応援してもらえるよう、忍の中学生時代はちょっと不憫キャラに描いた

──今までに印象に残ったファンレターには、どんなものがありますか。

やっぱり、デビュー作が載ったときに最初にもらったものがいまだにうれしいですね。クレヨンで相楽のイラストと「さがらくん」と描いて送ってくれた女の子がいて。自分のマンガの絵を描いてもらったのはそれが初めてだったので、感動して今もそのファンレターはいつでもすぐ出せるような場所に置いてあります。特にデビュー初期の頃にもらったファンレターは、初心というか、このときの喜びを絶対忘れないようにしようと思ってずっと大切にしています。送ってくれたその子もきっと30歳くらいになっているはずですが、いつ見返してもうれしいですね。

──大きくなったその女の子も、このインタビューを読んでいてくれるとうれしいですね。ちなみに、今まで予想以上に人気が出たキャラはいますか?

“意外に人気が出たキャラ”というと、「鈴木くん」の男性キャラ2番手の忍でしょうか。「鈴木くん」までは、「萌えカレ!!」や「翠くん」など、ずっと三角関係ものを描いていたのですが、これだとメインの2人がくっついたあと、最後に余った人が「かわいそう!」と思い、「鈴木くん」で初めて4人の群像劇に挑戦したんです。その中でもメインキャラの輝に恋するも報われない幼なじみで、女性キャラ2番手のちひろには苦心しました。読者さんに嫌われないよう、とにかく1番手の爽歌のライバルにならないよう、爽歌より健気に描いて、なんとか4人とも読者さんに好きになってもらおうと。そうしないと、輝と爽歌以外の回は読んでいてキツいだろうと思ったんです。できれば、ちひろに惚れる2番手キャラの忍も人気が出てくれるといいなと思いながら描いていたのですが、物語も終盤になってくると、ちひろと忍の結ばれた回も反響が大きくて「ちひろも忍も人気が出てよかったー」と、ホッとしました。

「好きです鈴木くん!!」より、爽歌、輝、ちひろ、忍の4人の恋が動き出すシーン。

──忍のツンデレだけど一途で、ちひろの一挙一投足にいちいちオーバーリアクションするところはすごくかわいいと思います。

忍は描きやすかったです。輝はやっぱり正統派ヒーローなので、道を踏み外してはいけないという側面があったのですが、忍だと「もうちょっと遊んでいいかな」と、自由度が高いキャラなので楽しくて。ただ、ちひろへの思いがなかなか報われないので、読者さんにも「応援してあげたい」と思ってもらえるような、不憫な不器用男子として描きました。「絶対あとで幸せにするから、みんなもうちょっと待っててね……!」と思いながら、幸せになるまでの助走期間として描いたので、好きになってもらえてよかったです。アシスタントさんにも「忍になんてひどいことをするんだ!」と言われていましたが、「絶対最後幸せになるから! より高く跳ぶために、今はかがんでいる最中だから……!」って説得して描いていました。

──そうすると、「同・級・生‼」は「翠くん」以来の三角関係ものですね。

実は今回も結末は決まっていて、もしかしたら勘のいい読者さんには主人公の朱純が真聖と勇飛、どちらと幸せになるか気付かれているかもしれないのですが、「どっちとくっつくのかな!?」と、少しでもドキドキしてもらえるとうれしいです。

Sho-Comiの作家さんは負けん気の強さと根性がトップクラス

──2017年にデビュー15周年を迎えられた池山田先生が思う、Sho-Comiのよさはどんなところでしょうか?

とにかくSho-Comiの作家さんはやる気と根性がありますよね。作品を見ていると、どの先生もものすごく絵がきれいで、2週間でどうやってここまでのものを描いているのだろう?とびっくりします。昔は連載作家さんが1号につき2本立てで作品を発表する機会も多くて、そうなると1号あたり70ページくらい描くことになるのですが、誰も断らないんです(笑)。Sho-Comiの作家さんは、負けん気の強さと根性がトップクラスなのではと思います。

──雑誌を通していい緊張感、ライバル関係が築かれており、それが個々の作品の質を上げているのかもしれませんね。

はい。2週間ですごいクオリティのものが出てくるから「皆さん、いつ寝てるんだろう?」と思います。私は少年マンガみたいな絵の描き方なので、キャラの瞳の部分も塗りつぶしているのですが、少女マンガだと、瞳の中にカケアミを描いたりトーンを貼る方も多いので、そんなものすごく細かい作業をしながらの隔週連載って、どうやったらできるんだろうと不思議です……!

「同・級・生!!」第1話の扉イラスト。

──Sho-Comiは隔週発売なので体力勝負だとほかの作家さんもおっしゃっていました。それでは最後にSho-Comiの読者にメッセージをいただけますか。

だんだん歳を取ってくるとお母さんみたいな目線になってくるので(笑)、読者さんには「皆さん幸せになってほしい」と思いますね。世の中が殺伐としているので、優しい幸せな世界になってくれることを望んでいます。それと、今回は50周年ですが、マンガの歴史を背負っている雑誌なので、100周年をお祝いできるよう読者の皆さんにはずっと応援してほしいなと思います。

──親子2代で読んでいる方もいますから、それも3代、4代と続いていくといいですよね。

本当にそうですね。80年代の作品も大好きなので、Sho-Comiの歴史をまとめた年表を懐かしい思いで眺めていました。私の作品も入れていただいたのを見て、改めてすごくうれしかったです。私にとって神様のように大好きな先生方と同じ雑誌に描かせていただいて、本当にありがたい気持ちです。この年表がもっと伸びて100年の歴史を刻めるよう、これからもがんばりたいと思います。

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池山田剛
5月25日生まれの双子座。宮城県仙台市生まれ。育ったのは主に横浜市。少女コミック2002年15号(小学館)に掲載された「GET GOAL!!」でデビュー。「GET LOVE!! ~フィールドの王子さま~」「萌えカレ!!」は200万部、「好きです鈴木くん!!」は550万部、「小林が可愛すぎてツライっ!!」は300万部を突破するなどヒットを記録している。

2018年12月20日更新