「あとね、うちわ激しくふり散らかす人とか、MCの時、ひとりだけ声張って声援何度も送ってくる子にばっかにファンサせずに、今の私みたいに、きゃあきゃあ言わない子にも、目線送ってあげたり、優しくしなさいよ。これは、ファンサの大事なポイントです」(紗夏香)
自分の気持ちは間違ってなかったと「少年ハリウッド」に教えてもらった
──ほかにも印象的なエピソードやセリフはありますか?
あとは、カケルくんの妹の紗夏香が、カケルくんに言ったセリフが印象的に残っています。
私もライブ中にどうしたらいいか考えることがあって。ライブ会場に来てくださったファンの方全員と目を合わせたいと思うけど、広い会場になるとそれは難しいし、対バンになるとA応Pに興味がない人もたくさんいるわけで。その人たちも笑顔にしたいって気持ちでライブをしたほうがいいのかなと思っていても、最後まで笑顔にしてあげられないまま終わってしまうことも多かったので、それだったら私に対して全力で応援してくれる人を見たほうがいいのか、悩んでいたんです。だけどこの紗夏香の言葉を聞いて、「やっぱそうだよね」と気付いて。ニコニコしながらライブを観る人もいれば、恥ずかしい気持ちを抱えながら、がんばって会いに来てくれた人もいるかもしれない。だから、どんな人の心も笑顔にできるくらいのパフォーマンスをできるように私ががんばらないとダメなんだって、その気持ちは間違ってないよって、「少年ハリウッド」に教えてもらえたなと思ったんです。……(涙ぐみながら)あー、泣きそう。私、「少ハリ」の話をするとすぐ泣くんですよ(笑)。
──あはは(笑)。でも本当に、いくら真顔でライブを観ていても、その人がどれだけ楽しんでいるかなんて、心の中まではわからないですもんね。そうやって「少年ハリウッド」で感じたものが、ご自身の活動にも活かされているんですね。
もう、活かされまくってます。紗夏香の言葉を聞いて、どんな人にも気持ちが届くというのを信じてやっていくことが大事なんだって改めて思いました。ほかにも話したいこと山ほどあるんですけど、いいですか?(笑)
──はい(笑)。聞きたいです。
永遠にアイドルでいる方法
第3話で、トミーが初代少年ハリウッドの合宿の映像を観るシーンがありますよね。その映像の中で、トミーの憧れである初代少年ハリウッドのトミー先輩が、「ずっとみんなと一緒にいたい。ずーっとみんなと、歌って踊って、ずっと少年ハリウッドでいたいな」って笑顔で語っているけど、トミーはそれが叶ってないことに気付いて、テッシーにも「永遠にアイドルは無理なんですよ」と諭すように言われてしまう。その後、第17話「僕は君のアイドルだから」で、トミーはTVドラマへの出演が決まり、トミー先輩と共演することになる。その中で憧れのトミー先輩に「一生アイドルでいるのは無理なんだよ。人は、いつまでも同じままじゃいられないんだ」と、改めて現実を突きつけられてしまうんですよね。でも、後日トミーはトミー先輩にこう言うんです。
それを受けたトミー先輩が、「君がずっとアイドルでいられるよう、僕も応援するよ。だって僕は、君のアイドルだからね」「君がいるから、僕もかろうじてまだ自分のことアイドルって言っていいかなって」と返して、トミーが「トミー先輩は、僕の永遠のアイドルです!」と改めて言うんですよね。このシーンを観て、永遠にアイドルでいる方法を、トミーがトミー先輩に教えてあげたんだと思ったんです。大人になって、永遠にアイドルでい続けることは無理だと悟ってしまったトミー先輩が、今まさにアイドルとしてがんばるトミーに「僕の永遠のアイドルです」と言われて、「僕もまだアイドルだったんだ」と気付くっていう……(涙が溢れる)。
──アイドルとして活動していなくても、誰かの心の中でアイドルとして輝き続けていたら、それは“永遠のアイドル”なわけですよね。
そうなんです! 誰かの心でずっと輝き続けていれば、その人はおじいちゃんになってもおばあちゃんになっても、永遠にアイドルでい続けることができるんだなって。私もずっとキラキラしているのは無理かもしれないし、いつかはおばあちゃんにもなるけれど、永遠のキラキラをファンの人の心に残せるぐらいの人になりたいなと思ってライブをするようになりましたし、握手をするようになりました。
アイドルは神様的存在でいないといけない
──「少年ハリウッド」には、よく「永遠」という言葉が出てきますよね。
「永遠」って、簡単に言えてしまう言葉だし、あんまりいい言葉だとも思っていなかったんですけど、「少年ハリウッド」を観てから「永遠」という言葉の意味を考えるようになって、その言葉の本質を教えてもらえた気がします。「ずっと応援しているよ」「広瀬さんのこと、永遠に大好きです」って言ってくださるファンの方もいますけど、その1年後に推し変されたからといって「ああ、永遠って言ってたあの言葉は嘘だったんだ」と思うのではなく、その人がそのときに持っているありったけの永遠をくれたんだなって思うようになりました。だから私も、「あなたが今くれた永遠を私は大事にするね」という気持ちで受け取るようになって。言葉の受け取り方も「少ハリ」を観て変わりましたね。
──実在のアイドルも、どんなに活動が続いていくと思ったグループやメンバーでも、卒業や解散、引退していく姿を見ますし、そういう意味でも「少ハリ」の中で繰り返し出てくる「永遠」という言葉に、アイドルとは何かというのを考えさせられます。
そもそも、アイドルアニメで「永遠にアイドルは無理です」なんて、なかなか言わないじゃないですか。でも少年ハリウッドは歌詞の中でも「時計の針 痛み連れてきても」と歌っているし、作中でシャチョウも「アイドルは消費されるものだ」と言い続けている。そういう意味では、トミーがドラマに出たことに対して、トミー先輩が「君には武器がある。アイドルっていう武器だよ。大した演技力もないくせに、運が良ければドラマや映画にポーンと出られたりするもんね」と言ってしまうことにも衝撃を受けました。
──キラキラしているだけではない、現実を突きつけてきますよね。「アイドルは生贄」なんて言葉も、なかなか出てくる言葉ではないなと思います。
そうそう、最初はそれも意味がわからなかったです。
──アイドルの人たちは10代や20代のときから、なんにだってなれる、なんでもできるその時間のすべてを、部活動や恋愛、学生生活に使うのではなく、ファンのためにステージに立つ時間、パフォーマンスを磨く時間に使っているわけですもんね。それは確かに“生贄”という言葉に当てはまるように思えます。
そう。「生贄がいつか神になることはあるんだろうか」ってカケルくんが言ってましたけど、アイドルとしての正しい在り方って、やっぱりアイドル(idol=偶像)という言葉の通り、神様的な存在じゃなきゃいけないと思うんです。神様って誰の近くにもいる。でも、近くて遠いのが神様じゃないですか。
──存在を信じていなくても、困ったときに思わず「神様、助けてください」と願ってしまうような、心の中にいる神様。
そうです、そうです。それって神様を身近に感じているから言えることだけれど、神様が見える人なんていないわけで。でも誰かの心には絶対いるんですよね。その神様的な存在になるのが、友達でもなく恋人でもなく家族でもなく、アイドルなんだなと。だから、私も誰かにとっての神様的存在になりたいなって、「少年ハリウッド」を観て思いました。
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失わないと気付けなかった、センターに立ちたいという強い思い