コミックナタリー Power Push - 田辺イエロウ「BIRDMEN」

ブラック、レッド、グリーン、ホワイト、ブルー…… タイプの違う中学生5人の成長譚

つばめは烏丸にとっての「女の子」が、概念からリアルになるための存在

実は心の奥に悲しみを秘めていた鷺沢。

──鷺沢くんも徐々に印象が変わってきました。明るく見えて、心の奥に苦しみを秘めている子なんですね。

最初のほうではワケありな様子をわかりやすく匂わせてはいないですが……先を読んでから1巻、2巻を読み直すと、見えなかった表情が見えてくるかもしれません。

──そこが「BIRDMEN」のひとつの楽しみどころですね。個々の事情がわかってきた頃に、「この子、登場したばっかりの頃ってどうだったっけ」と気になって読み返したくなる。

人間は一面だけでは語れないので。背景を知ってからだと印象が変わる、それを意識した描き方はしていますね。

──なるほど。そして5人のうち、紅一点のつばめちゃんは、やっぱり戦隊ものなら女の子は必要だなという意図で?

つばめは第一に、烏丸にとって概念だった「女の子」がリアルになるための存在なんです。

突如家にやってきたつばめに、うろたえる烏丸。

──烏丸は日頃、女子としゃべることすらないわけですもんね。

なので、つばめは少年マンガ的にはすごく重要な子なんです。まあ、彼女の内面や背景の描写はまだ……わざと後回しにしているんですけど。そこが出てくると、もっと大事な役割になってくると思います。

──つばめだけ住んでいるところも遠く、学校も違うのはなぜですか?

それも、烏丸にとっての心理的な距離感とリンクしています。そもそも鴨田以外に友達がいない子でしたからね。いろんな世界がこれから広がっていくので、第一段階は男子メンバー同士の関係から進めていこうと。

能力や設定をロジカルに作り上げていくのが好き

──冒頭、鳥男が都市伝説的な存在として、みんなの口に上っているというのがすごくリアルで引きこまれました。飛び回っている鳥男の動画がネットに上がってしまって騒ぎになるエピソードも現代的で。

鳥男の噂をするクラスメイトたち。

そもそもこの作品でまず描きたかったのは、「黒い羽を持った人たちが飛んでいるシーン」だったので。そういう人が飛んでいる東京をリアルに描けたらいいなと。そんな日常があるかもと思ってもらえるような。「結界師」は異能者の物語だったわけですけど、あの話では異能者とそうじゃない人があまりクロスしなかったんですよ。今回は直接クロスさせていこうと思って話を作っているので、一般の人の反応も描いていこうかなと。

──読み手にとっても臨場感が出ますよね。掲載誌は週刊少年サンデーですが、大人の読者も夢中になれる深みのあるストーリーだと思います。

私としては、子供が読んで面白いかどうかちょっと心配なんですけど(笑)。

──設定は複雑ではありますが、何も知らない烏丸たちが鳥男についてだんだん理解していくのを読み手も同じように進んでいけるので、とてもわかりやすいですよ。

SFというか科学寄りの物語を成立させるためにそれっぽい設定はいろいろ作ってますね。

流されがちな、変身時に服をどうするかという問題にも直面。

──改めて振り返ると「結界師」も、用語の1つひとつにもすごくオリジナリティがあったと思います。技や能力だけでなく、例えばひと言で「異界」といっても作品ならではの定義付けがなされている。

物語の世界を作っていくとき、感覚というより割とロジカルに作るほうだと思いますね。私の性格上、定義付けがはっきりしているほうがイメージしやすいかも。「結界師」のときもそうだったんですが、「BIRDMEN」のほうがさらにその傾向は強くなっているかもしれません。

──能力などに関する設定は、最初からガチッと作り込んでおくのでしょうか。

ざっくり大枠だけ決めておいて、あとは描きながら考えます。でも、最終的に大枠が変わっちゃう可能性もある……みたいな(笑)。最初にあまり作り込んでしまうと連載中に不自由になってしまうこともあるので。

──もともとSF領域、科学などに興味があったのでしょうか。

学生時代、理科や生物はすごく好きでしたね。

──科学者も出てきますし、生物学、心理学などの理屈もすごく説得力があるので、この連載のためにかなり勉強されているのかと思っていました。

一応生物学的な分野の本を読んだり、科学者の先端研究などを紹介するTV番組も観たりはしますが……結局はもちろん私の想像の産物です。

──日々の興味の延長線上からイメージを膨らませて?

そういう感じですね。

田辺イエロウ「BIRDMEN」1巻~6巻 発売中 / 小学館
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あらすじ

中学生の烏丸英司は、鴨田、鷺沢、つばめと共にバス事故に巻き込まれて以来、身体から翼が生える“鳥男”となる。鳥男の先輩・鷹山の指導の下、5人は鳥部を結成。鳥部は生物学者の龍目を仲間に加え、次第にさまざまな能力に目覚める“鳥男”の謎の解明に挑みつつ、特殊な能力を使って活動を広げる。一方、外国にも鳥男が存在した。それらと関係があり、国際遺伝子銀行を併設する学術都市、「EDEN」という組織が鳥部に接近するが……。単調な中学生活から一変、予期せぬ出来事と秘密がいっぱいのSF×青春ジュブナイル!!

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田辺イエロウ(タナベイエロウ)
田辺イエロウ

東京都出身。2000年に「闇の中」で小学館新人コミック大賞少年部門佳作受賞。2002年に少年サンデー特別増刊Rに掲載された「LOST PRINCESS」 でデビューを果たす。2003年に少年サンデー超にて「フェイク」を発表。2003年より週刊少年サンデー(すべて小学館)で「結界師」を初連載する。同作は2006年10月にTVアニメ化されヒット作となり、2007年には第52回小学館漫画賞少年向け部門を受賞した。2013年より週刊少年サンデーにて「BIRDMEN」の連載を開始。単行本は6巻まで刊行中。