2018年アカデミー賞受賞作いよいよ公開!「君の名前で僕を呼んで」日本語吹替版キャストインタビュー・入野自由×津田健次郎|心が揺れる瞬間に共感、ひと夏の忘れられない恋

アーミー・ハマーはすべてが強く美しい(津田)

──キャラクターに共感した部分はありましたか?

入野 昔は自分にもこんなことがあったなと、観ていて共感しました。誰かに触れたいというような心の揺れは、年齢関係なく誰しもあるものだと思いますが、それが17歳というところで、特に強く見えるんですよね。

「君の名前で僕を呼んで」

津田 エリオもオリヴァーも、すごく早熟な感じがしました。オリヴァーに関しては「本当に24歳なの!?」と驚いたくらい(笑)。彼はよくも悪くも大人になってしまっていて、メンタルもエリオよりはるかに強い。それでもふわっと心が動く瞬間や、無垢なものに惹かれていく感じはよくわかるなと思いました。あと、劇中にはきれいな風景がたくさん映っているんですが、僕はそれをエリオの心象風景だと思っていて。なので観ていてドキっとしましたね。

──その理由はなんでしょう?

津田 自分には失ってしまったものがたくさんあることに気付いて……。そういう感受性を持っていたと思うんだけどなあ、でもまだかろうじて片足半分くらいは残ってるぞ、と。オリヴァーの視点で考えれば、そのような捉え方もできるのかなと感じます。オリヴァー自身も発展途上の人間なので、これからの自分について苦悩している部分は理解できる気がしました。

──主要キャストの演技に関してもお伺いしたいです。

「君の名前で僕を呼んで」より、ティモシー・シャラメ演じるエリオ。

入野 エリオは、ティモシー・シャラメにとってこの瞬間しかできない役。ハマリ役に出会えることはなかなかありませんが、ティモシーの見た目や声などすべてが“今だ”という、タイミングのよさを感じました。あと彼は言動と心の動きのアンバランスさを違和感なく、時に楽しく時に切なく演じていて。感情表現が豊かな方なんだなと思いましたし、本当にエリオとして生きて存在している人という感じがします。素敵な役者さんです。

「君の名前で僕を呼んで」より、アーミー・ハマー演じるオリヴァー。

津田 (ハマーは)やっぱりできあがっている感じがします。肉体的にも存在感があるし、立ち姿や歩いているときの動きなど、すべてが強く美しくて惹かれてしまう。少し不安定になったりするところも過剰に表現することなく、この空気の中を繊細に生きようとしているんだと感じました。

自由くんと2人で演じられたのは本当にぜいたく(津田)

──収録にあたっては、どのようなことを心がけましたか?

津田 自由くんは、エリオのような役はドンピシャじゃないですか。なので本当に楽しみで。とにかく2人で、丁寧にできたらと思いながら挑みました。それに尽きますね。

「君の名前で僕を呼んで」

入野 完成された映像があるので、この作品の雰囲気や流れに乗っていこうと。(台本を読むときは)最初は音を意識しているのですが、現場では津田さんから出てくるものや原音を意識しすぎず、かといって無視することもなくという感じで臨みました。

津田 役作りについては、極力考えるべきではないと思ったよね。自由くんや僕が出す細かいディテールが積み重なって、あふれていくといいなと感じていました。

──収録を振り返っていかがですか。

津田 自由くんと2人、このような形でできたのは本当にぜいたくだと思います! でもドン、バン、ガシャーン!とやるような映画の100倍くらい疲れました(笑)。

入野 心をずっと動かしているので、発散はできませんよね。「一度ミスをしたら終わる」くらいの緊張感を持っていました。集中を切らすことなく、津田さんと一緒に空気を作っているというこのアフレコの現場は、貴重で不思議でなかなか経験することのできない空間でした。

──ありがとうございます。最後に、これから作品を観ようとしている方にメッセージをお願いします。

津田 観る人によって感じ方も解釈も全然違う作品です。いい意味で隙間がたくさんある豊かな映画なので、気負わずに劇場にふらっと入ってきていただき、たくさんのことを感じていただけたらと思います。人や景色、世界、すべてがとっても優しい作品だなと思います。ぜひ観にきてください!

「君の名前で僕を呼んで」

入野 17歳と24歳の青年の忘れられない恋が、すごくフラットに描かれている作品だと思います。もちろん作り手の中には確固としたものがあると思いますが、“好きになってしまった”のか“好きになれた”のか、確かな答えがなくて余白がものすごくいっぱいあるので、そこをぜひ楽しんでいただきたい。情景だったり、遠くから聞こえてくるような音や匂いや空気まで感じられると思うので、ぜひ劇場で観てほしい作品です。

「君の名前で僕を呼んで」
2018年4月27日(金)公開
>「君の名前で僕を呼んで」
ストーリー

1983年夏、北イタリアの避暑地。17歳のエリオは、大学教授である父の助手としてアメリカから来た24歳の大学院生・オリヴァーと出会う。最初は彼の自信に満ちた態度に反発心を抱いていたエリオだったが、次第に惹かれていくように。しかし、夏の終わりとともに別れの時も近付いて……。

スタッフ

監督:ルカ・グァダニーノ

脚色:ジェームズ・アイヴォリー

原作:アンドレ・アシマン「君の名前で僕を呼んで」(オークラ出版刊)

キャスト

ティモシー・シャラメ、アーミー・ハマー、マイケル・スタールバーグ、アミラ・カサール、エステル・ガレル、ヴィクトワール・デュボワほか

日本語吹替:入野自由、津田健次郎、星野充昭、沢海陽子、下山田綾華、櫻庭有紗、伊沢磨紀

入野自由(イリノミユ)
2月19日生まれ、東京都出身。「千と千尋の神隠し」のハク役や「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」のじんたんこと宿海仁太役で知られる。主な出演作は「映画『聲の形』」「ハイキュー!!」シリーズ、「おそ松さん」シリーズなど。2018年7月スタートのアニメ「深夜!天才バカボン」でバカボン役を務める。
津田健次郎(ツダケンジロウ)
6月11日生まれ、大阪府出身。主な出演作は「遊☆戯☆王デュエルモンスターズ」シリーズ、「ACCA13区監察課」など。洋画の吹替では「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」「ブラックパンサー」ほかに参加した。放送中のアニメ「ルパン三世 PART5」ではアルベール役を演じている。

2018年4月26日更新