大沢たかおが出演したau三太郎シリーズ最新CM「無敵の父、登場」篇が全国で放送中。auの新料金プラン「auバリューリンクプラン」を訴求する本CMでは、大沢演じる“天から舞い降りた”天帝が、三太郎、かぐや姫と会話劇を繰り広げるさまが描かれた。
さらに映像配信サービス・TELASA(テラサ)では、大沢の出演したドラマ「JIN-仁-」2シーズンおよび映画「キングダム」シリーズ3作品(「キングダム」「キングダム2 遥かなる大地へ」「キングダム 運命の炎」)が見放題配信されている。
映画ナタリーでは大沢にインタビューを実施。約10年にわたって愛されているCMシリーズの現場の雰囲気や、天帝を演じた感想を語ってもらった。加えて、今でも誇りに思っているという「JIN-仁-」、山﨑賢人らと情熱を燃やした「キングダム」、現在公開中の「沈黙の艦隊 北極海大海戦」についても。大沢が映像作品の力を実感したルーツや、「悔いのないようにベストな1日を過ごしたい」という日々のマインドにもスポットを当てた。
取材・文 / 大畑渡瑠撮影 / 間庭裕基
auバリューリンクプラン「無敵の父、登場」篇 公開中
「au 三太郎」CMの“天帝”は自由に演じられたキャラ
──2015年から愛されている「au 三太郎」CMですが、もともと同シリーズにどんなイメージを抱いていましたか?
インパクトがあって、強烈に記憶に残っているシリーズでした。自分の知っている後輩たちがのびのび演じてるのをずっと見ていましたし、物語の世界観がここまで受け継がれていることにも驚きましたね。シリーズが進むごとに登場キャラクターたちの人間模様もあらわになっていく。ここまで緻密に作られているシリーズはなかなかないのではと思っています。特に「ビーチフラッグ」篇での海辺を走るシーンは過酷そうに見えて、桐谷(健太)くんたちに「あの衣装を着た状態だと大変だったんじゃない?」と聞いたりもしました。
──なるほど。そして今回、撮影現場に入ってみて雰囲気はいかがでしたか?
やはりみんな長期間のシリーズをともにしているからか、自然体で撮影が進んでいくのが印象的でした。10年間同じ役を演じることって映画やドラマでもあまりないけど、共演したみんなはずっと続けているんですよね。僕はそんな彼らの関係性の中に“異物”のような感じで登場する。だから「なるべく空気を壊しちゃいけないのでは?」とも思い、参加することには緊張や責任も感じました。自分が入ることで、よりほかのみんなが素敵に見えるようにしなくてはとも思いましたし。
──プレッシャーも感じられていたんですね。演じたのは天から舞い降りた“天帝”というキャラクターでしたが、最初に役の設定を聞いたときはどう思いましたか?
人間離れした……いや、人間ではなく神様か(笑)。かなり自由に演じられるキャラだなと思いました。でもそれって逆に難しいんですよね。現場に入って衣装を着て、初めて「こういう見た目なんだ」「迫力のある人物なんだ」とイメージできた部分があって、自然と別世界に入ることができた気がします。現場の空気にも助けられましたね。ストーリーが面白いので、撮影では気持ちが乗って楽しく演じていました。
──「無敵です」というセリフには“ラスボス感”があり、桃太郎たちの「レベチ、来たー!」という反応がまさに当てはまっていました。監督からの演出はあったのでしょうか。
監督は「お任せします」という方針で、キャラクター同士の距離感や人間関係をナチュラルに撮ろうとされている姿勢がやりやすかったですね。現場では芝居がどんどん進んでいき、テンポよく撮影が行われました。スタッフ・キャスト同士の信頼関係ができあがっているのだなと。カメラマンもあうんの呼吸でどんどん動いていく。そういう“ファミリー感”のある空間に自分が参加できるということが、とてもうれしかったですね。
「JIN-仁-」には人間の魂が震えるものが込められている
──TELASAではご自身の出演作が配信中です。ちなみに大沢さんは配信プラットフォームで映画やドラマを観ることはありますか?
けっこう観ますよ。
──空き時間などにご覧になるのでしょうか?
撮影中は役に入り込んでいることが多いから、別の作品を観ると演じる役に影響が出てしまうこともある。だから観たいと思った作品をまとめておいて、1つの現場が終わったあとにイッキ見するスタイルですね。この仕事をしていると「あれ観ましたか? 面白いですよ」なんてお薦めしていただくことも多くて、そういう作品はだいたいチェックするようにしています。そして自分なりに感じたことを次の現場に生かしたいなと。どうしても仕事につながってしまいますね(笑)。
──好きなジャンルは?
子供の頃からずっとかもしれないけど……サイエンスフィクション(SF)やミステリーがすごく好きなんです。お気に入りの作品を挙げるとキリがないんですが。SFやミステリーは現実とは少し違う世界を描いているけれど、リアルで真に迫ってくる。日常で本当に経験したくはないですが(笑)、映像だと体験したくなりますね。1人の映画・ドラマ好きとして楽しませてもらっています。
──TELASAでは主演ドラマ「JIN-仁-」2シーズンが配信されています。同作で現場をともにした桐谷健太さんとは、今回au 三太郎CMで約14年ぶりに再共演されました。印象は変わりましたか?
全然変わらないですよ(笑)。いつも周りに気を配る優しい青年で、そんな“桐谷くん”のままでいてくれました。「JIN-仁-」の撮影時には「責任感の強い男だな」と感じていましたが、話していて、より強靭になられた印象です。
──「JIN-仁-」は2009年・2011年に放送されましたが、今の時代にも語り継がれる名作になりました。
いつも僕は作品を作るときに、なるべく時を経ても楽しめる作品にしたいなと思っています。その思いは映画でも、テレビドラマでも変わらない。そういう意味では「JIN-仁-」に出会えたことは自分にとって本当に素晴らしい経験だったと思うし、今でも誇りに思っているんです。時代劇ですが描かれる物語は普遍的で、僕らの世代にも、10代の方たちにも届く作品になっている。あらゆる世代が登場するから、人によって見方や感じ方も異なり、多面的な楽しみ方ができるんです。
──当時の撮影現場はどんな雰囲気でしたか?
今振り返っても、スタッフ・キャストの熱量が半端なかったなと思いますね。今また同じことができるかと言われたら難しいほどで、とにかく力を合わせて限界の限界まで追い求めていたチームでした。どんなに睡眠時間が短かろうが、ロケーション1つとっても徹底的にいいものを追求する。あそこまで貪欲になれる作品に参加できることなど、もうないのではと感じてしまうくらいでした。それほど撮影期間の半年ほどは、自分の俳優人生においても忘れられない“強い時間”になった。そのエネルギーは作品内にずっと保存されていますから、これから新しく観ていただく方も、もう1回観ていただく方も、我々の思いを受け止めてくれたらうれしいですね。
──ドラマでは、時代を超えた人間同士のコミュニケーションが丁寧に描かれていましたね。また、大沢さんが演じた南方先生が命を救うため、感情をあらわにするシーンも心に残りました。
当時の僕のキャリアの中でも、あれほどの魂のぶつかり合いはなかったですよ。カメラが回っていないときも、みんな役のまま生きているようで、キャラクターの関係性のまま接することができました。SNSなどが発達した現在では人と人の直接的な関わりがドライになっているし、対面でも「あんまり感情を出しすぎちゃいけない」という空気を感じる。だからこそ、あの作品には人間の魂が震えるようなものが込められているように思うんですよね。
「キングダム」では山﨑賢人の励みになるため奮闘
──TELASAでは映画「キングダム」シリーズ(「キングダム」「キングダム2 遥かなる大地へ」「キングダム 運命の炎」)も観ることができます。大沢さんは同シリーズで王騎将軍を演じましたが、ご自身のキャリアにとって本シリーズはどのような位置付けになりましたか?
オファーをいただき、ウェイトトレーニングでの増量を始めてから7年くらいの付き合いになりましたね。僕の個人的な感想ですが、プロジェクトが始まった当時はあまりアニメとかマンガの実写化作品がうまくいってないように感じることが多くて、ネットを見ると「もう実写化やめろよ」のような批判コメントが多かった。出演する側の僕自身も「マンガの世界を壊してしまうんじゃないか」と懸念することがありました。その中でいただいたのが「キングダム」の話だったんです。
──ハードルが上がった中での挑戦だったのですね。
マンガやアニメのファンからすれば「うまくいくはずないじゃん」というのが大方の意見だったと思うし、「キングダム」自体も難易度の高い作品でしたから、厳しい挑戦だったと思います。でも監督やプロデューサー、山﨑賢人くんはじめキャストたちの情熱がとにかくすごかった。懸念していたことを吹き飛ばすくらい、「この作品で成功するんだ」という思いの塊がある現場だったんです。
──その情熱を長年にわたって維持するのは大変だったかと思います。
撮影現場のスタッフ・キャストと計5年くらいずっと一緒にいたわけなんですが、特にコロナ禍ではみんな苦戦しましたね。撮影計画が全部変わってしまったり、撮影以外はマスク着用が必須で、必要以上にしゃべれない。チームにとって叫んだり走ったりすることが制限される現場は、想像以上に過酷なものでした。それでも前を向き続けることで、座長として悩みや不安を抱える山﨑くんの励みになればいいなと思ったんです。僕が近くに必ずいるんだと思ってもらえれば、と。
──山﨑さんら若手キャストに、先輩俳優として“継承”したいという思いはあったのでしょうか?
そういう意識は特になかったですね。言葉でメッセージを伝えようとしなくても背中を見せることで彼らは学んでくれたし、特に山﨑くんは一生懸命僕のことを見ていたと思う。もちろん質問されたらアドバイスをするけど、それよりも一緒に感じて、考えることのほうが多かったと思います。彼は20代前半にこの厳しいプロジェクトに参加して、もう30歳を超えた。(山﨑が演じた主人公の)信と同じようにどんどん成長して行くし、僕が継承するだけではなく、彼自身がいろいろな景色を見て、吸収することで役をつかんでいったのではないかと思います。
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「沈黙の艦隊」新作で挑んだ新たな難題