コミックナタリー PowerPush - 「暁のヨナ」
強固なチームワークで紡ぐ大河ファンタジー 草凪みずほ(原作者)×斎藤千和(主演声優)対談
ヨナは周りに影響されるキャラだから「演じすぎない」
草凪 「ヨナは演じすぎないようにしている」っておっしゃってましたけど、そのナチュラルさがヨナとしていいなって思うんです。ナチュラルな中にいろんな感情が溢れ出ていて、いろんな引き出しを見せていただけるので毎回圧倒されてます。
斎藤 ドラマCDは声のパーセンテージが大きいけど、アニメは音楽が入ったり色が着いたり、情報量が多いので、全部が揃ったときにパーフェクトなバランスにしたくて。キャラが笑ってる絵にいかにも「笑ってます」っていうお芝居を乗せるのって過剰になってしまう気がするから、絵に任せられるところは極力任せていいと思ってるんです。だから演じすぎないようにしてるんだけど、ヨナは周りに影響されてキャラクターが形作られていくと思うので、より一層ですね。お城で育ったから知らないことが多くて、気付きを与えられて成長していく子。アフレコの段階でも、ナチュラルに周りに影響されることをすごく意識していて、役作りに迷うことはないですね。怒られたらもちろん軌道修正しなきゃとは思ってますけど。それは私だけじゃなく、森田さんとかもかな(笑)。
草凪 あははは(笑)。
斎藤 森田さん、毎回みんなに笑顔で釘を刺されてますからね。「キジャはもっとカッコいいキャラですよ!」って(笑)。でもその愛されてる感じがキジャっぽい。みんなそれぞれのキャラクターっぽさがありますよね。前野(智昭)くんなんてずーっと静かに座ってるんだけど、誰より原作を熟読してて。「あれ、いまどこだろ?」ってつぶやくと、「ここです」ってスッと原作を出して教えてくれたり。サポート上手なハクみたい。私はマイクの前ではヨナでいればいいだけで、みんなと一緒にいるだけで空気が作り上げられる。それはドラマCDからやってる強みかもしれないですね。もうチームができてるから。
草凪 本当に連帯感がありますよね。
斎藤 それも原作の力なんですよ。1回しか出てこないゲスト声優さんでも「続きが知りたい」って必ず言うんです。「ヨナ」は出てる人みんな原作を読み込んでるし、自分のキャラクターに愛情を持ってる。それだけ原作に力があって、飲み込まれるんだと思います。
草凪 今日のアフレコもすごく面白かったです。ハクとキジャのアドリブが……。
斎藤 どんどん仲良しになっていきますよね、あの2人。いいんですか? キャラの設定的に、あれで(笑)。
草凪 あはは。なんかもう面白いから、どんどんアドリブ入れていただけたらいいと思ってます(笑)。「こんな2人だったんだ」って、私が改めて発見してる感覚ですね。最近は「ヨナ」の本編を描きながら、このシーンを誰々さんはこんなふうに演じてくれるかなとか、仕事場で想像してるんです。アニメ化されないとわかってる部分だけど、もう自在に皆さんの声でセリフが脳内再生されちゃう。
斎藤 先生にお聞きしてみたかったんですけど、自分の作品って、一度自分で完成形を作り上げた世界じゃないですか。それがまたいろんな違う人の手を経てもう一度アニメという形になるってどんな心境なんですか? 全然違うものとして見てるのか、自分が作ったものが広がっていく感覚なのか……。
草凪 うーん……両方ありますね。普段自宅の机っていう狭い世界で1人でやってる作業なので、こんなふうにいろんな方が意見を出しあってくれて、「そういう受け取り方もあったのか」「そんな演出のやり方もあるのか」って、勉強させてもらってばかりです。自分で描いててもわからないところもあるので。
斎藤 そうなんですか。私の中で原作者さんってその世界の神様なイメージがあったんだけど、草凪先生は毎度、新しいキャストの方が来ると全員に「本当にありがとうございます!」ってすごくていねいに頭を下げられていて。それがとても新鮮だったんです。
スウォンは二重人格者ではない
──せっかくの機会なので、先生から斎藤さんに聞いてみたいことも何かあれば。
草凪 そうですね……。メインキャラの中で、女の子はヨナひとりなんですけど、もし千和さんが男性だったらどのキャラを演じてみたいですか?
斎藤 うーん……。私はスウォンですね!
草凪 へえー。四龍じゃないんですね。
斎藤 スウォンが一番、どう演じたらいいかわからないんですよ。だからこそ、一番想像できないキャラクターをやってみたいなって。
草凪 なるほど。何を考えてるかわからないし、確かに演じるのはスウォンが一番難しいかも。四龍の人たちは基本善の存在だけれども、スウォンは立ち位置がはっきりしてない。でも彼が二面性のあるキャラクターだとは、私自身思ってないんです。二重人格者ではなく、自分の中に信念を持って、信じた道を行っている人。
斎藤 私もそう思います。役者のさじ加減ひとつで見せ方が変わる、繊細なキャラクターだと思うんですね。だからトライしてみたい。
草凪 スウォンはドラマCDに登場していなかったのでアニメで初登場になるんですけど、小林(裕介)さんはもうイメージにぴったりでしたね。悪役っぽくない、裏表ない感じの人がいいなと思ってたんです。
斎藤 アニメの第1話も、もうスウォンがカッコよかったですよね! かなりひどいことをするのに、嫌いになれない感じ。
草凪 うんうん、カッコよかった。第1話の大きな見どころだと思います。そのほかも第1話はキャラクターがたくさん出てきたり、すべてこだわって作っていただいてるので、もう全部(が見どころ)ですけど。
ファンの人が作ってるアニメ
斎藤 原作ではコマの制限があって描かれず、読者が脳内で補完していた部分を「こんな感じになってたんだ」ってわかる感動が、アニメでは毎回味わえると思います。アニメ化すると原作ファンの期待とは少し違う形になる場合もあるけど、この作品はファンの人が皆で作ってる感じだから、そうはならないと思う。もう気持ちと愛情がね、すごく詰まってるんです! ……先生、「キャーッ」ってなってますけど(笑)。
草凪 (恥ずかしそうに両手で顔を覆う)
斎藤 (笑)。でも本当、学びのある作品だなと、アニメに携わって改めて感じたんです。元気が出るとかほっこりする場面もあるけど、観る人の人生にガツンと影響を与えてくれる作品になるんじゃないかな。ヨナの成長とともに、いろんなものを学んでいただけたらいいなと思います。
草凪 千和さんの言うとおり、原作を好きでいてくださる読者さんもすごく喜んでくれるアニメだと思ってます。リスのプッキューが縦横無尽に動いたりとか、アニメならではの遊びもすごくかわいくて。細かいところやアドリブなんかも、隅々まで楽しんでほしいですね。今日は、シンアの過去のエピソードを録ってたんですけど、私、アフレコで泣いちゃいました。
斎藤 私も最後にセリフを言わなきゃいけないのに、泣けて鼻が詰まってきてどうしようかなと思いました。そういえば今日はアニメの始まりが少しバタバタしてたので、ハグするの忘れちゃっていたんです。なので、少し気持ちが落ち着いてから「先生、先生、忘れてた!」って(笑)。
──ハグは毎回の恒例になってるんですか?
斎藤 いえいえ、そういうわけではないんですが、「アニメになってうれしいです。精一杯がんばります!」という思いを込めて、熱いハグ(笑)をさせていただきました。言葉通り、がんばります!
- TVアニメ「暁のヨナ」2014年10月7日放送開始
AT-X:毎週火曜23:00~、毎週木曜11:00~、毎週土曜29:00~、毎週月曜17:00~
TOKYO MX:毎週火曜24:30~
テレビ愛知:毎週火曜25:35~
BS11:毎週火曜27:00~
サンテレビ:毎週火曜24:30~
熊本放送:毎週火曜26:13~
dアニメストアでも配信
スタッフ
監督:米田和弘
シリーズ構成:猪爪慎一
キャラクターデザイン:吉川真帆
音楽:梁邦彦
音響監督:長崎行男
アニメーション制作:studio ぴえろ
キャスト
ヨナ:斎藤千和
ハク:前野智昭
スウォン:小林裕介
キジャ(白龍):森田成一
シンア(青龍):岡本信彦
ジェハ(緑龍):諏訪部順一
ゼノ(黄龍):下野紘
ユン:皆川純子 ほか
- 草凪みずほ「暁のヨナ」
- 草凪みずほ「暁のヨナ」
高華国の姫・ヨナは、優しい父王・イルに大切に育てられ、幼馴染みで従兄のスウォンに想いを寄せる平穏な日々を送っていた。だが16歳の誕生日、父がスウォンに斬殺された!城を追われたヨナとハクは、神官イクスに「ヨナが生きることは国を揺るがすという事。伝説の四龍を探せ」とお告げを受ける。ヨナは自らの身を守りながら、父が愛した高華国の真実の姿を見つめるため、伝説の四龍を探す旅に出る!
- 草凪みずほ「暁のヨナ(15)」 / 2014年9月19日発売 / 白泉社
- ドラマCD付き初回限定版 / 2106円
- 通常版 / 463円
草凪みずほ(クサナギミズホ)
2月3日熊本県生まれ。2002年、「御神兄弟がゆく!?」で第27回アテナ新人大賞優秀新人賞を受賞。2003年に花とゆめ(白泉社)にて「よいこの心得」でデビュー。同作が連載化したことで、第28回アテナ新人大賞デビュー優秀者賞を受賞する。続けて「夢幻スパイラル」「ゲーム×ラッシュ」「NGライフ」とヒット作を飛ばし、現在花とゆめにて「暁のヨナ」を連載中。同作は2014年10月にTVアニメ化された。
斎藤千和(サイトウチワ)
3月12日埼玉県生まれ。主な出演作に「物語シリーズ」戦場ヶ原ひたぎ役、「プリズマ☆イリヤ ツヴァイ!」クロ役、「黒子のバスケ」相田リコ役など多数。