今年で創刊50周年を迎える小学館の少女マンガ誌・Sho-Comi。これを記念し、コミックナタリーでは全10回にわたる連載企画を展開している。第4回には池山田剛が登場。「GET LOVE!! ~フィールドの王子さま~」「好きです鈴木くん!!」など、小柄でかわいい男の子が活躍する作品でヒットを飛ばし、2017年にデビュー15周年の節目を迎えた池山田。最新作「同・級・生!!」ではこれまでになかった王道の初恋ストーリーに挑戦している。そんな池山田に、Sho-Comiの思い出からデビューまでの道のり、さらに人気作の創作秘話について聞いた。
取材・文 / 的場容子
ちゃおを入り口にSho-Comiへ
──Sho-Comiとはどのような出会いだったのでしょうか。
まず、少女マンガの入り口はちゃお(小学館)でした。たまたま買ったときに、ちゃおで赤石路代先生が「天よりも星よりも」という転生ものの連載をされていて、「なんてすごい作品なんだ……!」と衝撃を受けたんです。ちゃおにはよくSho-Comiの広告が載っていて、そこですぎ恵美子先生を知りました。当時は「ちょっとオトナっぽい雑誌だな、でも、なんだか気になる」と思っていました(笑)。
──そこからSho-Comiへの興味が湧いて。
そうですね。Sho-Comiの単行本を初めて買ったのは、小学校4年生くらいのときでした。本屋さんに行ったら、北川みゆき先生の「あのこにWAWAWA」という、カバーがすごくかわいい単行本を見つけて。ちょっと“お姉さん”なマンガだけど読んでみたくて、そこで初めてSho-Comiの単行本を買いました。北川先生の新連載がSho-Comiで始まるというのを知って「これは買わなきゃ!」と雑誌も買うようになったんです。
──水瀬藍先生も第3回のインタビューで、北川先生やすぎ先生の作品からSho-Comiに夢中になったとお話しされていました(参照:Sho-Comi50周年特集 第3回 水瀬藍インタビュー)。
同世代ですね(笑)。そのときはほかにも篠原千絵先生の「海の闇、月の影」など、めちゃくちゃ面白い作品がたくさん載っていたので、いろんな先生の単行本を買うようになりました。
少年誌の“かわいい女の子”に憧れて
──自分でもイラストをやマンガを描き始めたのは、その頃ですか?
もともと絵を描くことは好きだったので、もっと小さい頃から描いていました。実は父が出版系の会社に勤務していたので、マンガ誌がいつも身近にあって、子どものときからマンガが大好きだったんです。少女マンガだけでなく、少年誌や青年誌も読んでいました。青年誌といえば、幼稚園児のときに「デビルマン」(永井豪)を読んで、いまだにトラウマなんです。1回しか読んでいないのですが、ラストシーンが忘れられない。「一番怖いのは人間だな」って思いました。でも、不朽の名作だと思います。
──少年誌や青年誌というと、池山田先生の作品はとにかくノリがよく、確かに少年マンガっぽいところがあるように思います。
週刊少年マガジン(講談社)や週刊少年ジャンプ(集英社)で育ったので、基本的に少年マンガが好きなんだと思います。少女マンガは高校生くらいのときに一度読まなくなる時期があったのですが、少年マンガ誌はずっと読んでいて、ジャンプは今でも読んでいます。少年マンガの女の子って、すごくかわいくないですか?
──少女マンガのヒロインと少年マンガのヒロインとでは、また違ったかわいらしさがありますよね。池山田先生の描くかわいらしいヒロインの原点は、少年マンガにあるのでしょうか。
そうですね。私自身は、マンガはどちらかというと女の子の目線よりも、男の子の目線で読んでしまいます。ヒロインがモテモテで男の子の間で揺れ動く姿を見ていると、少女マンガはそこが醍醐味でもあるのですが、「フラフラしすぎ!」って突っ込みたくなるときがあるんです(笑)。自分の作品に対しても「ちょっとモテすぎじゃない?」と、ついついヒロインに対して厳しめになってしまいがちなので、そこのバランスは担当さんに注意して見てもらっています。
──作品の投稿は最初からSho-Comiにしていたのでしょうか?
自分がどの雑誌に合っているのかわからなくて、いろんな雑誌にいろんな作風で投稿していました。ですがどこにも引っかからなくて。それで、最後に少女マンガらしいものを描いて出してみようと思って投稿した雑誌がSho-Comiでした。これでダメだったらスッパリと諦めて就職活動をしようと思っていたときに連絡をくださったのが、現在の担当でもある編集さんなんです。ホントに首の皮1枚つながった、という感じでした。その後担当編集としてついていただいて、アドバイスをもらって描いた作品でデビューできたので、感謝しています。
担当編集 池山田先生は投稿作から段違いのパワーがありましたね。とにかく元気でした。
今の担当さんはデビューから「萌えカレ!!」の頃まで担当編集としてついてくださって、その後何名か担当の交代があったのですが、デビュー15周年を経て「同・級・生‼」からは再びタッグを組むことになりました。
どの作品にも必ず1つは自分自身の“萌え”を入れる
──連載第2回のインタビューで、佐野愛莉先生が「かわいいのにカッコいい男の子がいるっていうのを『GET LOVE!!』で初めて知った」とお話しされていましたが(参照:Sho-Comi50周年特集 第2回 佐野愛莉インタビュー)、池山田先生はSho-Comiの“かわいい系男子”という新たな路線を切り拓いていったように感じます。
私がデビューした頃のSho-Comiは、新條まゆ先生と水波風南先生が2大巨塔で、大人っぽくカッコいい男子が出てくる作品が人気でした。でも私はおふたりのような色っぽくてカッコいい男子を描ける自信がなかったので、担当さんといろいろ相談して、かわいい系の男子に挑戦することにしたんです。他誌ですが、例えばジャンプだと「幽☆遊☆白書」(冨樫義博)の飛影くん、少女マンガだと花とゆめ(白泉社)で山田南平先生が描かれていた小さい男の子が人気だったので、必ず需要があると思っていて。当時のSho-Comiにはまだそういう男子はいなかったので、「やってみよう!」となったんです。担当さんも「人と同じことをやっていても勝てないよね」と言ってくれる方で、私と同じ気持ちでいてくれました。実は当時の編集長には「Sho-Comiらしい、大人っぽい男子を描いてほしい」と言われたのですが、担当さんも折れないでいてくださったのと、私もやっぱりこっちを描きたいという思いがあり、続けさせてもらったら読者の方からも意外と好感触だったんです。そうするうちに編集長も認めてくれたようです。私自身、そのほうが絵柄的に描きやすいというのと、好きだった少年マンガの影響も大きかったのかもしれないですね。
──確かに少年マンガのヒーローには、丸っこくてかわいらしい男の子も多いです。読者の新たな需要を想像しながら方向性を決めていたのですね。
はい、みんなが好きなものや流行も意識します。ただ、どの作品にも必ず1つは自分自身の“萌え”を入れようと思っていて。例えば「小林が可愛すぎてツライっ!!」 (以下「こばかわ」)のときは眼帯キャラにハマっていたので、「ヒーローは眼帯男子じゃないと描けません!」と主張したのですが、当時の担当さんにすごく反対されたんです(笑)。反対なさる気持ちも痛いほどわかったのですが、「だがしかし、眼帯がないと描けない! それさえ描かせてくれればあとはなんでも描きます!」と押し切りました(笑)。
──「こばかわ」の蒼くん誕生の裏には、そんな経緯があったのですね(笑)。
はい。どの作品も必ず1つだけは自分の好きなものを入れさせていただいて、そこからSho-Comiに寄せていっています。
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「GET LOVE!!」「鈴木くん」の男子キャラの原点は?
- 「Sho-Comi 2018年19号」
- 発売中 / 小学館
- 池山田剛「同・級・生!!②」
- 発売中 / 小学館
- 池山田剛(イケヤマダゴウ)
- 5月25日生まれの双子座。宮城県仙台市生まれ。育ったのは主に横浜市。少女コミック2002年15号(小学館)に掲載された「GET GOAL!!」でデビュー。「GET LOVE!! ~フィールドの王子さま~」「萌えカレ!!」は200万部、「好きです鈴木くん!!」は550万部、「小林が可愛すぎてツライっ!!」は300万部を突破するなどヒットを記録している。
2018年12月20日更新