「アナザーラウンド」|もう一度自分に見せてあげたい!岡野陽一×鈴木もぐら(空気階段)×酒井貴士(ザ・マミィ)が語る酒とおじさん論

今はボーナスステージみたいなもん(もぐら)

──劇中に登場するおじさまたちは、職場でも家庭でも居心地の悪さを感じてどこか満たされないでいます。「中年の危機」というのも今作のテーマになっていますが、迫る中年期を前に「こんなおじさんになりたくない」という自分流のモットーはありますか?

鈴木もぐら

もぐら 危機を抱えているおじさんたちを集めた企画か。だから僕らが呼ばれたんですね。ようやく納得が行きました。僕も34歳なので中年、おじさんですからね。

酒井 僕は30歳ですけど、いつでも危機ですね。

岡野 若い頃はみんな「おじさんになったらおしまいだ。30歳くらいで人生終わるんじゃないか」って思っていると思うんです。でもね、案外そのくらいの歳になると「あ、ここからなんだ」ってなるんですよ。僕に関しては希望を持つと絶望が付いてくるので、目的というものは何も持たない。だから、中年期はただただ無理せず生きていける素晴らしい時期なんですよ。

もぐら 今はもうボーナスステージみたいなもんですから。青春や夢見る時代を経て、何もなくなる。ここからは麻雀、パチンコ、酒、楽しいことだけをやって死んでいくというフェーズに入ってますから。おじさんはそういうもんですよ。

一番なりたくないおじさんは……(岡野)

岡野 ただね、やっぱり若者に説教するおじさんは嫌だね。あれ一番嫌い。

酒井 うわあ、それ! 最近本当に嫌なことがあったんですよ。焼き鳥屋さんのカウンター席で、隣に座ったおじさんが僕たちの会話をめちゃくちゃ聞いていて「お前ら芸人か? なのにさっきから面白いこと1つも言わねーな」って絡んできて。だから「プライベートなのですいません」ってあしらったのにガンガン来て「どこの事務所だ? 『よし! もっと興行(吉本興業)』だろう? これわかるか?」ってすげえしつこくて。僕あまりにも嫌すぎて「そのレベルでやってないんで」って言っちゃったんですよ。

岡野 お前、最悪。それはないわ(笑)。

もぐら そもそもプライベートとか分けちゃダメなんだよ。おじさんにプライベートなんてないんだから。

酒井 え? 僕が嫌なおじさんということですか?

もぐら 「嫌なおじさんVS嫌なおじさん」の構図になっちゃってるもん。

左から岡野陽一、鈴木もぐら、酒井貴士。

岡野 僕が一番なりたくないのは酒井さんみたいなおじさんです。やっぱりプライドが高いおじさんってかっこ悪いですよね。人権がなくなるのがおじさんなので、おじさんは何をされてもいいんですよ。その代わり楽しみが増えるわけですから。

もぐら 「あの人おじさんだから仕方ない」って周りが勝手にあきらめてくれますからね。だから生きているだけでハードルがどんどん下がっていく。本当におじさんは楽ですよ。

ションベンの音が配信で流れちゃって(酒井)

──さきほど酒井さんがおっしゃっていたように、劇中でマーティンたちは行き詰まり気味の人生を打開するためお酒の力を借りますが、お三方も困ってお酒の力を借りたり、逆に失敗したことはありますか?

岡野 そもそも失敗しかないですよ。ただ、僕は女性とごはんに行くときには飲んでから行きがちですね。借金とギャンブルはすごくするんですけど、女性と2人きりで食事をする機会ってあんまりないので恥ずかしいんですよ。だからちょっと酔ってからじゃないとダメ。20代の頃なんて合コンに行く前は絶対に3、4杯ガーッと飲んでから行っていましたからね。

酒井 僕はこの前大失敗しましたよ。自宅からZoomで配信をしたんですけど、家だとテンションが上がらないので1杯引っ掛けようと思ったらうっかり何杯も飲んじゃって。この映画と同じで、1杯じゃ終わらないんですよね。そうしたら配信中にトイレに行きたくなりまして。ま、でもカメラ持ったまま行けばバレないと思っていたら、ションベンの音がずっと配信で流れちゃって、みんなにバレちゃったんです。

岡野 当たり前だろう。

酒井 でも、ちょっと納得いかなくてZoomの注意事項みたいなところ読んだんですけど、「ションベンの音は拾いますよ」とか、そういうこと一切書いてないんですよ。「ジョボジョボジョボ~」ってすごい音が流れちゃって。

「アナザーラウンド」

もぐら Zoom側もいちいちションベンだけについて書く項目はないのよ(笑)。僕の場合はずっとカラオケバーで働いていたので、自分の失敗というよりも我慢を強いられることが多かったです。お金を持ってそうなギラギラした人がドンと座ってこっち見て「あ、桑マン(桑野信義)いんじゃん。おい、トランペット吹けよ」みたいなね。そうなると僕も「失礼します」って酒の瓶でピロピロみたいなマネをするじゃないですか? そうすると「うっせーよ」とか叫ばれて酒ぶっかけられたりして。

酒井 めちゃくちゃ酒の被害者じゃないですか!

もぐら そうなんだよ。だから私はこの映画と同じように、酒のいいところだけでなく逆サイドも見て来てるわけですよ。怖さというものも。