恋愛相談役のえりな、弱さを抱えている春雪に共感
──本作の中で感情移入したキャラクターはいましたか?
学生時代はたくさん恋愛をしているタイプではなかったので、リアルに考えるとえりなちゃんなんですよね。周りの子たちが恋愛を謳歌していて、その横で「絶対こうしたほうがいいじゃん!」とか、無責任なアドバイスをする側というか(笑)。えりなちゃんもけっこうノリが軽いじゃないですか? あの感じがリアルだなと思います。
──先ほどの給水ポイントと同じくらい、恋愛マンガに必要なキャラクターですね。えりながゆかりにアドバイスをしているシーンで自分と重なった部分はありますか?
いい感じに連絡を取るにはどうしたらいいか、えりなちゃんがゆかりちゃんにアドバイスしているシーンありましたよね? 私が学生の頃はLINEではなくメールでしたが、送る内容を一緒に考えるみたいなことはよくやっていました。
──返信内容を考えるのがすごくお上手そうです。
恋愛経験がないのにアドバイスをしている奴って感じで、全然でしたよ(笑)。でも今思えば、恋愛を成功に導きたかったというよりも、友達と一緒に試行錯誤しているあの時間が楽しくてやっていたのかもしれません。
──青春時代ならではの時間ですね。本作の登場人物たちは各々複雑な感情を抱えていますが、気持ちの面で共感したキャラクターはいますか?
どのキャラクターもわかるけど、やっぱり春雪ちゃんかな。彼女はツリ目がコンプレックスで、それを隠すためにメイクを勉強したり、陰ながら努力をしてきたんですよ。私はもともと目が一重だったんですけど、アイプチで二重にしないと外出できない!って思っていた時期があったので、彼女を見てすごくリアルだなと感じました。
──容姿を気にしすぎてしまうのは、SNSなどが発達した今の時代ならではかもしれませんね。
春雪ちゃんみたいな子って実際にいそうですよね。一見すると気が強そうに見えるけど、本当は自分に自信がなくて、誰かに認めてほしくて日々がんばっている。そう思うとより春雪ちゃんに共感してしまいます。
──春雪はライバルキャラですが、彼女の嫌な面だけじゃなく、弱さもしっかり描かれているところが本作の魅力ですよね。
なんだか、自分の友達にゆかりちゃんみたいな子はいないけど、春雪ちゃんみたいな子はいるなって思うんですよね。表面上は強く振る舞っているけど、実は弱さを抱えていてみたいな。そう考えると、「スタジオカバナ」は恋愛マンガの王道主人公と、現代の女子のリアルをミックスさせた作品なのかなと感じました。
──確かに。ゆかりに憧れてもなれる自信がないです。
でも、私たちが恋愛マンガに求める主人公はゆかりちゃんみたいな王道タイプで、この存在は絶対に必要なんですよ! マンガに求めるメルヘン要素とリアルの融合みたいな……。このバランスがうまくできている作品だと思います。
ライブシーンは“オスみ”を感じる手に注目
──優助が所属するバンド・the oopsのライブシーンも本作の見どころのひとつです。クラスメイトがバンドのボーカルをやっているというシチュエーションは、エミリンさんの学生時代にもありましたか?
まったくなかったです。それこそ当時は「けいおん!」が流行っていたので、軽音部がある学校ってうらやましいなと思っていたくらいです。今回もthe oopsのライブシーンを読んでいて、やっぱりギターを弾いている姿ってカッコいいなと改めて感じました。あと、優助くんがギターを始める動機が、春雪ちゃんに憧れてっていうのが、すごく健気でかわいいです。
──年上の女性にがんばってアプローチする年下イケメンの姿は、なんだかいじらしいですよね。
そうなんですよ! ゆかりちゃんの視点で見ると“カッコいい優助くん”なんですけど、私たち読者は春雪ちゃんといる時の“かわいい優助くん”も見ているから、なんだかお得感もありますよね(笑)。
──特に印象に残ったライブのシーンはありますか?
文化祭で優助くんがみつるくんと一緒に演奏をするシーン、いいですよね。このマイクを持っている手とか、ギターを演奏しているときの手とか……。あ、私もしかしたら手フェチかもしれないです。男の人特有の手に浮き出る線が好きで、それがちゃんと描かれているのが好感度高いです。
──この線ってなんなんでしょうね。血管でもないですし。
でも、私の手には出てない線なので、この筋を見ると一気に“オスみ”を感じてエロいなーー!と思います(笑)。
リアコするなら?駆け引きはどうする?「スタジオカバナ」で語る恋愛論
──ここから先は、もしもエミリンさんが「スタジオカバナ」の世界にいたらというテーマでお話を伺っていきます。まず、優助みたいなクラスメイトがいたら、どのように接しますか?
けっこう、ゆかりちゃんタイプかもしれないです。わざわざ話しかけに言って反応を見たくなってしまうというか、弄りにいくと思います。優助くんって作中でもすぐ顔を赤らめたり、「やめろよぉ!」とか言ったり、いい反応してくれるじゃないですか。例えるなら、反抗期の息子に接するみたいな感じで話しかけに行くと思います。
──優助は恋愛対象にはならないと。
ならないですね。恋愛感情は湧かないけど、母性本能はすごく湧くと思うんです。もしかしたら「推し」みたいな感覚なのかもしれません。ふいに写真を撮って、もしもブスッとしてたら「何この顔かわいいー!」ってアイドルのブロマイドを見ているような感覚。となると、クラスで話しかけるよりもthe oopsのライブへ行ったりして、ちゃんと推すかもです。
──なるほど。逆に恋に落ちるかもしれないキャラクターを挙げるとするなら?
断然みつるくんです。彼みたいに癖がなくて、まっすぐで優しいタイプって本当に魅力的だなと思います。一緒に居てすごく楽しくて、居心地もよさそうなので、優助くんよりもみつるくんにリアコしそうです。
──boiboi!!というバンドのギター兼リーダーで、ミュージシャンの夢を追うみつるくん。男友達になっても楽しそうなキャラクターですよね。先ほど、エミリンさんは学生時代に友達の恋愛相談に乗っていたお話をされていましたが、もしえりなポジションだったら、ゆかりになんてアドバイスをしますか?
難しいですね。でも、やっぱり素直にまっすぐが一番だと思うので、「変な駆け引きとかしないで、あなたのままでいきなさい!」と言うかもしれません。
──駆け引きをしないというアドバイスは、エミリンさんの実体験からの学びなのでしょうか。
例えば、LINEはあえて返さない、相手に嫉妬させるために男友達と遊んでいる写真をSNSにわざと上げるとか……。恋愛の駆け引きっていろいろあるじゃないですか? 私の友達にそういう駆け引きをがんばって実践している子がいたのですが、結果的に相手からそのまま受け取られてしまって全部裏目に出てしまったんですよね。
──なんと……。でもけっこうやりがちな駆け引きですよね。
LINEの返信が遅いってことは俺に興味ないんだな、とか。仲のいい男性がたくさんいるから俺は脈ナシか、って。もしかしたら男性って意外とそのまま受け取ってしまうのかもしれないですよね。その様子を近くで見ていて、駆け引きってうまく回らなかったときのリスクがでか過ぎる!と感じたんです。だから、駆け引きでリスクを取るくらいなら、まっすぐ自分の思いをぶつけたほうが成功の確率は上がるんじゃない?と思うようになりました。
──確かに、そのほうが後悔も少ないかもしれません。
そうなんですよ。結果がどうなるにせよ、自分を全部出し切ったほうがいいなと大人になってから気づきました。幸いなことに、ゆかりちゃんはまっすぐと進んでくれていますが、もしもここで春雪ちゃんに嫉妬してビジュアルとか内面を寄せにいくようなことがあれば「あなたはあなたのままでいいの! 後悔するよ!」ってすぐに言いに行きます(笑)。
──でも、憧れたり嫉妬している相手に寄せに行ってしまうのもあるあるですよね。
例えば、ゆかりちゃんが春雪ちゃんに憧れて急に巻き髪になるとかね。でも、私たち読者はそのままでいいのに!って思うわけじゃないですか。だから、「スタジオカバナ」を読むと、自分の恋愛を客観視できるかもしれませんね。私はゆかりちゃんタイプなのに、今背伸びして春雪ちゃんみたいになろうとしているとか、その逆も然りですけど。
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もしもエミリンがバンドを結成するなら…