映画ナタリー Power Push - マンガ家・桂正和が語る「ファンタスティック・フォー」
スーパーヒーロー映画の原点と王道
原点を感じさせるスーパーパワー
──主人公たちが異次元空間に転送されるアイデアはいかがでしたか?
ファンタスティック・フォーとなる主人公4人全員が、転送装置に乗り込むわけじゃないのが、ヒネリとして面白かった。乗らなかったヒロインはどうするかと思ってたら、「なるほど」という展開で……。転送先が異次元というのも、最近のヒーローアクション映画としては斬新だよね? 行った先のプラネット・ゼロの映像も迫力があったな。
──ちなみにファンタスティック・フォーの中で、どのキャラクターの印象が強かったですか?
ザ・シングかな。たまたま呼ばれて転送実験に来ただだけなのに、こんな岩みたいな姿になっちゃってかわいそうに……。名前も、ザ・シングって「物」ってことでしょ。ひどくない?
──悪役のDr.ドゥームはいかがでしたか? 桂さんはやっぱり悪役の造形にも注目されるんじゃないかと思うのですが。
カッコいいじゃないですか! 宇宙服と一体化した外見がちょっと斬新。最近のマーベル作品の悪役の中でも、かなり個性的だよね。
リアルなアクションが増えたけどケレン味も大切
──悪役の存在が、主人公たちに使命を抱かせるのも王道ですよね。
そのあたりで大人の観客がカタルシスを受ける作りになってる。戦いの結末も消化不良になっていない。最近だと「アベンジャーズ」シリーズも、そこはクリアしてた。
──悪役も含め、ヒーローアクション映画って、やっぱり派手さもないと……。
そうそう! リアルなアクションに徹する作品も増えたけど、異様なものが出てくるわけだから、ケレン味も大切。だから俺は、コミカルな部分もある1989年の「バットマン」が大好き。その後の「ダークナイト」シリーズは、ちょっとなあ。耳立ててマント着けたバットマンに、リアルに殴り合うアクションやられても……なんか違うなあって。「ファンタスティック・フォー」や「アベンジャーズ」にはケレン味もあるし、そのあたり、マーベル作品は割り切って作ってる感じでいいよね。
──ちなみに「ファンタスティック・フォー」は、その「アベンジャーズ」や「X-MEN」よりも早く誕生した、マーベルのヒーローチームの原点と言われている作品です。
だからスーパーパワーも変に小細工に頼らず、シンプルなんだね。透明になったり、空を飛んだり。体が伸縮するのは、もちろん「ONE PIECE」以前のアイデアだし(笑)。俺が昔夢中になった「スーパースリー」という1960年代のアニメがあったけど、その作品で肉体が液体になったり、全身がバネになったりするパワーを持った主人公たちも「ファンタスティック・フォー」の影響を受けているのかもしれないね。
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- 「ファンタスティック・フォー」2015年10月9日より全国公開
発明好きのリードは、同級生のベンとともに物質転送装置を科学コンテストに出展。バクスター財団のストーム博士にスカウトされ、博士の養女スー、息子のジョニー、スーにしか心を開かない変わり者のビクターと研究を重ねる。やがて物質転送に成功したリードは、ジョニー、ビクター、そしてベンと装置に乗り込み、異次元空間のプラネット・ゼロにたどり着くが、アクシデントに見舞われ、ビクターを残して地球に帰還することになる。地球に戻った3人、そして管制室で物質転送の影響を受けてしまったスーの体に異変が起こり……。
スタッフ
監督・脚本:ジョシュ・トランク
製作:マシュー・ヴォーン
製作総指揮:スタン・リー
キャスト
リード・リチャーズ:マイルズ・テラー
スー・ストーム:ケイト・マーラ
ジョニー・ストーム:マイケル・B・ジョーダン
ベン・グリム:ジェイミー・ベル
ビクター・フォン・ドゥーム:トビー・ケベル
Dr.ストーム:レグ・E・キャシー
桂正和(カツラマサカズ)
1962年福井県生まれ。1980年に「ツバサ」で第19回手塚賞佳作受賞。1983年に週刊少年ジャンプで変身ヒーローものである「ウイングマン」の連載を開始する。翌年にはテレビアニメ化もされた。その後、「電影少女」「I"s」など青春恋愛ものも手がけ人気を博す。2002年より週刊ヤングジャンプにて「ZETMAN」の連載がスタート。特殊能力を持つ少年ジンを主人公にしたヒーローもので、2012年にはテレビアニメ化もされた。アニメの分野でも、「TIGER & BUNNY」のキャラクター原案、「牙狼 -紅蓮ノ月-」のメインキャラクターデザインなどを手がけている。