「アルキメデスの大戦」山崎貴×三田紀房|菅田将暉には名優のオーラが、2時間10分の“満たされる”映画

そうそう、こういうこと!(三田)

──撮影全体の中で、特に菅田さんを“追い詰めた”と感じているのは数式にまつわるシーンでしょうか。

山崎貴

山崎 櫂と(田中泯演じる)平山が対峙するシーンもそうですね。あの場面のラストで櫂が見せる表情は映画のキモなので、どんな顔をしてくれるのかがすごく楽しみだし怖かった。迫真の演技がないとそこまで積み上げてきたものが崩れてしまうので。状況を説明して「櫂だったらどんな顔をするんだろうね」と彼に委ねました。

三田 原作にはない場面ですよね。櫂と平山は反対の方向を向いている2人だけど、最終的な着地点は一緒。船の魔力に取り憑かれた彼らの感情的な波長がシンクロしていく様子は、強烈に印象に残りました。「そうそう、こういうこと! 山崎監督はすごくよくわかっていらっしゃるな」と息を詰めて観ちゃいました。

山崎 先生にそう言っていただけてありがたいです。ぜひ映画にさせてくださいとお願いしてご快諾いただいたときに、よく考えたら原作ではまだ大和についても最終的な結論が出ていないな……と気付いて。

三田紀房

三田 そうなんですよね。

山崎 映画なりに風呂敷を畳まないといけないので、大和を主題に沿って考えたときに、どんな結論に達するか?ということであのシーンを入れたんです。大変な作業だったので、そこを褒めていただけるのはうれしいです。

「先生が描いた作品が今こうなっています!」(山崎)

──三田先生は撮影現場を見学されたそうで、レポートマンガを描かれていましたね。

山崎 マンガに僕も出ていてびっくりしました(笑)。先生がいらっしゃったときは「見てください。先生があのとき描いた作品が今こうなっています!」と、僕はおもてなしの気分でしたね。

「アルキメデスの大戦」

三田 戦艦の模型がバーンと出てきて、小林克也さんと橋爪功さんが「おお!」と驚くシーンや、菅田さんが黒板に数式を書き始めるまでの場面、菅田さんと田中さんが階段ですれ違うシーンにお邪魔しました。やっぱり菅田さんには、あのベテラン俳優ぞろいの中にいてもまったく引けを取らない、日本を代表する名優としてのオーラがあった。田中泯さんの重量感も印象的でした。

──キャスティングに関して、三田先生からは何か要望があったのでしょうか? 造船会社の社長・大里清は、映画でこのキャラクターを演じた笑福亭鶴瓶さんをモデルに描いたと伺いました。

「アルキメデスの大戦」より、笑福亭鶴瓶演じる大里清。

三田 「鶴瓶さんが出てくださるそうです」と聞いて驚きました! 原作にはたまにしか出ませんが物語上はすごく重要なキャラクターだったので、存在を一発で印象付けるために、「まっすぐで熱意を持った大阪弁の社長」という設定で真っ先に思い付いた鶴瓶さんをモデルにさせていただいて。

山崎 鶴瓶さんは自分がモデルになっていることを知らなかったそうですよ。読んでみたらすごくそっくりで驚いたと。

三田 頭が上がりません(笑)。大里はかっこいい役ですよね。平和のためにがんばりましょうと言われて、任せてください!と協力するいい男なんです。

映像は五感すべてに訴えられる世界(三田)

──お二人はそれぞれ違うフィールドで活動されていますが、マンガだから、あるいは映像だからこそできることにうらやましさを感じますか?

山崎 マンガは着想から作品になるまでの距離が映画より近いのがうらやましいです。考えたことをあまり時間が経たないうちに世の中に出せる即時性というか。僕らはお披露目できるようになるまで1年半ほどかかるので、この考え方は発表のタイミングにはどうなっているんだろう?と怖くなることもあるので。

三田 なるほど。マンガはトライアンドエラーを繰り返すのが許される、わりとチャンスの多いメディアなんです。映画は関わっている人や予算も多いので、リスクを取るのは難しいですよね。映像の世界のよさは、音楽や映像など人間の五感すべてに訴えられる総合芸術であるところ。二次元の世界ではそれができないし、我々はページをめくってもらわなければ何も進まない。マンガの一番の大先輩である手塚治虫先生が、映画監督になりたいと考えていらっしゃったのもわかる気がします。

左から山崎貴、三田紀房。

特別ARコンテンツ《“アルキメデスの大戦”への扉》を三田紀房が体験!

スマートフォンアプリ・SATCH VIEWER内で、「アルキメデスの大戦」の世界観を存分に味わえる特別ARコンテンツが展開中。これは映画で使われたCG映像をベースに作られたもので、ARカメラの起動後に現れる謎の扉をくぐると、戦艦大和の甲板にいる雰囲気が楽しめる。扉から出入りするたびに大和の状況が刻々と移り変わっていく仕掛けも。

このコンテンツを体験した三田は、迫力たっぷりの映像に「こりゃすごい!」と大興奮。「3、4年前だったらこういう体験はできなかったと思うので、映画化されたのが今の時代でよかった(笑)」と語り、周囲のスタッフたちにも「観たほうがいいよ!」とスマートフォンを手渡していた。なお映像は3パターン用意されている。

「アルキメデスの大戦」
2019年7月26日(金)全国公開
ストーリー

1933年、欧米列強との対立を深めて軍拡路線を歩み始めた日本。海軍省は、世界最大の戦艦を建造する計画を秘密裏に進めていた。だが、この計画に反対していた海軍少将・山本五十六は、巨大戦艦の建造がいかに国家予算の無駄遣いであるか、その見積もりを算出して明白にしようと考えていた。そんな折に、彼は“100年に1人の天才”と称される数学者・櫂直に目を付ける。大の軍隊嫌いで変わり者の櫂は協力を拒むが、山本の「巨大戦艦を建造すれば、その力を過信した日本は必ず戦争を始める」との言葉に決意を固め、巨大戦艦の秘密に迫るため帝国海軍の中枢に飛び込んでいく。

スタッフ

監督・脚本・VFX:山崎貴

原作:三田紀房「アルキメデスの大戦」(講談社「ヤングマガジン」連載中)

キャスト

菅田将暉、柄本佑、浜辺美波、笑福亭鶴瓶、小林克也、小日向文世、國村隼、橋爪功、田中泯、舘ひろしほか

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山崎貴(ヤマザキタカシ)
1964年6月12日生まれ、長野県出身。2000年に「ジュブナイル」で監督デビュー。「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズや「永遠の0」「STAND BY ME ドラえもん」など話題作を多く手がけてきた。総監督と脚本を担当する3DCGアニメーション映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」が8月2日、3DCGアニメーション作品「ルパン三世 THE FIRST」が12月6日に全国で公開される。
三田紀房(ミタノリフサ)
1958年1月4日生まれ、岩手県出身。1988年にモーニング(講談社)にて「Eiji's Tailor」でデビュー。「ドラゴン桜」「インベスターZ」など多くのヒット作を生み出してきた。現在、ヤングマガジンで「アルキメデスの大戦」、モーニングで「ドラゴン桜2」を連載中。