「GET LOVE!!」「鈴木くん」の男子キャラの原点は?

──そうすると、「好きです鈴木くん‼」(以下「鈴木くん」)における池山田先生の萌えは、どのあたりにあったのでしょうか。

私の好きなアニメで、地味で小さな男の子が、成長して心も体もイケメンになっていくというストーリーのものがあるんですが、その成長過程がたまらなく魅力的で「こんなに面白い作品があるんだ!」とハマったんです。「鈴木くん」の輝もはじめは背が小さくて元気だけが取り柄だったんですが、だんだん成長して一人前の立派な男子になるというのは、その作品から影響を受けていますね。

2008年から2012年まで連載された「好きです鈴木くん!!」より、鈴木輝。

──男の子が成長して想像もつかないようなイケメンになる、というのは女子の夢のひとつですよね。男子キャラに関しては、ほかにどんなことを意識しながら描かれているのでしょうか。

描き続けている中で変わってきた部分もあるのですが、「男の子は信念を持った子にしよう」とか「あまり女の子の間でフラフラ揺れ動く子はやめよう」とか、特に最初の頃はヒロインよりも男の子を大事に描いてきた部分はあったのかもしれません。ちなみに男子キャラに関しては、Sho-Comi作品ではないのですが、中学校のときに聖千秋先生の「イキにやろうぜイキによ」を読んで、そこに登場する峻平ちゃんという男の子に強烈に惹かれました。その子は最初は背も小さくてひょろひょろで、誰からも見向きされないのですが、学園で一番人気のある美人の女の子・苫子さんだけが彼にひと目惚れをするんです。誰に言い寄られてもなびかなかった苫子さんだけが峻平ちゃんのよさを見抜いて、「ほらね、私は見る目があったでしょ」となるハッピーエンドのお話なのですが、この峻平ちゃんが人としてすごくカッコいいんです。マンガを描くときは、そんな峻平ちゃんが常に心の中にいる気がします。「GET LOVE!! ~フィールドの王子さま~」の相楽も、もとを正せば峻平ちゃんに行き着くのかもしれません。

──相楽くんの原点はそこにあったんですね。

佐野愛莉先生がインタビューで「相楽をきっかけにかわいいのにカッコいい男の子に目覚めた」とおっしゃってくださってすごくうれしかったのですが、実は相楽の原点は峻平ちゃんにあるんです(笑)。

2003年から2004年にかけて発表された「GET LOVE!! ~フィールドの王子さま~」より。

担当編集 池山田先生の描く男キャラって、単にカッコいいだけではなく、みんな人としてちゃんとしていますよね。

だからこそ、常識はずれなことができなくて、思いっきり型破りな面白い男が描けないんですかね……。

──いえ、「うわさの翠くん!!」(以下、「翠くん」)の司は少女マンガでは稀に見る型破りなキャラだと思います。第1話からヒロインの翠と大変なことになり、びっくりさせられました。

ありがとうございます(笑)。

ジェットコースターのような怒涛の展開で読者を惹きつけたい

──池山田先生の作品は、ヒロインも元気でかわいく、かつギャグも全力でやってくれるところに魅力を感じます。ヒロインが元気いっぱいなのは、読者も一緒に元気になってほしいという思いがあるのでしょうか。

実は、ヒロインが元気のない回は、読者さんからのアンケートもわかりやすく沈むんです。Sho-Comiは若い読者さんが多い分、ヒロインの気持ちがそのまま読者さんに伝わるみたいなので、ヒロインはできるだけ明るくしよう、あんまり落ち込ませないようにしようと心がけているんです。

──なるほど。「鈴木くん」や「こばかわ」では、ヒロインたちがかなりつらい目に遭う場面もありますよね。池山田先生の作品における“試練”にはどんな意味があるのでしょうか。

「好きです鈴木くん!!」より。とある事情からヒロインの星野爽歌は記憶喪失となってしまう。

もともと私は日常のドキドキとか、小さなときめきみたいな情緒的なものを上手に描けるタイプではないので、勢いやヒキの強さで読者さんの気を惹かねば、と思っていまして……。だからとにかくジェットコースターのように、「次はどうなる!?」と毎回激しく展開して読者さんを惹きつけたいと思って。特に「鈴木くん」や「こばかわ」くらいまではヒキの強さを大事に描いていたので、キャラたちに降りかかる試練もハードなものになったんだと思います。

担当編集 そのドライブ感がすごく大事で、それができる人はあんまりいないんです。すごい才能ですよ。

ゴールを決めないと描けないタイプなのでそこは決めますが、全体のテーマは「最終的にこういう感じになるといいな」という、ふわっとしたもので走り出し、読者さんが最終話を読み終わったときに「こういうテーマだったのかな?」とそれぞれ感じてくれればそれでいいと思っています。

「同・級・生!!」は王道的な描写を描いていきたい

──最新作として連載中の「同・級・生!!」は、ヒロインの朱純が結婚式を挙げるシーンから幕を開け、そこから朱純がどのように夫となる人物と出会い、結ばれたかというお話が語られていきます。ここしばらく、芸能界や女装・男装といった非日常を描かれることの多かった池山田先生としては新たな試みのように感じました。

はい。「同・級・生‼」は、逆に今まで描いてこなかった王道的な描写を描いていこうと思って始めたので、非日常ではなく、日常で起こり得る範囲での話にしようと思っています。今回再びついてくださっている担当編集さんは、ベツコミ編集部やちゃお編集部にいたとき、日常の中のときめきを大事にする作品を担当されたことがある方なので、いろいろとアドバイスをいただいています。

「同・級・生!!」より。内気なヒロイン・朱純と、優しい性格の大路真聖(おおじまなと)、ぶっきらぼうな桜士勇飛(おうじゆうひ)の2人の“王子”による思いが絡み合っていく。

──デビュー時の担当さんがさまざまな作品を経て池山田先生のもとに戻って来られて、その経験を活かして再び一緒に作品を作られているということに、胸が熱くなります。

私も本当にありがたく思っています。私も作品づくりに関しては「これが描きたい!」と主張するなど頑固なところもあるのですが、担当さんに相談してさまざまな意見やその裏付けなどを聞くと、理解したうえで素直に取り組めたりもするのでとても助けられています。

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池山田剛(イケヤマダゴウ)
池山田剛
5月25日生まれの双子座。宮城県仙台市生まれ。育ったのは主に横浜市。少女コミック2002年15号(小学館)に掲載された「GET GOAL!!」でデビュー。「GET LOVE!! ~フィールドの王子さま~」「萌えカレ!!」は200万部、「好きです鈴木くん!!」は550万部、「小林が可愛すぎてツライっ!!」は300万部を突破するなどヒットを記録している。

2018年12月20日更新