小林勇貴と西村喜廣が語るNetflixオリジナル映画「ブライト」| 日本映画界の“逆徒”コンビは映像配信サービスの巨人が放つ超大作をどう観たか

メイクは相当作り込まれている(西村)

西村 ちなみにこれ、どれぐらいお金をかけて作ってるんですか?

──約100億円(9000万ドル)ですね。

西村 ……ほあっ(笑)。

小林 (笑)。すげえ……。

──現時点でNetflixオリジナル映画としては最大規模の予算だそうです。

「ブライト」

西村 ですよね。メイクとか、それ相当のものだったもんなあ。

小林 あのメイクってちゃんと全員にやってるんですかね?

西村 ほぼ全員にやってると思う。だってCGを使うほうが余計に面倒くさいじゃん。で、個々のキャラクターをちゃんと作ってるでしょ。牙の長さとか生え方みたいなのも細かく変えてる。何人いるんだろうと思って数えてたんだけど、30人ぐらいはちゃんとメイクをしていた。後ろのほうに映ってる人たちだけはマスクを被ってたのかな。あと、模様で個体の見分けをつけられるようにしているところがうまいなと思いましたね。クリーチャーって見た目が全部同じになっちゃいがちなんですよ。「ブライト」ではそのあたりの差別化がちゃんとできてる。でもこのメイクは大変ですよ。確実に1人あたり2、3時間はかかってるから。エルフにしてもかなり手間はかかってるはず。

小林 そうなんですね。エルフは耳だけでいいんじゃないんですか?

西村喜廣

西村 耳だけじゃなくて髪の毛とかも全部やってるから。演じてる役者さんが誰かわかんないぐらいだよね。エルフの殺し屋みたいな子が出てくるじゃないですか。

──ノオミ・ラパスが演じているレイラですね。

西村 あの人のメイクも相当作り込んでますね。でも大変なのは、やっぱりオークかな。シリコンメイクは使い捨てるもんなんだけど、何枚作ったんだろう。

小林 エルフといえば、俺、あいつらに腹が立つんですよね。偉そうで。差別の描写よりも、あいつらが上に君臨してることがムカつく。

邪悪なやつは基本的に応援したい(小林)

──エドガー・ラミレスが演じるカンドミアのような警察のリーダーにしても、邪悪なレイラたちにしても、エルフには同様に腹が立ちますか?

小林勇貴

小林 いえ、邪悪なやつは基本的に応援したいんです。“滅ぼそうとする系”はどんなやつでも応援したい。

──(笑)

小林 ただ、序盤にセレブみたいなエルフが出てくるじゃないですか。ああいうのにすごく腹が立つんですよ。「こいつらをぶっ殺せ!」って思いました(笑)。

西村 そういえばこないだ環七の交差点でさ、威張ってる警官いたじゃん。

小林 いましたいました! 警官が、自転車で脇道を逆走してたおばちゃんに「あんたのそういうとこだよ! あんたみたいな人がいるからめちゃくちゃになるんだっ!」って上から目線で喚いてて。程度の低い人間に力を与えるとめちゃくちゃになるという見本みたいなのが偉そうに道に立ってることに、すごいムカつきましたね。

──エルフであれ人間であれ、威張るやつは頭に来ると。

小林 はい(笑)。

──お二人が観ていて、印象に残ったシーンがあれば教えていただきたいです。

小林 カーチェイスで車がぶつかるときに、画質を変えてましたよね。

西村 変えてたね。車内の映像がざらっとしていて、わざとやってるのかなと思った。それから、ガソリンスタンドで主人公たちが襲撃されるシーンがよかったな。

小林 最終決戦は「スーサイド・スクワッド」に似てましたね。

西村 あと、あれがすごくよかった。ずーっと燃えてる骸骨(笑)。

小林 ずーっと燃えてる骸骨、カッコよかった!(笑) あれのストラップが欲しいです。夜になると光るやつ。

──骸骨は、ウォードとジャコビーが通報を受けて現場に急行したときに見つける死体ですね。

左から小林勇貴、西村喜廣。

小林 そのシーンでいうと、ガラス細工みたいにされちゃった上半身だけのエルフを見つけて、ウォードが「魔法を使う者(ブライト)が現れた」って通報するところがよかったです。魔法使いに遭遇してしまって心から怖い!っていうことが伝わる。「あ、魔法使いだー♪」って感じじゃない。

西村 とんがり帽子をかぶってるような魔法使いじゃないからね(笑)。

小林 どうもこの映画の中に出てくる魔法使いは、そういうかわいいやつではなさそうだという。

西村 「勇貴くん七三分けになーれ♪」って言うような。

「ブライト」

小林 「なっちゃった、直してよー」みたいな、そういう魔法使いではない(笑)。

西村 ファンタジーなんだけど、リアルに感じられる怖さがあるよね。

小林 そうですね、リアルの中にファンタジーをぶっこんだよさが出てました。

Netflixオリジナル映画「ブライト」
配信中
ストーリー

人間やオーク、エルフなどさまざまな種族が共存する、もう1つの世界のロサンゼルス。人間の警官ダリル・ウォードは、最下層の種族であるオークから初めて警官になったニック・ジャコビーと嫌々コンビを組んでいる。ある日ウォードとジャコビーは、むごたらしい死体の残る異様な犯罪現場に遭遇。恐怖に震えるエルフの少女ティッカと、魔法の杖(ワンド)を見つける。どんな願いも叶える力を持ち、使い方によっては世界を滅ぼしかねないワンドは、選ばれし者“ブライト”だけが使えるとされるアイテム。悪用されることを恐れたウォードとジャコビーはワンドを持ってティッカとともに逃走するが、人間のストリートギャング、警察に恨みを持つオークたち、そしてエルフの邪悪な異端集団インファーニが3人に襲いかかる。

スタッフ

監督:デヴィッド・エアー
脚本:マックス・ランディス

キャスト

ダリル・ウォード:ウィル・スミス
ニック・ジャコビー:ジョエル・エドガートン
レイラ:ノオミ・ラパス
ティッカ:ルーシー・フライ
カンドミア:エドガー・ラミレス

Netflix

Netflixは、190カ国以上で1億900万人超のメンバーが利用する、エンタテインメントに特化した世界最大級のオンラインストリーミングサービス。アワード受賞作を含むオリジナルコンテンツ、ドキュメンタリー、長編映画など、1日あたり1億4000万時間を超える映画やドラマを配信している。メンバーはあらゆるインターネット接続デバイスで、好きなときに、好きな場所から、好きなだけエンタテインメントを楽しむことが可能。広告や契約期間の拘束は一切ないうえ、Netflix独自のレコメンデーション機能が1人ひとりのメンバーの好みに合わせて作品をオススメするため、お気に入りの作品が簡単に見つかる。

小林勇貴(コバヤシユウキ)
1990年9月30日生まれ、静岡県富士宮市出身。デザイン会社で働きながら自主映画「TOGA」「絶対安全カッターナイフ」を制作し、動画サイトに投稿する。第3作「Super Tandem」がPFFアワード2014に入選。「NIGHT SAFARI」でカナザワ映画祭2014のグランプリを受賞し、「孤高の遠吠」でゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016オフシアター・コンペティション部門のグランプリを獲得する。本物の不良をキャスティングした暴力的かつユニークな作風で注目を集め、2017年3月には「逆徒」を発表。同年11月、間宮祥太朗が主演を務め、西村喜廣がプロデューサーとして参加した「全員死刑」で商業映画デビューを果たす。12月には西村と再びコンビを組み「ケータイで撮る」映画シリーズ第1弾「へドローバ」を発表した。
西村喜廣(ニシムラヨシヒロ)
1967年4月1日生まれ、東京都台東区出身。学生時代から自主映画を制作し、「限界人口係数」でゆうばり国際冒険・ファンタスティック映画祭'95のオフシアター・コンペティション部門審査員特別賞を受賞する。その後多くの映像作品で特殊メイクや特殊造型を担当しながら、「東京残酷警察」「ヘルドライバー」などを監督。2012年にはナチョ・ビガロンド、井口昇、アダム・ウィンガードらとともにホラーアンソロジー「ABC・オブ・デス」に参加した。近年は実写映画「進撃の巨人」や「シン・ゴジラ」で特殊造形プロデューサーを務めつつ、「虎影」「蠱毒 ミートボールマシン」を監督。2017年には小林勇貴の「全員死刑」「ヘドローバ」をプロデュースした。特殊メイクや特殊造型を手がける西村映造の代表取締役。