山崎貴が監督、菅田将暉が主演を務める「アルキメデスの大戦」が、7月26日より全国で公開される。
「ドラゴン桜」「インベスターZ」などで知られる三田紀房の同名マンガを実写映画化した本作は、1930年代の日本が舞台の物語。大日本帝国海軍の司令部による世界最大級の戦艦・大和の建造計画に反対を唱える海軍少将・山本五十六が、天才数学者の櫂直(かいただし)を引き入れ、軍部の陰謀を暴こうとするさまが描かれる。
映画ナタリーでは、山崎と三田の対談をセッティングした。完成した作品を観て「満たされた」と語った三田。彼がそう感じた理由とは? またベテラン俳優ぞろいの現場で迫真の演技を見せた、菅田の魅力についても語ってもらった。
取材・文 / 秋葉萌実 撮影 / 曽我美芽
すごく満たされた2時間10分(三田)
──まずは、三田先生が映画をご覧になっての率直な感想から聞かせていただけますか。
三田紀房 あっという間に時間が過ぎていって、えっもう終わり?と思いました。映画ってあるシーンに疑問を抱くと、ついその場面のことを考えてしまって没入感が薄れますよね。それが一切ない。映画を観ることに自分のエネルギーを使った気持ちよさもあって、すごく満たされた2時間10分でした。
山崎貴 ありがとうございます。よく一緒に仕事をしているプロデューサーが「映画にはできないと思いますけど、すっごく面白かった」と薦めてくれたのが、原作マンガとの出会いです。そのとき僕の中では「いやいや、やってやろうじゃないか!」と挑戦を受けた気持ちがあって。それで読んでみたらすごく面白かったし、新しい切り口で戦艦大和が描かれていてワクワクしたのを覚えています。
三田 (笑)。「アルキメデスの大戦」は言うなれば考えが異なる2組のケンカなので、もともとはTBSの日曜21時の枠でドラマを作ってもらえたら、けっこう面白くて評判になる作品ができるのではと思っていたんです。
山崎 そこまで考えていらっしゃったんですか!
──「ドラゴン桜」「インベスターZ」など、三田先生のマンガはこれまでも実写化されてきました。執筆の段階で、映像化されることは想定しているのでしょうか?
三田 どの作品も、ある程度は映像化を視野に入れながらきっちりと準備をして作っています。ただチョイスするのは映像の世界の方々なので、我々は選ばれてもいいようにベストを尽くすだけですね。
おじさま俳優たちは菅田くんにメロメロ(山崎)
──三田先生は以前、インタビューで「櫂直のようにまっすぐな主人公を描くのは、自分にとって新たな挑戦」とおっしゃっていました。映画で菅田将暉さんが演じた櫂についてはどう感じましたか?
三田 愚直なところがどこか少年っぽくて清々しかったです。上司を捕まえて暴言まがいの言葉を吐くなんて今の社会では考えられないし、櫂はノスタルジックな感じの人物ではありますが、彼の姿からはある種の忘れかけていた郷愁が呼び覚まされる。菅田さんは「櫂のように生きられたらいいな」と誰もが感じるような演技をしてくれたので、ありがたかったです。
山崎 菅田くんは櫂を演じていると頭が熱を持ちすぎちゃうみたいで、ヘッドスパに通ってました(笑)。彼は追い詰めたほうが面白いタイプの役者なんですよね。
三田 そうなんですか?
山崎 黒板に数式を書くシーンは、カットを割ることもできたけどあえて長回しにして、数式や長ゼリフを一切間違えず一気に演じてもらいました。彼はそれを3つのシーンでこなしたのですが、毎回現場の空気がすごかったですね。カットがかかると拍手喝采。「あいつ本当にすげえな!」とおじさま俳優たちは菅田くんにメロメロで。
──そうなんですね。菅田さんが参加している作品の現場は、いつも監督が楽しそうに演出している印象があります。山崎さんにはそういう気持ちはありましたか?
山崎 彼みたいな打てば響くタイプの俳優は、演出していて面白いですよね。少しの言葉で多くを理解してくれて、想定したところ以上に行ってしまう感じが性能のいい車みたい。どう考えても映画がよくなるなと感じる瞬間が訪れるんです。無茶なことをお願いしてもがんばってくれるし、お芝居に向き合う姿勢が真摯なところが、いろんな監督が一緒に仕事をしたくなる理由なんじゃないかなと思います。
──では、現場ではついレベルの高いことを要求してみたくなったりも?
山崎 僕は追い詰めたと思いますね。軽く「じゃあ数式を最後まで全部書けるようにしておいてください!」「図面もちゃんと描けるようにしてください」と言ってみたり。
三田 (笑)。
山崎 それでも菅田くんは「わかりました」と言って先生に付いてしっかり練習してくれる。撮影で最後まで数式を書き終わったときに、彼に数学を教えていた先生が泣いたんです。やり遂げた!って。相当大変だっただろうなと思うけど、ちゃんと引き受けてやってくれるのはありがたいですね。
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そうそう、こういうこと!(三田)
- 「アルキメデスの大戦」
- 2019年7月26日(金)全国公開
- ストーリー
-
1933年、欧米列強との対立を深めて軍拡路線を歩み始めた日本。海軍省は、世界最大の戦艦を建造する計画を秘密裏に進めていた。だが、この計画に反対していた海軍少将・山本五十六は、巨大戦艦の建造がいかに国家予算の無駄遣いであるか、その見積もりを算出して明白にしようと考えていた。そんな折に、彼は“100年に1人の天才”と称される数学者・櫂直に目を付ける。大の軍隊嫌いで変わり者の櫂は協力を拒むが、山本の「巨大戦艦を建造すれば、その力を過信した日本は必ず戦争を始める」との言葉に決意を固め、巨大戦艦の秘密に迫るため帝国海軍の中枢に飛び込んでいく。
- スタッフ
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監督・脚本・VFX:山崎貴
原作:三田紀房「アルキメデスの大戦」(講談社「ヤングマガジン」連載中)
- キャスト
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菅田将暉、柄本佑、浜辺美波、笑福亭鶴瓶、小林克也、小日向文世、國村隼、橋爪功、田中泯、舘ひろしほか
- 「アルキメデスの大戦」公式サイト
- 映画「アルキメデスの大戦」公式 (@archimedes_mov) | Twitter
- 映画「アルキメデスの大戦」 | Facebook
- 「アルキメデスの大戦」作品情報
©2019 映画「アルキメデスの大戦」製作委員会
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- 山崎貴(ヤマザキタカシ)
- 1964年6月12日生まれ、長野県出身。2000年に「ジュブナイル」で監督デビュー。「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズや「永遠の0」「STAND BY ME ドラえもん」など話題作を多く手がけてきた。総監督と脚本を担当する3DCGアニメーション映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」が8月2日、3DCGアニメーション作品「ルパン三世 THE FIRST」が12月6日に全国で公開される。
- 三田紀房(ミタノリフサ)
- 1958年1月4日生まれ、岩手県出身。1988年にモーニング(講談社)にて「Eiji's Tailor」でデビュー。「ドラゴン桜」「インベスターZ」など多くのヒット作を生み出してきた。現在、ヤングマガジンで「アルキメデスの大戦」、モーニングで「ドラゴン桜2」を連載中。