永瀬廉×杉咲花×北村匠海「法廷遊戯」鼎談、芝居は仮面を被る感覚?それとも……。三者三様の答えとは (2/2)

芝居は仮面を被る感覚?それとも…

──さて、「法廷遊戯」は<仮面の裏に隠された真実>が暴かれていく物語ですが、その仮面にちなんだ質問です。皆さん、俳優として別の人物を演じられているわけですが、役になるというのはそれこそ仮面を被る感覚に近いんでしょうか? それとも素顔の自分に役を近付けていく感覚に近いんでしょうか?

永瀬 僕はもう、お芝居をするときは素顔じゃなく別人格になっていますね。自分に寄せていくというよりは、監督からもいろいろ意見やアドバイスをいただきながら、全然別の自分を作っていくような感覚です。それで言うと、仮面を被っているのに近いのかな。

──今回で言うと、セイギという1つの役の中でもロースクール生のときと弁護士になってからでは顔つきや雰囲気も全然違っていましたが、そのあたりは意識されましたか?

永瀬 どうだったんだろう。いや、たぶん、その場面ごとに監督と話したことを大事にしていて、僕がどうしたい、こうしようって考えるというよりも、監督の求めるものを自分なりに形にしていくスタンスだったので、結果そうなっていったんだと思いますね。

ロースクール生の描写から2年後、セイギは弁護士として働き始める。

ロースクール生の描写から2年後、セイギは弁護士として働き始める。

杉咲 役の中での違いでいうと、中学生時代の回想シーンも印象的でした。あの髪型が似合う人は、なかなかいないですよね! 今までに見たことのない永瀬くんでした。

北村 あれいいよね! 本当に若返った感じで、キュートでした(笑)。

永瀬 ホンマ? 中学生に見えた!? いつもよりひげを深く剃ったもん(笑)。だいぶ短かったよね。あの髪型は僕のリクエストではなかったんですが、ああいう形になって、眼鏡もスポッと掛けられて。あれが僕のクランクアップで、あの格好で花束ももらいました(笑)。

北村 似合ってたよ(笑)。仮面の話に戻すと、僕も役との接点は考えたことはないです。結果、接点が見つかることはあっても、自分から探しに行くことはないですね。役の仮面を被るというよりは、役のその人と生きるというか。自分であって自分でない人が隣にいて、その自分と肩を組んでいるみたいな感覚に近いかもしれない。そのほうが発見も多いので、事前には何も決めずに、今回なら廉くんが演じるセイギを目の前にしたとき、花ちゃんが演じる美鈴を目の前にしたときに生まれる馨がどんなものなのか、自分でも楽しみながら臨んでいます。

左から杉咲花、北村匠海。

左から杉咲花、北村匠海。

杉咲 私は仮面を被るというよりは、鎧を纏っているような感覚です。物理的にもその役の衣装や小道具が用意されていて、それを身に付けていくことでその人になっていくというか。そのうえで、素顔の自分にどんなものを足したり引いたりしたらよいのか考えている感覚です。

北村 三者三様ですね。話を聞いていて、それこそ「法廷遊戯」みたいだなと思いました。セイギって仮面的で、美鈴って鎧的じゃないですか。セイギは表情を一番見せない人で、美鈴は心を一番見せない人。どこか通じるものがあったのかもしれないですね。

永瀬さんのセイギは、繊細ではかない(杉咲)

──最後に皆さん、改めて今回それぞれ「法廷遊戯」においてセイギ、美鈴、馨として向き合って、共演を通じて感じられたことを聞かせてください。

杉咲 永瀬くんの清義は、すごく繊細ではかない空気感がありました。ポンッと押したらゆらゆらとしそうなのですが、その中に絶対に倒れることのない軸があって、そういうところに美鈴は憧れを抱いていたのかなと思います。北村くんの馨はとにかくじっとこちらを見つめてくる視線から目がそらせないというか、そらしたらいけないような感覚になるんです。何かを見透かされてしまいそうな恐さがあって、馨と対峙するシーンは緊張しました。

杉咲花

杉咲花

北村 今も見透かしています(笑)。というのは冗談ですが、花ちゃんは昔から芝居に爆発力があって、今回の美鈴でもそれをすごく感じて圧倒されました。僕がじっと見つめていたのは、こちらとしても目をそらしたら負けてしまうんじゃないかというのがあったんですよね。

杉咲 闘いだったんだ?(笑)

北村 馨と美鈴って、闘いじゃないですか。目をそらしたら負けって思ってやっていました。廉くんに関しては、花ちゃんも言っていた軸のぶれなさというのを僕も初めて共演したときから感じていて、廉くんとセイギをつなぐものになっている気がしましたね。幹の太さみたいなものが感じられて、それが主演としての振る舞いや居方みたいなものにもつながっていて。特にセイギと美鈴のシーンから軸の強さが伝わってきて、そこに馨に映るセイギとはまた違うセイギがいたので面白かったです。

北村匠海

北村匠海

永瀬 セイギと美鈴は幼い頃から同じ時間を過ごしてきた2人ですが、物語が進んでいくにつれて、セイギも知らなかった美鈴が見えてくるんですよね。接見室でセイギが美鈴にあることを告げて、美鈴が感情を爆発させるところは、花ちゃんのお芝居に恐さすら覚えて、セイギの覚悟が揺らぎそうになるくらいの圧力を感じました。でも素顔の花ちゃんはすごくほわんとしていて、本当に穏やかな時間が流れていて(笑)。そこは花ちゃんのすごいところです。馨はセイギにとっては数少ない心を開ける大切な相手で、たぶんセイギからしたらすっと心の中に入ってきた存在だと思うんです。匠海くんもそういうところがあって、重なりましたね。ある意味、一番、セイギの心を揺るがしていくことになるのは馨ですが、そういう特別な役を演じてくれたのが匠海くんで、本当によかったです。

プロフィール

永瀬廉(ナガセレン)

1999年1月23日生まれ、東京都出身。2018年にアイドルグループ・King & PrinceのメンバーとしてCDデビュー。2019年に「うちの執事が言うことには」で映画初主演、「FLY! BOYS, FLY! 僕たち、CAはじめました」でテレビドラマ初主演を飾った。2021年には映画「弱虫ペダル」で第44回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞。そのほか主な出演作にドラマ「俺のスカート、どこ行った?」「新・信長公記~クラスメイトは戦国武将~」、連続テレビ小説「おかえりモネ」、映画「真夜中乙女戦争」などがある。

杉咲花(スギサキハナ)

1997年10月2日生まれ、東京都出身。2013年のドラマ「夜行観覧車」で注目を集め、2016年公開の「湯を沸かすほどの熱い愛」で第40回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞および新人俳優賞に輝く。連続テレビ小説では2020年度後期の「おちょやん」で主演。主な出演作は映画「トイレのピエタ」「無限の住人」「十二人の死にたい子どもたち」「楽園」「青くて痛くて脆い」、ドラマ「ハケン占い師アタル」「杉咲花の撮休」など。待機作では12月に「市子」、2024年3月に「52ヘルツのクジラたち」がある。

北村匠海(キタムラタクミ)

1997年11月3日生まれ、東京都出身。4人組バンド・DISH//のボーカル兼ギターとしても活動。2017年の映画「君の膵臓をたべたい」では第41回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した。そのほかの出演作に「勝手にふるえてろ」「君は月夜に光り輝く」「サヨナラまでの30分」「思い、思われ、ふり、ふられ」「明け方の若者たち」、「東京リベンジャーズ」シリーズなど。12月には主演を務めたNetflixシリーズ「幽☆遊☆白書」の配信を控える。