大沢たかおインタビュー | 映像世界への“信頼”を裏切ってはいけない──「au三太郎CM」「JIN-仁-」「キングダム」「沈黙の艦隊 北極海大海戦」からキャリアを紐解く (2/2)

「沈黙の艦隊」新作で挑んだ新たな難題

──そして現在、主演・プロデュース作「沈黙の艦隊 北極海大海戦」が全国公開中です。撮影を振り返っていかがでしょうか?

おかげさまで前作を評価していただき、ポジティブな気持ちで続編製作に入ることができました。ただサプライズな演出は前作で出し切ってしまった感があったので、お客様を驚かせたり、興奮させるポイントを新たに作らなければいけなかった。台本を作る時点から前作よりも熱量が増えているのは感じていましたし、現場にいる全員が緊迫していたように思います。中でも上戸彩さんは、前作を経て「もっとうまく演じられたかもしれない」と悔しそうな面を見せていたんです。今作の撮影で彼女の表情を見たとき、すぐに「気持ちの入り方が全然違う」と気付きました。みんな前作を踏まえて考えたこと、反省したことを深掘りして現場に入ってきてくれたんです。

「沈黙の艦隊 北極海大海戦」ビジュアル。北極海を舞台に、日本からの独立国「やまと」を宣言した艦長・海江田四郎が新たな戦いを繰り広げる ©2025 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved. ©かわぐちかいじ/講談社

「沈黙の艦隊 北極海大海戦」ビジュアル。北極海を舞台に、日本からの独立国「やまと」を宣言した艦長・海江田四郎が新たな戦いを繰り広げる ©2025 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved. ©かわぐちかいじ/講談社

──氷の下でのバトルなど、よりスケールアップした物語が展開されますよね。潜水艦内の緊迫感を表現するために意識したことはありますか?

前作では乗組員1人ひとりの存在のみをクールに描いたんですが、今回は少し人間らしい部分を見せていこうと思って、名前を呼ぶようなセリフを増やしたり、各々の動揺や不安が一瞬チラッと見えるように意識したんです。キャストは役の個性を前作よりもあらわにしていくという、繊細なミッションに挑んでくれました。基本的に、潜水艦内では気持ちをあまり表情に出さないという決まりがありましたから、ほんのわずかな佇まいの中で伝えていくことになる。それは僕自身も含めて難題だったと思います。

──特に海江田はミステリアスな人物ですから、再び役のスイッチを入れるのは大変だったのではないでしょうか。

本当に難しかったです。まったく同じ人物による(前作の)数時間後から始まる物語ですけど、キャラクターとしては次のステージに上がっていなければならない。前作以上に、観ていただく人の心に刺さる何かを役に持ち込んでいないといけないんです。1作目の撮影時では素直に、感覚的に演じることができたのですが、続編ではやはり考えるべきことが増えるのだなと。「キングダム」も含めてシリーズものの難しさを痛感しましたね。

大沢たかお

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──とはいえ、観客には何も考えず映画を率直に楽しんでほしいですよね。

そうですね。どんなに自分たちが一生懸命にいいものを作ったと言っても、お客様が楽しんでくれなければ我々はプロとして失格。その結果を僕らは受け入れなければいけないから、緊張感もあります。お客様にはとにかくワクワクしていただきたいし、上映時間の2時間強は僕らが徹底的に作った異世界に身を投じてほしいですね。北極の水中で一緒に戦う体感を得られるし、選挙戦のシーンには図らずも現実とリンクした“ハッとする”要素がある。いろいろなエンタテインメントが濃縮されているので、ただただ体感してもらいたいです。

“大沢たかお”として悔いのないようにベストを尽くしたい

──近年では、大沢さんのようにプロデューサーを兼任される俳優も増えたように思います。改めて映画・ドラマやCMなど映像が持つ影響力をどう捉えていますか?

赤ちゃんがお母さんの顔を見て表情を学んだり愛を知るように、目で得られる情報は強烈。人間にとって大事なものだと思います。だからこそ映像には芸術を超えたものがあると僕は思うし、いい意味でも悪い意味でも人生に影響を与えてしまいますよね。日頃から「たかが映画、されど映画」という意識を持って現場に行くようにしています。

大沢たかお

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──そう思うようになったきっかけはあるのでしょうか?

幼少期に銀座や上野の映画館に通い、たくさんの映画を観て学んだんですよね。そして今は仕事として、自分が子供の頃に影響を受けた体験をきっと誰かに与えているはず。皆さんが寄せてくださる映像世界への“信頼”を決して裏切ってはいけないなと、毎日心にとめているんです。

──ルーツは幼少期にあったのですね。なおauバリューリンクプランには「あなたの毎日に、もっとつながる、もっといいこと。」というコピーがあるんですが、大沢さんが毎日を快適に過ごすにあたって欠かさないルーティンはありますか?

ルーティンというわけではないんですが……「今をしっかり生きられたかな」と夜に考える時間はとても大切にしていますね。未来のことなんて誰もわからないから、とにかく悔いのないようにベストな1日を過ごしたいなと思っています。ささいなことですが、例えば笑顔で挨拶できたり、会話が盛り上がったりすると夜にホッとするんですよ。“大沢たかお”として自分なりに精一杯生きられたのかなって。

「au バリューリンクプラン」の告知ビジュアル

「au バリューリンクプラン」の告知ビジュアル

──素敵ですね。そのマインドは昔からずっとお持ちだったのでしょうか。

年齢を重ねたからですかね(笑)。20~30代のときは「とにかくやったれ!」な精神で、自らを顧みず進んでいきました。でも思い返すと、ここまでがんばれてきたのは周りのおかげですし、関わった作品を観ても「自分の力ってほんのわずかだな」と思うことが多くなりました。キャリアを積み上げることによって、人としての佇まいをより強く意識しようという自覚が生まれたのかなと。もちろん自分の意識は日々変わっていくから今後はどうなるかわからないけれど、今はその考え方がすごく心地いいし、毎日いろいろなことにトライできる原動力になっています。

大沢たかお

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プロフィール

大沢たかお(オオサワタカオ)

3月11日生まれ、東京都出身。MEN'S NON-NOなどのファッション誌でモデルとして活躍したのち、1994年にドラマ「君といた夏」で俳優デビュー。その後「若者のすべて」「星の金貨」などのドラマに参加し、2004年には主演映画「世界の中心で、愛をさけぶ」が大ヒット。「解夏」では日本アカデミー賞優秀主演男優賞、「地下鉄(メトロ)に乗って」では優秀助演男優賞に輝いた。ドラマ「JIN-仁-」では東京ドラマアウォードの主演男優賞や橋田賞を獲得。そのほか代表的な作品に「陽気なギャングが地球を回す」「ミッドナイト・イーグル」「ラブファイト」「ハルフウェイ」「藁の楯 わらのたて」「AI崩壊」など。「キングダム」シリーズでは王騎役で注目を集めた。2023年には主演・プロデュース作「沈黙の艦隊」が封切られ、現在は続編となる「沈黙の艦隊 北極海大海戦」が公開中。

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