コミックナタリー Power Push - 「我が愛しのヲタ彼女」

咲良×芹澤優 ふたりが共鳴した“ウザくてかわいい”オタク女子

ここが私たちの居場所

──ちなみにおふたりには雪のように、趣味嗜好を周りに理解してもらえるか不安になったことってあります?

咲良 私は物心がついたときからオタクだったし「理解してもらえないだろう」という前提で生きてきたので意外と大丈夫でした(笑)。むしろ“一般の皆様”の邪魔をしないような処世術を学ぶことに必死になってたかも。

──あはははは(笑)。対する芹澤さんはさっき 「自分のことが大好き」と言うと「黙れ!」ってツッコまれるって笑ってましたけど……。

芹澤 そうですね。私はやっぱり自分のことが好きで。知らず知らずのうちに、自分のことを“ご自愛しちゃう”感じで……。

──しちゃいますか(笑)。

芹澤 中学、高校のときはその“しちゃう”性格を理解してもらえなくて、クラスでしょっぱい思いをしたこともありました(笑)。だから人に褒められても「いやいや私なんて……」って言ってた時期もあったんですけど、やっぱりそういうのが向いてないのか、言い続けてたら、なんか“かゆく”なってきちゃって。それに私もかわいいと思った女の子に「私なんて」って卑下されたらちょっぴり寂しいですから。それからは「褒められたことを否定するのは違うな」と思うようになって、今みたいなキャラにたどり着いた感じですね。

──そして今では“しちゃう”芹澤さんのことをたくさんの方が受け入れています。

芹澤 うーん……。でもi☆Risのメンバーからも、最初は「なんなんだ、あの子?」って思われてたらしいんですよ。

咲良 そうなんですか!?

芹澤 結成から1、2年経ったあとに聞かされた話なんですけど、みんな最初は「青(i☆Risでの芹澤のテーマカラー)の子、怖い」って思ってたらしくて(笑)。今はもちろんメンバーみんな仲がいいんですけど、そういうすれ違いは人生の中で何度も起きるものだとは思ってます。

──すれ違いを解消するテクニックってあります?

「我が愛しのヲタ彼女」3巻より。新学期早々遅刻をした春彦たちは、閉められた門を飛び越えようとする。

芹澤 どうすることが正解なのかはまだ全然わからないです。でも私の場合は、この間の「アニサマ」(Animelo Summer Live 2015 –THE GATE-)」のような大きなステージに立った瞬間であったり、i☆Ris単独のイベントに少しずつお客さんが呼べるようになってきた瞬間に「あ、受け入れられてるのかも」って実感することができていて。その度に「この仕事を続けてきてよかった」って思うし、「ここが自分を受け入れてくれる居場所なんだ」「だからここでがんばろう」って思えるんです。

咲良 それって私がマンガを描く理由にもすごく似てると思います。マンガは現実には叶えられないような理想を描くことが多いじゃないですか。「ヲタかの」の3巻にも学校の校門を飛び越えるシーンがありますけど、あんなの現実には不可能ですし。実際、私も試してみたんですけど、やっぱり全然無理で(笑)。そういう叶わないかもしれない理想を、絵という現実のものにしたいっていうのがマンガを描く大きな原動力になってるし、そのマンガを描く場所を与えてもらえていることって本当にうれしいことですから。

ふたりの表現に対する向き合い方

──おふたりとも自分らしさみたいなものを発揮できる場所を見付けることができたっていうのもそうだし、あと芹澤さんは声優とアイドルとして、咲良先生であればマンガ家のほかにも音楽家やタレントさんとして活動しているところもそう。複数のわらじを履いているって共通点もありますよね。

咲良

咲良 私の中ではあんまり二足のわらじみたいな感覚ってないんですよ。自分の感情を表現する方法が絵になったり、楽曲になったりっていうだけなので。発表の形態が違うだけだなって感じなんです。芹澤さんは「わらじを履き替えてる」みたいな感覚ってあります?

芹澤 声優として、i☆Risのメンバーとしてデビューしたばっかりの頃は「声優“も”、アイドル“も”」ってよく言ってましたし、気持ちを切り替える意味でも、あえてわらじを履き替える意識を強く持つようにしてました。

──でも「ました」なんですね。

芹澤 最近気づいたんですけど、私も咲良先生と同じで、自己表現をすることがすごく好きなんだなって。歌うときも自分でいたいし、声優としてキャラクターを演じるときも……もちろんキャラクターになりきるんですけど、自分の存在を完全に消したくはないなって思っている自分に気付いたんです。だから今はわらじは一足。歌うときはもちろんなんですけど、演じているときもある意味自分自身を表現するという意味では同じことなんだって思ってます。

──雪役だってある意味自己表現。芹澤さん自身が久保田さんの言動を通じて知った“オタク女子像”を表現したわけですもんね。

咲良 たぶん芹澤さんの演技が「オタクっぽい女の子ってこういう感じなんでしょ?」っていう目線の紋切り型のものだったら、その後の私の雪ちゃん像に影響を与えなかったのはもちろんなんですけど、当時私の中にあった雪ちゃん像ともブレができて違和感を覚えてたと思うんです。私は私が本気で「かわいい」と思った女の子を描いていたわけですから。でも芹澤さんは期待以上の演技、芹澤さんがちゃんと考えてくれた“ウザくてかわいい”雪ちゃんを演じてくれていて。本当に感謝してます。

芹澤 今日の芹澤、褒められっぱなしですね(笑)。でも私もプラスαして失敗することもあるし、「ちょっと違ったね」って収録現場で修正をいただくことも少なくはないので、たぶん「ヲタかの」のPVの場合は、オタク女子ってどんな存在か私に心当たりがあったこともそうだし、あと何より雪ちゃんというキャラクターが強くて。そうやっていろんなピースが奇跡的に全部うまくハマった結果、そう言っていただけるものになったんだと思ってます。雪ちゃんに声をあてたのはホントに楽しかったし、もっと演じたいなって思いました。

咲良 私ももっと芹澤さんが演じる雪ちゃんが観たいです。アニメ化されたらいいですよね。そしたら雪ちゃん役は確実に芹澤さんしかいないので。

芹澤 ありがとうございます! 動いてる雪ちゃん、ぜひ観たいですね。

(左から)咲良、芹澤優。
原作:粒々辛苦 / 作画:咲良「我が愛しのヲタ彼女」 / 発行・発売:小学館クリエイティブ
1巻 / 648円
2巻 / 648円
3巻 / 648円
あらすじ

ヲタクな彼女は、好きですか?
週3日しか学校に来ない、病弱、可憐な“神秘のヒロイン”白石雪。
口ベタでちょっと空回りしがちな、自称“平凡主人公”坂入春彦。
少年が何も知らずに恋に落ちたヒロインは……実はヲタクな不登校児だった!?

第1話の試し読みはこちらから

i☆Ris ライブBlu-ray / DVD「i☆Ris 1st Live Tour 2015 ~We are i☆Ris!!!~@Zepp Tokyo」 / 2015年9月16日発売 / エイベックス・ピクチャーズ
Blu-ray Disc / 6480円 / EYXA-10616
DVD 2枚組 / 4860円 / EYBA-10614~5
「ニッポン朗読アカデミー」

放送局:ラジオ大阪
放送時間:毎週木曜日24:30~25:00
ニッポン放送のインターネットラジオ「Radital」でも毎週金曜日に配信中。

咲良(サクラ)

東京都出身。6月7日生まれ。執筆活動のほか、タレントとしてもメディア、イベントに多数出演。コスプレ、ゲーム、音楽(アカペラ)を趣味とし、アカペラグループ「アライアンス・ジャパン」を主宰する。代表作は「ボクとカノジョの恋愛目録」「擬態かのじょ」など。2015年現在、E★エブリスタのオンラインレーベル・少年エッジスタにて「我が愛しのヲタ彼女」、ポニーキャニオンのWebマンガサイト・ぽにマガにて「Lance N' Masques -インサイドプラス-」を連載中。「Lance N' Masques -インサイドプラス-」の単行本1巻は、10月3日に発売される。

芹澤優(セリザワユウ)

81プロデュース所属。声優、アイドルユニット・i☆Risのメンバーとして活動。主な出演作品に「実は私は」(白神葉子)、「プリパラ」(南みれぃ)、「プリティーリズム・レインボーライブ」(福原あん)、「ムシブギョー」(一乃谷天間)、「犬とハサミは使いよう」(秋月マキシ)など。9月16日に発売される「i☆Ris 1st LIVE Tour 2015~We are i☆Ris!!!~@Zepp Tokyo」のBlu-ray / DVDには、i☆Risとして全国5大都市を巡った1stツアーの最終公演を収録。