「ダンサー・イン・ザ・ダーク」や「ニンフォマニアック」2部作などで知られるラース・フォン・トリアーの監督最新作「ハウス・ジャック・ビルト」が、6月14日に公開される。
1970年代の米ワシントン州が舞台の本作は、マット・ディロン演じる主人公・ジャックが殺人に没頭しながら“ジャックの家”を建てるまでの12年間を描く物語。2011年にアドルフ・ヒトラーへの共感を示す発言をしてカンヌ国際映画祭を追放されたフォン・トリアーにとって、同映画祭への復帰作となった。上映時には途中退出者が続出したが、終映後はスタンディングオベーションが沸き起こったという賛否両論の作品で、日本ではR18+指定として無修正ノーカット完全版の上映が実現した。
映画ナタリーでは、「邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん(以下、邦キチ! 映子さん)」シリーズで多くの映画を紹介しているマンガ家・服部昇大に本作を一足先に鑑賞してもらった。「不謹慎だと思いつつ笑ってしまう」と同作について語る服部。果たしてその理由とは? また、服部が本編を観て描き下ろしたマンガもあわせて楽しんでほしい。
取材・文 / 秋葉萌実 撮影 / 佐藤類
これまでのシリアルキラーものとは違う衝撃作
──服部先生は、以前Twitterに「アイアン・スカイ」のイラストを投稿し、「もし邦画縛りじゃなかったら邦キチはこういうのばっか紹介する漫画になってたかもしれない」とツイートされていました(参照:服部昇大 (@hattorixxx) | Twitter)。きっと本作にも興味を持っていただけるのではと思ったのですが、ご覧になっていかがでしたか?
まさかこの映画の話が自分に来るとは(笑)。衝撃作だなと率直に思いました。シリアルキラーものはけっこう観ているのですが、これまでに触れた作品とは少しテイストが違う。グロいけどリアリティもあるし、殺人鬼の心理がすごくよく表れていたので驚きました。
──ちなみに服部先生のマンガ「邦キチ! 映子さん」には、とてつもない邦画愛を持つ“邦キチ”やツッコミ役の“部長”など、個性的な映画ファンが登場します。先生ご自身が映画をご覧になるときのスタンスは、同作のキャラクターの中だと誰に近いのでしょうか。
やっぱり部長みたいにツッコミどころは気になるし、なんだこれ!?と感じるシーンに目が行きがちですね。映画は変わった邦画を仕事でたくさん観ているからか、大ヒット作を見逃しがちになってしまったので、最近は意識的に観るようにしています。最近劇場で観て面白かったのは「名探偵ピカチュウ」。
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不謹慎だと思いつつ笑ってしまう
- 「ハウス・ジャック・ビルト」
- 2019年6月14日(金)全国公開
- ストーリー
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1970年代の米ワシントン州。建築家になる夢を持つ独身の技師ジャックは、あるきっかけから殺人を繰り返すようになる。彼はアートを創作するかのように殺人に没頭し、12年の歳月ののちに“ジャックの家”を建てるが……。
※R18+指定作品
- スタッフ / キャスト
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監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
出演者:マット・ディロン、ブルーノ・ガンツ、ユマ・サーマン、シオバン・ファロン、ソフィー・グローベール、ライリー・キーオ、ジェレミー・デイビスほか
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- 服部昇大(ハットリショウタ)
- 1982年8月10日生まれ、岡山県出身。2004年、手塚賞準入選の「未来は俺等の手の中~J.P. STYLE GRAFFITI~」が月刊少年ジャンプ増刊王2004年WINTER号(集英社)に掲載され、デビュー。2007年から2009年までジャンプスクエア(集英社)にて「魔法の料理 かおすキッチン」を、2014年から2016年にはとなりのヤングジャンプにて「テラフォーマーズ」のスピンオフギャグマンガ「今日のテラフォーマーズはお休みです。」を連載。日本語ラップにも造詣が深く、Webや同人で「日ペンの美子ちゃん」のパロディマンガ「日ポン語ラップの美ー子ちゃん」を発表。それがきっかけで2017年より6代目「日ペンの美子ちゃん」担当作家となる。現在、「邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん」Season1、2のコミックスが販売中(発行:ホーム社 / 発売:集英社)。Season3がホーム社のWebサイト・スピネルで連載されている。