まっすぐな話を「いいな」と思えるのが少女マンガ

──お互いのマンガについて感想を言い合ったりもしますか？

言います。すぐ言う！ 褒められたいので。みんなヒルが血を欲するように、褒めを欲しているんです（笑）。

──やまもり先生の作品についてはみなさんどうおっしゃいますか？

なちやんはよく「やまもりの描く男の人はあんまりマンガっぽくないから、このあとどういう行動をとるか、どういうセリフを言うかが予想できないのがいい」と言ってくれます。

──やまもりさんはお三方の作品をどんなふうに思っていますか？

なちやんの絵は、ワクワクするんですよね。かわいいし、ポップだし、しっとりした絵も描けるし。描くのも早くて、あと吸収力がすごいんですよ。ほぼ毎回アシスタントに来てくれるんですけど、初めて描くような絵があると、最初はよくわかんないと言いつつ、すぐに覚えて、それを自分の原稿でも生かすようになるんですよ。しかもプラスアルファして！ 置いていかないでーと思っています。なちやんは、楽しんで絵を描いてるんですよね。楽しんでる人が一番強いと思う。幸田は、もうあのテンポがすごいですよね。ドキドキするし。ちょっと細かい部分なんですが、幸田の男の子って、眉と目の間が広いんですよ。それでもバランスがとれている顔になっているのがすごいなっていう。

──確かにイケメン顔というと、眉と目が近いことが多いですね。

そうなんですよ。幸田の描く目って「見下されてる」感じなんですけど、「だがそれがいい」みたいな。色気があるんです、幸田の絵は。シタラは、すごいんですよ。いつも笑っていて、そんなに自己主張してくるタイプじゃないんですが、「いくつ連載してんの？」「なんでそのアイデアが出てくるの？」って驚くくらい、たくさん違うタイプの話を描いていて。しかも、締め切りが優等生。大体締め切り1週間前には終わっているという……。

──「雛鳥のワルツ」の里中実華先生とも仲良しだそうですね。

なかやん（里中実華）は、前の担当さんが一緒で、そこから仲良くなりました。「まりんとゆうれい」も大好きです。なんか、なかやんのマンガって読んでると癒されるんですよね。明日もがんばろう、という気持ちになれる。いい意味で「おやつ」のような。すごく疲れたときにシュークリーム出されて「ありがとう……！」という感じ。「雛鳥のワルツ」の第1話を読んだときは、すがすがしい気持ちになりました。「少女マンガって、これだよね！」と。やっぱり、ひねた話よりも、まっすぐな話を「いいな」と思えるのが少女マンガなのかなって。ちょっといじわるな話とか奇をてらった話もありだとは思うんですけど、「雛鳥」を読んで、ちゃんと当たり前みたいに友達がいて、主人公ががんばっていて、それに惹かれていく男の子がいる、という作品はいいなと思ったんですよね。そういう主人公を応援したくなりますし。

──ご自身の描くマンガはそういった王道とは違うと思われますか？

うーん、ベタだなあ、とは思います。私は、こういう話、前に読んだことあるよねというものしか思いつかないので「この後どうなるんだろう!?」っていう不思議な話は描けない。自分の描けるものを描くしかないので、そうなるとやっぱりキャラクターなのかなあと。キャラで、違う表現にすることをやっていこうと思います。内容はベタでもいいかなと思ってはいるんですよ。私も「するとは思っていたけど、やっとキスした！ ひょーう！」とか思いながら読むのは楽しいので（笑）。

──わかっていても、ちゃんとときめきますもんね。

それが少女マンガだな、って思います。