小林勇貴と西村喜廣が語るNetflixオリジナル映画「ブライト」| 日本映画界の“逆徒”コンビは映像配信サービスの巨人が放つ超大作をどう観たか

続編を監督するならオークを掘り下げたい(小林)

西村 観ていて思ったんだけど、この作品は今後シリーズ展開していくんじゃないかな。説明をしていない部分が多いですよね。

──続編の製作はすでに決まっていて、メインキャストのウィル・スミスとジョエル・エドガートン、監督のデヴィッド・エアーが続投するようです。

西村喜廣

西村 今回はあえて説明を省いてるんだろうなと思ったんですよ。例えばウォードのほうがどんな生活をしているのかは見せるんだけど、ジャコビーのほうはわからない。結婚しているのか、子供がいるのか。バディものって、お互いの生活を見て仲良くなっていくという筋書きが多いので、続編ではそこらへんが描写されるんじゃないかな。

──もしお二人が続編の監督を任されるなら、どんなストーリーにしたいですか?

小林 俺はオーク独自の文化をでっち上げたいですね。今回は黒人のファッションとかをそのままオークに移してるけど、新しい文化を作るべき。

西村 それから、今回はオークの全身が見えないじゃん。みんな服を着てるから。生殖機能がどうなってるのかとか、尻尾はあるのかなとか、続編を作るならそういうところを考えるかな……。まあこの作品でそういうことを描く必要はないのかもしれないけど。

──お二人とも、オークを掘り下げたいんですね。

小林 そうですね。何を食べてるのかとかも気になります。食べ物って差別の根源にあると思うんですよ。この生き物を食うのは駄目だとか、犬を食うか否かみたいな。

悪の願いが叶う瞬間を待ち望んでる(小林)

──エルフについては続編でどう描きたいですか?

小林 エルフは殺す! 絶対殺す!

──(笑)

西村 でも確実にエルフは敵だよね。

小林勇貴

小林 敵っすよ、あんなの。いいやつなわけがない(笑)。あと俺は、映画で悪の願いが叶う瞬間を待ち望んでるんですよ。高橋洋監督が脚本を書いた話は、簡単に悪の望みが叶ったりして感激するんですけど(笑)。俺が「ブライト」の続編を撮るなら、物語の中盤ぐらいで簡単に闇の王のダーク・ロードを復活させちゃうかな。ただ、ダーク・ロードの政治観が今回はわからなかったですね。そんなにいけなかったのかな。「ひさしぶりー。実はこんなふうに世界を支配しようと思ってたんだ」みたいな感じで、「案外悪くないじゃないか」とみんな思うかもしれない。“ダーク差別”はよくないですよ。

──ダーク差別(笑)。「ブライト」は批評家には高く評価されていないようですが、一般の鑑賞者からは支持を受けています。また、「スター・ウォーズ」シリーズのフィン役で知られるジョン・ボイエガはTwitterで本作を絶賛していました。お二人は批評家と観客、どちらの評価を気にされますか?

西村 うーん……俺、映画の批評家はあんまり信用してないからなあ。

小林 もう作ってしまったものに対する批評家の意見は別に気にしないですけど、これから作ろうとしているものに関しては、過去作でどんなことを言われたか思い起こして参考にすることはありますよ。

西村 でも批評家が前に言ってたことに納得できなくても、自分の映画を褒められると手のひら返しちゃうよね。

小林 はい、「なんて素晴らしい人なんだ!」って思う(笑)。宇多丸さんとか。

左から小林勇貴、西村喜廣。

西村 あなたはそういう人間ですよ(笑)。さっき「エルフは殺す」って言ってたけど、エルフから「100億円あげるから映画作ってみない?」って提案されたらどうする?

小林 最高のエルフですね! 大賢者ですよ! そういうことなら確実にダーク・ロードを滅ぼすプロパガンダ映画を作りますから(笑)。

──こちらの勝手なイメージで申し訳ないですが、お二人は批評家の言うことはまったく気にしない姿勢なのかと思っていました。でも今のお話を聞いていると、そういうわけでもないんですね。よく言われても悪く言われても次の作品への糧にするというか。

西村 それはそうです。でも、一番気になるのはやっぱりお客さんの反応。

小林 はい、それはもう確実に。

西村 批評家とお客さんの話に戻ると、「ブライト」はああいう世界観になじみ深い人たちからすごく支持されてるんじゃないかな。それこそ「ファイナルファンタジー」とか「ロード・オブ・ザ・リング」のファンは世界中にいるから、そういう人たちが「ブライト」にも食い付いたんだと思いますよ。

Netflixオリジナル映画「ブライト」
配信中
ストーリー

人間やオーク、エルフなどさまざまな種族が共存する、もう1つの世界のロサンゼルス。人間の警官ダリル・ウォードは、最下層の種族であるオークから初めて警官になったニック・ジャコビーと嫌々コンビを組んでいる。ある日ウォードとジャコビーは、むごたらしい死体の残る異様な犯罪現場に遭遇。恐怖に震えるエルフの少女ティッカと、魔法の杖(ワンド)を見つける。どんな願いも叶える力を持ち、使い方によっては世界を滅ぼしかねないワンドは、選ばれし者“ブライト”だけが使えるとされるアイテム。悪用されることを恐れたウォードとジャコビーはワンドを持ってティッカとともに逃走するが、人間のストリートギャング、警察に恨みを持つオークたち、そしてエルフの邪悪な異端集団インファーニが3人に襲いかかる。

スタッフ

監督:デヴィッド・エアー
脚本:マックス・ランディス

キャスト

ダリル・ウォード:ウィル・スミス
ニック・ジャコビー:ジョエル・エドガートン
レイラ:ノオミ・ラパス
ティッカ:ルーシー・フライ
カンドミア:エドガー・ラミレス

Netflix

Netflixは、190カ国以上で1億900万人超のメンバーが利用する、エンタテインメントに特化した世界最大級のオンラインストリーミングサービス。アワード受賞作を含むオリジナルコンテンツ、ドキュメンタリー、長編映画など、1日あたり1億4000万時間を超える映画やドラマを配信している。メンバーはあらゆるインターネット接続デバイスで、好きなときに、好きな場所から、好きなだけエンタテインメントを楽しむことが可能。広告や契約期間の拘束は一切ないうえ、Netflix独自のレコメンデーション機能が1人ひとりのメンバーの好みに合わせて作品をオススメするため、お気に入りの作品が簡単に見つかる。

小林勇貴(コバヤシユウキ)
1990年9月30日生まれ、静岡県富士宮市出身。デザイン会社で働きながら自主映画「TOGA」「絶対安全カッターナイフ」を制作し、動画サイトに投稿する。第3作「Super Tandem」がPFFアワード2014に入選。「NIGHT SAFARI」でカナザワ映画祭2014のグランプリを受賞し、「孤高の遠吠」でゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016オフシアター・コンペティション部門のグランプリを獲得する。本物の不良をキャスティングした暴力的かつユニークな作風で注目を集め、2017年3月には「逆徒」を発表。同年11月、間宮祥太朗が主演を務め、西村喜廣がプロデューサーとして参加した「全員死刑」で商業映画デビューを果たす。12月には西村と再びコンビを組み「ケータイで撮る」映画シリーズ第1弾「へドローバ」を発表した。
西村喜廣(ニシムラヨシヒロ)
1967年4月1日生まれ、東京都台東区出身。学生時代から自主映画を制作し、「限界人口係数」でゆうばり国際冒険・ファンタスティック映画祭'95のオフシアター・コンペティション部門審査員特別賞を受賞する。その後多くの映像作品で特殊メイクや特殊造型を担当しながら、「東京残酷警察」「ヘルドライバー」などを監督。2012年にはナチョ・ビガロンド、井口昇、アダム・ウィンガードらとともにホラーアンソロジー「ABC・オブ・デス」に参加した。近年は実写映画「進撃の巨人」や「シン・ゴジラ」で特殊造形プロデューサーを務めつつ、「虎影」「蠱毒 ミートボールマシン」を監督。2017年には小林勇貴の「全員死刑」「ヘドローバ」をプロデュースした。特殊メイクや特殊造型を手がける西村映造の代表取締役。