿が。「世界一悲しいゾンビにしたい」と語る彼の真意とは何か。響の終着点を見据えた竹内の言葉や、造形のこだわりをメイキングから受け取ってほしい。