コミックナタリー Power Push - 田辺イエロウ「BIRDMEN」

ブラック、レッド、グリーン、ホワイト、ブルー…… タイプの違う中学生5人の成長譚

ハッとするような面白さのある画面をたくさん描きたい!

──「BIRDMEN」はビジュアル的なカッコよさも秀逸だと思います。

アメコミっぽいベタの使い方が好きなんです。ベタが強いのは、最初に聴いた歌のイメージが影響していると思いますが。

「BIRDMEN」の画面はベタが強く、シャープなイメージ。

──空を飛びかうときの黒いシルエットがシャープでカッコいいです。マスクの造型も……。

これも完全にアメコミっぽいですね。

──アメコミは結構、読まれているんでしょうか?

それほどでもないですが、絵の参考のために見ることは多いです。一時期流行った「ヘルボーイ」みたいなベタの使い方が好きで。物語としては……アメコミってSFの割には設定がふわっとしているものが多くて(笑)。そこが私にはちょっと大味に感じることがありますね。自分としてはもうちょっと細部が緻密なほうが好みです。

──ファンタジーにしてもSFにしても「なぜ異能が使えるのか」の理由がはっきりしないものも多いですしそれでも成立しますけど、田辺先生はそこをカッチリやりたいタイプなんですね。「BIRDMEN」は1つひとつの「なぜ」を解いていくミステリ的な側面も読みどころです。烏丸くんにしてもバトルがしたいわけではなく、鳥男としての活動に積極的になるのは「どうにかしたい」「知りたい」が動機ですし。

烏丸のキャラは最初から八方ふさがりで、自分はどこにも行けないと思い込んでるところから始まっている。だからこそ、彼が一番「飛ぶ」必要があった子なんです。

なかなかうまく飛べない烏丸。

──なるほど。先生がマンガを描くときに原動力となるのはどんなことですか?

「BIRDMEN」もそこが重要な出発点になっているんですが、ハッとするような面白い画面を描きたいという気持ちが先にあることが多いんです。「BIRDMEN」では「結界師」のときよりも見開きを多めに使っているんですよ。ビジョンが開ける感じを、セリフでは説明できないような表現ができたらいいなと思っています。

──未知の世界を一枚絵で見せるような?

インパクト勝負というわけではなく、空飛ぶ鳥男の話なので空間を感じさせる画面をたくさん描きたいと思っていて。私はルネ・マグリットが好きなんですが、彼はシュールな作風で有名な画家です。そういう、日常にちょっとした違和感を盛りこんだような画面が好きなんですよね。画面的に違和感のある、面白い絵が描けたらいいなと思います。

──物語を描く上での信条があれば教えてください。

キャラクターはやっぱり大事にしたいです。描いてしまった以上、人格を持った人間だという思いがあるので、1人ひとりおざなりにならないように扱いたい。物語を進めるためにキャラクターを変えちゃうようなことはしたくないので、そこはブレないように。

──読み手としては、どんなキャラクターが好きですか?

割と主人公キャラを好きになるほうなんですが、アウトロー的な主人公が好きな傾向はあります。たとえばブラック・ジャックみたいな。考えてみると烏丸は少年誌的にはけっこうアウトローですね。「結界師」が非常にまっすぐな主人公だったので、その反動かも(笑)。

少年マンガには珍しく、アウトロー的なキャラクターの烏丸。

──少年誌の場合はケンカ上等のヤンキーでも「根はまっすぐ」が王道ですからね。さて……「BIRDMEN」の今後の展開について、差し支えない範囲で教えていただけますか?

ここまでは結構キャラを絞って描いてきたので、後はガーッと出していきます。セラフ(鳥男)がたくさん出てきたりとか……それから割と食えない感じの大人を増やしていこうかなという方針があります。EDEN側かもしれないし、そうじゃない人かもしれないですが。

──登場人物が増えてきて、誰が信頼できるのかわからない緊張感がみなぎっていますよね。そして、結局は5人に、5人それぞれの結末が与えられることになるのでしょうか。

主人公たちは15歳という年齢で……この物語はひとつの通過儀礼のようなイメージで描いているので、何かしらそういう部分は出てくると思います。子どもが大人になるために、誰もが通らなければならない出来事を膨らませた話ってことですね。

──その時期にたまたま「鳥男」が絡まることになったと。

そうですね。だから、遠くない時期に終わりが来るわけです。最終的にどうするかはぼんやり決めています。そこまでをどういう道筋で持っていくかは決めていませんが。そこは話の膨らませ方次第ですが、もったいぶらずにどんどん転がしていこうと思っています。

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田辺イエロウ「BIRDMEN」1巻~6巻 発売中 / 小学館
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あらすじ

中学生の烏丸英司は、鴨田、鷺沢、つばめと共にバス事故に巻き込まれて以来、身体から翼が生える“鳥男”となる。鳥男の先輩・鷹山の指導の下、5人は鳥部を結成。鳥部は生物学者の龍目を仲間に加え、次第にさまざまな能力に目覚める“鳥男”の謎の解明に挑みつつ、特殊な能力を使って活動を広げる。一方、外国にも鳥男が存在した。それらと関係があり、国際遺伝子銀行を併設する学術都市、「EDEN」という組織が鳥部に接近するが……。単調な中学生活から一変、予期せぬ出来事と秘密がいっぱいのSF×青春ジュブナイル!!

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田辺イエロウ(タナベイエロウ)
田辺イエロウ

東京都出身。2000年に「闇の中」で小学館新人コミック大賞少年部門佳作受賞。2002年に少年サンデー特別増刊Rに掲載された「LOST PRINCESS」 でデビューを果たす。2003年に少年サンデー超にて「フェイク」を発表。2003年より週刊少年サンデー(すべて小学館)で「結界師」を初連載する。同作は2006年10月にTVアニメ化されヒット作となり、2007年には第52回小学館漫画賞少年向け部門を受賞した。2013年より週刊少年サンデーにて「BIRDMEN」の連載を開始。単行本は6巻まで刊行中。