小学館の少女マンガ誌・Sho-Comiは、今年で創刊50周年。コミックナタリーではこれを記念し、全10回にわたる連載企画を展開している。第3回には「なみだうさぎ~制服の片想い~」「ハチミツにはつこい」の水瀬藍が登場。ピュアでまっすぐなヒロインが初めて恋を知っていくという、少女マンガの“王道”をいく堂々たる作風で多くのファンを獲得している水瀬だが、2017年からはこれまでの作風と比べると異色とも言える、重病の少女が初めて恋を経験する物語「きっと愛だから、いらない」を連載中だ。そんな水瀬にSho-Comiと出会ったきっかけから、創作方法のこだわり、読者との触れ合いについて聞いた。

取材・文 / 的場容子

兄とともにハマった「闇のパープル・アイ」

──Sho-Comiで水瀬先生がお好きだった作品はなんでしょうか。

初めてSho-Comiに触れたのは、篠原千絵先生の「闇のパープル・アイ」でした。本屋さんでたまたま1巻を手にとって、それがすごく面白くて。そのときはまだ小さかったので、自分では続きを買えなかったのですが、5つ上の兄も続きが読みたすぎて我慢ができなかったみたいで、全巻買ってくれたんです。

──入り口は「パープル・アイ」だったのですね。男女問わず面白く読める壮大な物語で、お兄さんがハマられたのも納得です。

そこから全巻読めたことでますますハマって、「これはどこに載ってるんだろう?」と調べたら少コミ(現Sho-Comi)でした。雑誌を手に取ってみたら、北川みゆき先生やすぎ恵美子先生の作品など、すごくかわいらしい絵で紡がれるキュンキュンするお話が載っていて。そこからSho-Comiに夢中になりました。

──1980年代後半、Sho-Comi黄金時代のひとつですよね。

そうなんです。さいとうちほ先生の作品や藤田和子先生の「真コール!」も大好きでした。ちょうどハマり始めた頃、Sho-Comiが25周年のお祝いイベントを全国でやっていたので、一生懸命足を運んでましたね。だから、まさか50周年で自分が作家側にいるとは……。

──運命的ですね。篠原千絵先生の描く男の子キャラは魅力的だと思いますが、水瀬さんもそこにドキドキされていたのでしょうか?

それもあるのですが、私はヒロインのほうが好きでしたね。ヒロインの倫子がつらい立場ながらもすごくがんばっている姿に胸を打たれました。幼なじみの恋人・慎也との間にある障壁もすごく大きくて、応援してるのになかなか2人はうまくいかない。何度読んでも慎也が死んじゃうんです。次に読むときは「もしかしたら、死なないんじゃないかな?」って思って読むんですけど、「やっぱり死んだー!」って(笑)。篠原先生の作品だと「海の闇、月の影」も夢中になりました。マンガの世界に入り込んで読むというのは、たぶん篠原先生の作品で初めて経験しました。

そこにマンガがあればなんでも読む“マンガ少女”時代

──そのほかに思い出の作品はありますか?

北川先生の「あのこに1000%」ですね。北川先生と出会った最初の作品です。そこからほかの作品も読むようになって、そうしているうちに高田りえ先生がデビューされました。実は、マンガ家の先生にファンレターを送って、初めてお返事をいただけたのが高田先生なんです。そのあと渡瀬悠宇先生もデビューされ、「ふしぎ遊戯」が大好きになりました。

──私も大好きです。「ふしぎ遊戯」もですが、Sho-Comiには小中学生が読むにはシリアスな展開や男女のドキドキするシーンがたくさんありましたよね。

ドキドキしましたよね。でも私は兄がいたこともあって、Sho-Comi以外にも月刊少年ジャンプ(集英社)や(週刊ビッグコミック)スピリッツ(小学館)、ヤンマガ(ヤングマガジン・講談社)とかも読んでいて。エレガンスイブ(秋田書店)があればそれも読んでいましたし、とにかくマンガがそこにあれば、なんでも読む感じだったんです。なのでシリアスな展開やドキドキする展開もすんなり受け入れていました。

──かなりハイブリッドですね。

でも、王道を読んできたかと言われると、そこからはちょっと外れていたかもしれないです。

クラス内に“ミニ小学館”が……!

──好きな作品に影響を受けて、自分でも描き始めたいと思われたのは、その頃からでしょうか。

ペンやインクを買って、初めてペン入れをしてイラストを真似したのは、赤石路代先生の「天よりも星よりも」だったと思います。そのあと、篠原先生や北川先生の影響でマンガを描くようになったんですが、そのマンガを勝手にクラスの学級文庫に入れる、ということをしていました(笑)。ペン入れをしたりトーンを使ったりという本格的なマンガではなく鉛筆で描いたものですが、クラスのみんなに読んでもらおうと思って、描いて綴じて、表紙を付けて、たまに鉛筆消しゴムの付録や懸賞、カラーページも付けたりして、勝手に連載してましたね(笑)。そのうち「私も描く!」ってみんなが言い始めて、最終的にはクラスの3分の2くらいの女子がマンガを描くようになって。作家が増えすぎたので、雑誌も何種類か出るようになっていました。

──まるで学級内の“ミニ小学館”ですね!

(笑)。そのときは作家としてみんなライバルで、バチバチしていましたね。「あの人、2本連載始めたんだって」「私も負けてられない!」みたいな(笑)。実は、そのときに描いていた同級生の1人も、他社でマンガ家デビューしてるんです。

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水瀬藍(ミナセアイ)
水瀬藍
6月3日生まれのふたご座。血液型はB型。広島県出身。デビュー作は少女コミック増刊2006年10月15日号(小学館)に掲載された「Mistake!」。「なみだうさぎ~制服の片想い~」で200万部、「ハチミツにはつこい」で250万部を突破したピュアラブストーリーの名手。

2018年12月20日更新