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花とゆめ創刊45周年特集 第5回 草凪みずほインタビュー|「ヨナ」をよきところに導きたい。これ以外考えられない

高華王国に生まれた赤い髪を持つ姫・ヨナの宿命の旅路を描く、草凪みずほの「暁のヨナ」。2009年に開幕した本作は、今年で連載10周年、単行本30巻に到達した。2014年にTVアニメ化を果たしたほか、2016年に新垣里沙主演による舞台「暁のヨナ」、2018年に生駒里奈主演による舞台「暁のヨナ~緋色の宿命編~」が上演され、今年11月には新作公演も行われる。多くの人を惹きつけるこの骨太のファンタジーは、まさに今の花とゆめ(白泉社)の屋台骨となっている作品だ。

花とゆめの創刊45周年を記念した本特集、第5回となる今回は草凪が登場。ヨナと歩んだ10年を振り返ってもらった。また「NGライフ」などの過去作のエピソード、さらに花とゆめへの思いも聞いた。

取材・文 / 三木美波

今はようやくラストを見据えられるようになった

ずっと一緒に旅をしてきたヨナ、ハク、四龍、ユン。

──2009年にスタートした「暁のヨナ」。連載10年目突入、おめでとうございます!

長い間この物語に付き合ってくださっている読者さんに、本当にありがとうございます!という気持ちです。ただ10年も続けられるなんて思っていなかったですし、あっという間すぎて10年経った気がしないというか……。

──29巻のあとがきにも「連載初期にはこんなに長くなるとは思いませんでした」と書かれていましたね。

そもそも最初はどこまで描かせてもらえるかわかりませんでした。初期は全然人気がなかったし、四龍集めの途中で打ち切られる可能性もあったと思います。3巻が出たときに「5巻くらいまでいけるんじゃないかな」、5巻が出たら「7巻くらいまでは大丈夫」と担当さんに言われて、そうこうしているうちに今に至るという(笑)。初期はどこまで描けるかというよりは、1話でも多く描けるよう願うばかりでした。今はようやくラストを見据えられるようになりましたが。

──ストーリー全体を登山に例えると、現在の「ヨナ」は何合目くらいでしょうか?

うーん……あくまでイメージですが、7合目くらい?

──まだまだ「ヨナ」の物語を楽しめそうでうれしいです。これまでのストーリーをざっくりと振り返ってみると、1~8巻でヨナが城を出てから四龍が集結するまでを描き、それから貧しい生活に喘ぐ火の部族の土地を救う火の部族編(9~13巻)、麻薬が蔓延する水の部族で闇商人と戦う水の部族編(14~16巻)、四龍の中でも特殊な黄龍ゼノの過去を描く金州・ゼノの過去編(17・18巻)、斉国の要人が高華国への侵攻を狙い将軍の娘・リリを拉致したことから始まった斉国編(19~21巻)、高華国へ恨みを持つ真国との騒動を描いた真国編(22~26巻)、そして最新エピソードである戒帝国・千州編(27巻~)と分類できると思います。

そうですね。1~8巻の部分は特に名称はないんですが、四龍集めはそれぞれ白龍編、青龍編、緑龍編または阿波編と呼んだりしていました。どのエピソードの名前もはっきり決まっているというより、担当さんとのやり取りでなんとなく呼び始めたものが多いです。

──これまでのストーリーを振り返ってみて、印象に残っているエピソードを3つ挙げるとしたら、どれになりますか?

「暁のヨナ」7巻より、読者から大反響があったというヨナがクムジを射るシーン。

そうですねー、描いてるときはどの話も悩んだし、一生懸命だったので大きな差はないのですが……。現時点であげるとしたら1つめは緑龍編のラスト、ヨナがクムジを倒すところからスウォンと再会するあたりまでです。当時、クムジを倒すヨナに読者さんから大きな反響をいただいたらしく。ラブ展開とかではなく、ヨナが矢を射る話で反応があって驚きました。

──姫として大切に育てられ、自分の国のことを何も知らずにいたヨナが、苦難を経て巨悪クムジの止めを刺すまでに成長した印象深いエピソードでした。ヨナの恋愛面ももちろん期待されているとは思いますが、戦うヒロイン的なカッコよさに読者もカタルシスを感じたのではないでしょうか。

ちなみに、その時期ヨナのラブな展開があまりなかったとは言え、それっぽいシーンを描いても大して反応はなかったみたいです(笑)。それを聞いて、ハクとヨナって人気ないんだなって思ってました。緑龍編はアニメでも舞台でもクライマックスに使われ、何度も脚本を読み返しライターさんともたくさんやり取りした部分です。ある意味、「暁のヨナ」のもう1つのスタート地点だと思ってます。

第91話「彼はとても大切な友人だった」より、スウォンに掴みかかろうとするハク。

──印象に残っているエピソードの2つめは?

水の部族編のラスト、第91話「彼はとても大切な友人だった」でしょうか。これもハクの思いをちゃんと表現できるか、読者さんに伝わるかをキャラの表情に込めました。

──ハクとスウォンの邂逅は、どうなってしまうのかとハラハラしました。「スウォンの右腕になる」ことを目指していたハクは、スウォンに対する思いが重くて複雑で……。第91話の最後のハクの表情にはハッとさせられました。では、3つ目の印象に残っているエピソードは?

第152話「大事なものは一つじゃないけど」より。ハクに許嫁がいることを知ったヨナは、ハクとギクシャクしてしまう。

第152話「大事なものは一つじゃないけど」です。

──ああー! ハクがヨナに思いを伝えた……というかハクが一方的にスッキリしたあの回ですね。読者からの反響も大きかったでしょうね。

ハクの言いたいことを追求していったらああいう話になりました。ネームを描いたとき、この流れ以外に考えられないと思ったし、「これがハクだ!!」とより彼を理解できた気がして。読者さんからも「暁のヨナらしい」「ハクらしい」と言われて、とてもうれしかったです。

──ストーリー全体の流れは、草凪さんの思い通りになっていますでしょうか?

本当にざっくりした流れ、例えば四龍を集めてどこに行って……などは考えていた範囲ですが、そこに行くまでの細かい道のりはいくつも考え、いくつも没にして、という感じなので初期の予定と変わっていることももちろんあります。

──連載中に「予定にはなかったけど、この展開にしたら面白そう!」と考え付いたときはどうするんですか?

私の場合ですが、前後関係なく「盛り上がりそう!」と思い付いたシーンやセリフは大抵、後に考え直すとキャラの気持ちが全然繋がらなくて没になっちゃいます。没にして、何度も作り直して、ようやく少し読めるものになるので、最初に思い描いたものにしがみつかないようにしてます。

テジュンには描きたいものが詰まってる

「暁のヨナ」1巻より、ヨナに言い寄るカン・テジュン。

──「ヨナ」には魅力的なキャラクターがたくさん登場しますが、火の部族長の息子・テジュンの成長には読者も驚いているのではないでしょうか。1巻ではヨナに迫る嫌な奴で、その後はヨナを死なせてしまったと思い込んだことから腑抜けになったテジュンが、火の部族編を通して将軍家の人間として使命感に目覚め、千州編のエピソードでも活躍しています。

テジュンは描きたいものが詰まっているキャラだと最初から考えていて。第10話のあと登場しなくなってからも、ヨナが仲間を集め終わったとき、まだ連載が続いていたら出したいなと考えていました。テジュン、読者さんに嫌われてましたけど、成長したヨナを見てテジュンも立ち上がってほしい!と思って描いてたんです。そうしたら、すこーしずつ読者さんから「テジュンが好きになりました」って言っていただけるようになりました。

カン・テジュンファン必見の10巻。

──初期は傲慢なイメージが強かったので、こんなに憎めない、というか愛おしいキャラだったとは……と一読者として驚きました。10巻では表紙も飾って……。

彼は描きやすいキャラなんですが、10巻は“テジュン編”とも言うべき巻で、読者に読んでもらえないかもという不安がありました(笑)。

──そういえば「一番描きにくいキャラは、絵的にも性格的にもヨナ」とファンブックに書かれていましたね。どの辺りが描きにくいのでしょうか?

絵的には、ウェーブの髪を描くのが苦手で……。そのうえ、髪のグラデトーンは貼るとカタい印象になって、ふんわりかわいく描けないんです。性格でいうと、この物語の主人公という立ち位置や、主人公としての振る舞い、考え方がヨナを迷い悩ませ、私も悩んでしまいます。

──ヨナは高華国の初代国王・緋龍王の生まれ変わりと言われ四龍とともにいますが、王ではない。それどころか今は流浪の身で、でも高華国の姫としての責任感も持っています。不安定な立場で決断を迫られることが多いので、どの道を選択をすべきか、どのような言動が最善なのか、ヨナも草凪さんも迷ってしまうのかもしれませんね。

そうですね、最善を尽くせたか、ヨナにも私にもわからないときがあり……難しいです。

──世界観についてお伺いしたいのですが、「ヨナ」の舞台は高華国という架空の王国です。作品が生まれたきっかけとして、「戦う少女のファンタジーは昔から描きたいものの1つだった」とファンブックにありましたね。東洋風ファンタジーになったのはなぜでしょうか?

「NGライフ」の主人公・敬大は古代ローマで暮らした前世の記憶を持つ現代の高校生。

最初はどこの世界にしようか迷いました。「NGライフ」のときのように古代ローマとか、古代日本や琉球、アイヌも考えたんです。でも自分の描きたいキャラや世界がどこかの歴史に当てはまらなかったので、描きたい衣装や建物などを優先していって、東洋風ファンタジーに落ち着きました。

──いろいろな可能性があったんですね。「暁のヨナ」は長く続いてきたこともあり、キャラクターの数も設定も多い作品です。草凪さんご自身では、どのようにキャラクターのバックボーンや世界観の設定を管理しているのでしょうか?

初代担当さんが初期に繰り返しおっしゃっていたのは、「ただでさえややこしい設定だから、ストーリーの流れはシンプルに」でした。なので、キャラも設定も少しずつ慎重に出していく感じで描いています。そのせいで流れがゆっくりになったり、キャラが多くてすべては語れなかったりしますが。

──真国編が描かれた26巻の柱コメントにも「人が多く描くべきことの取捨選択が悩ましい章でした」と書いていらっしゃいましたね。

はい。ただこれはヨナの物語なので、ほかのキャラを掘り下げすぎてヨナの流れを止めてしまわないように気を付けています。

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高華国と千州軍の戦いの中、時間を稼ごうと相対する四龍たち。そして、前線で死力を尽くすハクは、ついにクエルボと見え一騎打ちに──!? その最中、千州の城ではヨナとクエルボの妻・ユーランのもとへ、ゴビ神官が現れ……!? 千州編クライマックス!

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30巻限定版に付いてくるアートカード全30枚+付録の2枚がすべて収納可能なポケットファイル。
草凪みずほ(クサナギミズホ)
草凪みずほ
2月3日熊本県生まれ。2002年、「御神兄弟がゆく!?」で第27回アテナ新人大賞優秀新人賞を受賞。2003年に花とゆめ(白泉社)にて「よいこの心得」でデビュー。同作が連載化したことで、第28回アテナ新人大賞デビュー優秀者賞を受賞する。続けて「夢幻スパイラル」「ゲーム×ラッシュ」「NGライフ」とヒット作を飛ばし、現在花とゆめにて「暁のヨナ」を連載中。同作は2014年10月にTVアニメ化、2016年3月に舞台化を果たした。また舞台の新作「暁のヨナ~ 緋色の宿命編~」が11月より東京・EX THEATER ROPPONGIにて上演され、生駒里奈と矢部昌暉(DISH//)が主演を務める。