「玉骨遥(ぎょっこつよう)」「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」特集 | 辛酸なめ子が“両片思い”の師弟関係&幾度離れても惹かれ合う純愛カップルにときめく (2/2)

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」とは?

激動の時代に翻弄され、惹かれ合いながらも出会いと別れを繰り返す男女の愛と純情を描いたロマンス時代劇。知性と武術を兼ね備えた謎の男イ・ジャンヒョンに「ストーブリーグ」「黒い太陽~コードネーム:アムネシア~」「わずか1000ウォンの弁護士」のナムグン・ミン、夢で見た運命の人との結婚を願う世間知らずのお嬢様ユ・ギルチェに「賢い医師生活」「一人だけ~あなたさえいれば~」のアン・ウンジンが扮した。「マイネーム:偽りと復讐」のイ・ハクジュ、「ドクタープリズナー」のイ・ダインも出演している。2023年のMBC演技大賞ではベストカップル賞を含む8冠、第60回百想芸術大賞ではテレビ部門の作品賞、男性最優秀演技賞の2冠に輝いた。

韓国ドラマ「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」予告編公開中

辛酸なめ子描き下ろしイラスト「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」編
辛酸なめ子描き下ろしイラスト「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」編

辛酸なめ子描き下ろしイラスト「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」編

辛酸なめ子インタビュー

境遇の落差が激しい波瀾万丈のストーリーも韓国ドラマらしい面白さ

──韓国ドラマ「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」は史実にフィクションを織り交ぜて描かれた本格時代劇です。まずは率直なご感想をお聞かせください。

17世紀の韓国の歴史が描かれていてお勉強になりました。韓国人の知人が「韓国人にせっかちな人が多いのは歴史的に何度も他国から攻め込まれたからですよ」と言っていたことがあったのですが、こういうことだったんだと……。後金の君主で清朝の初代皇帝になるホンタイジも登場しますが、以前インタビューしたことがある作家で占い師の愛新覚羅ゆうはんさんのご先祖様だと思うと、いっそう興味が湧きました。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、左からアン・ウンジン演じるユ・ギルチェ、ナムグン・ミン演じるイ・ジャンヒョン。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、左からアン・ウンジン演じるユ・ギルチェ、ナムグン・ミン演じるイ・ジャンヒョン。

韓国ドラマは登場人物の運命に対して容赦しないように思います。前半はヒロインがブランコに乗ったりしていて、人々が楽しく暮らしている村の暮らしが描かれますが、途中から戦争が始まり敵に追われたヒロインたちがドロドロな姿になっていく……そういう境遇の落差が激しい波瀾万丈のストーリーも韓国ドラマらしい面白さだと思いました。

──ナムグン・ミンさんが演じたイ・ジャンヒョン、アン・ウンジンさんが演じたユ・ギルチェ。主人公カップルのどんなところに魅力を感じましたか?

ナムグン・ミンさんは目つきがセクシーな俳優さんだと思います。演じるジャンヒョンという役は、人生経験値が高そう。でも、どこから来たのかわからない謎の人物というミステリアスな設定。チャラく見えるのに実は一途というのがすごくいいギャップですね。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、ナムグン・ミン演じるイ・ジャンヒョン。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、ナムグン・ミン演じるイ・ジャンヒョン。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、アン・ウンジン演じるユ・ギルチェ。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、アン・ウンジン演じるユ・ギルチェ。

一方、アン・ウンジンさんは素朴な純粋さ、垢抜けないところがあるのが魅力の顔立ちなのかもしれません。演じるギルチェはお嬢様という設定ですし、恋愛に対して夢見がち。最初に好きだったナム・ヨンジュンへの思いは恋に恋するような感じで、それがずっと抜けきれないところがあります。でも、ヨンジュンも性格的に素晴らしい人だったので、男性を見る目はありますね。

「そなた」という言葉の使い方がいい

──2人のラブストーリーはアメリカ文学の名作「風と共に去りぬ」のような設定でした。誇り高い良家のお嬢様が真実の愛に出会いながらもすれ違っていく物語をどう思われましたか?

「風と共に去りぬ」にインスピレーションを得たと聞いた時点で、もしかしたら2人は結ばれないんじゃないか……そういう切なさを抱きながら観始めました。実際、冒頭からちょっと不穏というか、切ないラストを想像させられるシーンで始まりますよね。ただ、すれ違い続けるラブストーリーというのが韓国ドラマでは王道で、「愛の不時着」もそうでしたが、やっぱり簡単に結ばれないというのがいいのかもしれません。2人の恋はこちらが安心しかけると何かに阻まれる、そういうことが繰り返されます。「玉骨遥」と同じように両思いになるまでの展開がスピーディーではないのが、かえってよかったです。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、左からナムグン・ミン演じるイ・ジャンヒョン、アン・ウンジン演じるユ・ギルチェ。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、左からナムグン・ミン演じるイ・ジャンヒョン、アン・ウンジン演じるユ・ギルチェ。

──特にこういうシチュエーション、セリフにときめいたというところはありますか?

2人が夢の中で出会っているという幻想的な設定、キスシーンのロケーションなど、ロマンティックな演出にこだわりを感じました。ジャンヒョンのセリフも「二度とそなたを置いて去らぬ」「必ずやそなたに会いに行く」など、「そなた」という言葉の使い方がいいですね。キュンときます。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」場面写真

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」場面写真

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、左からアン・ウンジン演じるユ・ギルチェ、ナムグン・ミン演じるイ・ジャンヒョン。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、左からアン・ウンジン演じるユ・ギルチェ、ナムグン・ミン演じるイ・ジャンヒョン。

また、「容易に手に入らぬ男になろうと決めた」と言うセリフ。手に入れたら飽きるタイプだというギルチェの性格を承知しているジャンヒョンが、あえて言う言葉なんですね。そういう両思いらしいとわかったあとに答え合わせができるセリフにもときめきました。あと、ギルチェがどこかに行こうとして立ち去ろうとしたら、ジャンヒョンが腕をつかんで引き寄せるシーン。あんなふうにちょっと強引に引き戻されるというのは、これまでされた経験がないので憧れます。通行の邪魔になっていると引っ張られたことはありますが、全然ロマンチックじゃなくて軽い苛立ちしか芽生えません。

限界を設けていないところが韓国ドラマの吸引力

──主人公カップルの周囲にはたくさんの個性豊かな人々がいます。気になったキャラクターは誰ですか?

ギルチェの欠点も知り尽くしたうえで彼女のことが大好きな、イ・ダインさん演じるキョン・ウネです。彼女はギルチェの親友としてお互い支え合って、戦時中も一緒に試練を乗り越えていく戦友です。だから、どちらもヨンジュンが好きですが、三角関係や恋のライバルというのとはちょっと違います。ウネは「ギルチェはヨンジュンのことが好きでも手に入れたら飽きるはず」と言いますが、ギルチェが自分の中で盛り上がっているだけだというのを見抜いているんです。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、アン・ウンジン演じるユ・ギルチェ。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、アン・ウンジン演じるユ・ギルチェ。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、イ・ダイン演じるキョン・ウネ。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、イ・ダイン演じるキョン・ウネ。

それから、ジャンヒョンとギルチェの恋をいっそうややこしくするリャンウム。私はリャンウムとジャンヒョンの腕枕にすごくときめきました。ジョンヒョンが横たわっていて、リャンウムがその腕に自分から頭を乗せるシーンです。リャンウムがジャンヒョンに「私はお前のものだ」「お前のために死ねる」と言うシーンもありました。そんなBLっぽいキャラクターからも目が離せません。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、左からナムグン・ミン演じるイ・ジャンヒョン、キム・ユヌ演じるリャンウム。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、左からナムグン・ミン演じるイ・ジャンヒョン、キム・ユヌ演じるリャンウム。

──主人公カップルの恋路を邪魔するキャラクターとしては、さらにク・ウォンム、カックァといったくせ者も登場しますね。

武官のウォンムはプライドがすごく高くて男性の嫌な部分を集めたようなキャラでした。ギルチェのことを美化して絵を眺めたりする一方で、女性の貞操がどうとか言って急に冷たくなったり、手柄を横取りして自分のものにしたり。でも、こういう人がいると、やっぱりジャンヒョンは遊び人に見えたけど実は真面目でいい人だった……性格的にも大人だし、頭いいし……と、どんどんよく思えてきます。

そして、敵側の覆面の女として登場してくるカックァ。自分からジャンヒョンにアプローチして共寝まで要求するのは、男尊女卑の時代劇では珍しく自立した女性像ですよね。でも、彼を手に入れるためになりふり構わないところが怖いです……。ただ、彼女の存在でまた後半のラブストーリーがスリリングに盛り上がっていきます。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、チ・スンヒョン演じるク・ウォンム。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、チ・スンヒョン演じるク・ウォンム。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、イ・チョンア演じるカックァ。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、イ・チョンア演じるカックァ。

──そのほか「恋人」の見どころはどこでしょうか?

歴史背景もしっかり描かれていて、清の人質となった気弱で世間知らずのお坊ちゃんといった感じの昭顕世子が悩む様子も上手な演技で本当にリアリティがありましたし、拷問シーンは想像以上に残酷で、そういう表現にも限界を設けていないところが韓国ドラマの吸引力だと感じました。そして、人間は何度もこうやって愚かな戦いをずっと今に至るまで繰り返していて、それがなくならない。支配層のつまらないプライドで民衆が苦しめられたりする。そういうのを観ていて戦争はいけない、世の平和を祈りたいという気持ちがどんどん湧いてきました。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、ナムグン・ミン演じるイ・ジャンヒョン。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、ナムグン・ミン演じるイ・ジャンヒョン。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、アン・ウンジン演じるユ・ギルチェ。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、アン・ウンジン演じるユ・ギルチェ。

泣ける展開のラブストーリーを観ると魂が浄化される

──中国ドラマも韓国ドラマも時代劇を好んで観るという日本人ファンが多くいます。その理由はなんでしょう?

日本と中国、韓国は距離が近いですが文化にはそれぞれ違いがあって、特に時代劇を観ると衣装や風習に未知のものがあったりして、興味深く観られるからかもしれません。ラブストーリーもネット以外の通信手段でお互いの気持ちを伝え合うというのはとても趣があって、すぐには大人の関係にならないピュアな恋はときめきが持続しますよね。窮地に陥ると相手が絶対助けに来てくれる、離ればなれになっても恋人を思い続けたり待ち続けたりするというのも、時代劇によくあるシチュエーションで、そういう泣ける展開のラブストーリーを観ると魂が浄化されたような気分になれるからかもしれません。

「玉骨遥(ぎょっこつよう)」より、左からレン・ミン演じる朱顔(しゅがん)、シャオ・ジャン演じる時影(じえい)。

「玉骨遥(ぎょっこつよう)」より、左からレン・ミン演じる朱顔(しゅがん)、シャオ・ジャン演じる時影(じえい)。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、左からアン・ウンジン演じるユ・ギルチェ、ナムグン・ミン演じるイ・ジャンヒョン。

「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」より、左からアン・ウンジン演じるユ・ギルチェ、ナムグン・ミン演じるイ・ジャンヒョン。

──「玉骨遥」「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」を観て改めて気付いたことはなんですか? この2作をどんな人にお薦めしますか?

シャオ・ジャンさんもナムグン・ミンさんも、2人とも演技力が素晴らしく才能にあふれた素敵な俳優さんだと実感できました。それから、現代はなんでもスマホやネットに頼りがちですが、それがなかった時代、男女は夢や異世界でも出会えていた。昔は恋人たちがそういう方法でコミュニケーションを取ることに信憑性があった……そんな現代人が忘れかけている感覚を思い出すこともできました。

ストーリーの展開もゆっくりで、雑多なビル街ではなく雄大な自然の風景が観られる時代劇ドラマは、時間を超越した現実逃避ができて不思議と癒やされる感じがします。今は目まぐるしい時代で、日常的に疲れてしまっている人が多いと思います。でも、時代劇ドラマを観ることで疲れた自分をリセットできるのではないでしょうか。情報過多の今の時代にお疲れ気味の方には、ぜひこの2作でデトックスすることをお勧めしたいです。

玉骨遥ぎょっこつよう
「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」
どっちのイケメンが見たい?X投稿キャンペーン

玉骨遥ぎょっこつよう」「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」の配信・DVDリリースを記念し、Xで合同キャンペーンを実施中。NBCユニバーサル・エンターテイメントが運営する「華ざかり!華流パラダイス」公式Xアカウント(@NBChua)をフォローのうえ、2作品の予告編を観て「本編を鑑賞したい!」と思った作品の投稿をリポストすると、参加者の中から抽選でDVDセットや「玉骨遥」の時影フィギュア&コースター、「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」のナムグン・ミン、アン・ウンジンのサイン入り韓国版プレスシートなどがプレゼントされる。

キャンペーン期間

2024年6月5日(水)~7月5日(金)

特設ページ

中国ドラマ「玉骨遥ぎょっこつよう」第1回特別公開中

プロフィール

辛酸なめ子(シンサンナメコ)

1974年8月29日、東京都生まれ。マンガ家・コラムニストとして雑誌、新聞、Webメディア、テレビなどで幅広く活躍し、独自の視点で幅広い層の支持を得ている。主な著書には「おしゃ修行」「辛酸なめ子の独断! 流行大全」「スピリチュアル系のトリセツ」「女子校礼讃」「無心セラピー」「新・人間関係のルール」、小説「ヌルラン」「電車のおじさん」などがある。