「ULTRAMAN FINAL」BD-BOX発売記念、青柳尊哉が語る「ULTRAMAN: Rising」との相違点

清水栄一×下口智裕によるコミックを原作とするアニメ「ULTRAMAN」。2019年に配信が始まった本作の掉尾を飾るFINALシーズンを収録した「ULTRAMAN FINAL」Blu-ray BOXが、5月29日に発売された。これを記念して、長年この作品の応援隊長を務め、「ウルトラマンオーブ」ジャグラス ジャグラー役などでも知られる俳優・青柳尊哉にその胸の内を語ってもらった。青柳は、FINALシーズンに登場する五条隊員役として念願だった声の出演を果たし、また6月14日より配信予定のNetflix映画「ULTRAMAN: Rising」でもアオシマ隊員の日本語吹替を担当している。同作の見どころについても話を聞いた。

取材・文 / 谷崎あきら(TARKUS)撮影 / MANABU NAKANISHI

全編を貫く緊張感の正体が、ついに解明されるカタルシスがある

──いよいよアニメ「ULTRAMAN FINAL」のBlu-ray BOXが発売されます。感慨はいかがでしょうか?

僕が応援隊長みたいな形で、こんなに長く関わることになるなんて、当時は思いもしませんでした。続いていくというのは偉大なことだなと思いますし、続けさせていただくというのもまた、ありがたいと同時に思います。そんな実感ですね。この作品と一緒に歩めた5年間という時間を通じて、僕自身の中にも物語ができた。それはとてもありがたいことだなと、勝手に感じています。

「ULTRAMAN」FINALシーズン第1話場面カット

「ULTRAMAN」FINALシーズン第1話場面カット

──青柳さんは、原作マンガの読者でもあり、清水栄一先生、下口智裕先生とも交流がおありです。FINALシーズンについて、お二人と話されたことは?

僕は当然、原作マンガの最終回がどうなる構想なのか知る由もないわけですが、先生方がすでに「終わらせにかかっている」ということは、ずいぶん前から伺っていました。それなのに、まさかアニメのほうが先に終わってしまうとは(笑)。その擦り合わせをどんなふうに行ってきたかっていうお話は、けっこう聞かせてもらいましたね。「ネタが被った!」とよくおっしゃっていました。やっぱり作品の本質といいますか、根底に流れているテーマをつかんでいるクリエイターたちは、別々に考えていても結局同じところに行き着くんだなと感心したものです。すごく面白いと思ったエピソードですね。

青柳尊哉

青柳尊哉

──原作マンガに先んじて明かされる思惑などもあり、アニメ版独自のクライマックスが描かれました。

アニメ版もマンガ版もそうですが、物語全体にある種の緊張感みたいなものが通底している。その緊張感の正体がついに紐解かれるという点も、FINALシーズンの醍醐味だったと思います。SFドラマ的な緊張感と、サスペンスというか、ミステリードラマ的な緊張感の両方があって、果たして黒幕は誰なのか? いったいなんのためにそんなことをするのか? ずっとどこかに引っかかっている感覚。それが判明したことによってもたらされる爽快感があったと思います。観ていてすごく「なるほど、そういうことか!」とひざを打つ瞬間がありましたね。

「ULTRAMAN」FINALシーズン第12話場面カット

「ULTRAMAN」FINALシーズン第12話場面カット

──終盤、重要な役割を持つゼットン星人・エドの言う「地球人に根付く誤ったウルトラマン信仰の破壊」ですね。そのために、父から力を受け継いだ進次郎をウルトラマンとして覚醒させ、そのうえで失墜させる必要があったという。

偏った正義とか、正義への妄信みたいなものは、ウルトラマンに限らずヒーローを創っていく過程で誰もがぶち当たる壁の1つですよね。みんな頭のどこかで「ヒーローと言いながら、一部の人だけに味方してはいないだろうか?」と、疑いながら生きているような気が僕はする。それを真正面から問いかけたのが、あのシーンだと思います。しかも、その回答として絶対の正解を提示しているわけでもない。エドの言うように、ヒーローへの信仰が悪なのか、それともヒーローそのものが悪であり厄災なのか、そこはずっと考えていかなければいけない問題なのかもしれない。どれだけ丁々発止やり合っても結論の出ない、終わらない話で、考え続けることが大事なのかなと思いましたね。

「ULTRAMAN」FINALシーズンより、ULTRAMANのCタイプスーツ。

「ULTRAMAN」FINALシーズンより、ULTRAMANのCタイプスーツ。

──満を持して登場するULTRAMAN SUITの最終形態・Cタイプスーツの印象はいかがでしたか?

シンプルに全部削ぎ落した、原点回帰的なデザインですよね。僕らがずっと慣れ親しんできた当初のスーツが、文字通り殻を破るかのごとくバリバリと剥がれ落ちて中からあのスーツが出てきたときの興奮を、今でも覚えています。あれはかっこいいですよね。燃えます。「ああ、ここに帰結するのか!」という説得力を感じます。今までのスーツは、あの目の鋭さとか、メカニカルな機能美に魅力があったわけですが、ここに来てそれを全部壊しにいっている。そんなところもすごいと思います。

実は最初、五条隊員は地球人ではないという設定でした

──青柳さんは、科特隊のオペレーター・五条隊員として声の出演もされていますね(参照:「ULTRAMAN」に青柳尊哉が科特隊オペレーター役で出演、シーズン2のBOX発売も決定)。

アニメの「ULTRAMAN」、そして原作マンガのほうでも、初期から応援隊長という形でここまで関わらせていただきながら、「どこかで出演できるタイミングはないだろうか?」と、ひそかに機をうかがい続けていたんです。いつでもウルトラマンをやる準備をしていました(笑)。ウルトラマンにはなれなかったんですが、ようやくFINALシーズンで「青柳さんに演じていただきたい役があるんです」とお声掛けをいただきまして、「喜んで!」と引き受けさせていただきました。正直、「市井の人の1人、くらいのキャラクターなんだろうな」と軽い気持ちで構えていましたから、まさかこんなに立派な役をいただけるとは思っておらず、それはそれで恐縮しましたね。

──五条隊員を、どういうキャラクターだと説明されていましたか?

「科特隊の一員で、いろいろと関わってくる役どころです」と聞いていました。実はもともと異星人で、エドの手先として暗躍しているっていう設定があったんですよ。最終回のエンディング後、アダドやバルキュア、マーヤたち異星人組が居酒屋でクダを巻いているシーンがありますよね。あそこにちゃっかり混ざっていて、そこで初めて異星人だったとわかるっていう。バルキュアに絡まれて「あんまり外で話しかけないでください、誰かに見られたら……」みたいなセリフもあって。だから最初は「そんな重たい役は嫌です!」って言っていたんですよ。でも台本をいただいて目を通してみると、「あれ? 違うな……」と(笑)。いつの間にか、その設定はなくなったみたいですね。

──では、実は異星人であるという設定を踏まえて、五条隊員を演じていらっしゃったのでしょうか?

いえ、異星人だとしても、完璧に地球人と同様に振る舞えなければ、科特隊に紛れ込むのは不可能なので、そんなに難しく考えず、地球人のつもりで演じていましたよ。人を欺くような人っていうのは、そのときやるべきことを全力でやっているはず。だからこそ、ふたを開けて正体を明かしたときに驚きや絶望が生まれるものですから。結果的にふたを開けることはなかったけど、どちらにしても演じ方に違いはなかっただろうと思います。

──以前別のインタビューで、五条隊員以外のある人物にも声を当てられたとおっしゃっていますね。

はい、最終回でエドに倒された進次郎の周りに集まってくる市民の1人ですね。「ガヤ」といって、街の雑踏や群衆のざわめきみたいなものは、声優さんの現場でもベテランから新人まで関係なく、みんなで演じるんです。僕もFINALシーズン全体を通してそういうものに参加させていただいていて、科特隊の戦闘員の声なども入れています。そんな中で、最終回の進次郎が立ち上がる前、名もない男が発する声をやらせていただきました。ある種、ウルトラマンのもう1つのテーマを象徴するような一言でしたので、こんなに重要なセリフを渡されるのは、やっぱりうれしかったですね。「どうやって言葉にしようかな」と、けっこう考えました。とは言え、特別器用な俳優というわけでもないですから、聴いていただけばすぐわかるような気がします。五条隊員とあんまり差がない声なので(笑)、ぜひこのBlu-ray BOXで確認してみてください。