コミックナタリー Power Push - パタリロ!
“人間には無理”だと思われていた「パタリロ!」が舞台化!魔夜峰央と加藤諒が耽美かつ華麗に逢瀬
「ここでやめてもいいのかな」と思うエピソードもあった(魔夜)
──先生にとって、「パタリロ!」を描き続けてこられたモチベーションはどこにあるんでしょうか。
魔夜 パタリロはね、楽なんですよ。勝手に動いてくれるから。ほかにもいろいろな連載をやってきましたけど、主人公がなかなか動いてくれないんです。最初の2、3ページ描くとわかっちゃう。それでも、なんとか1冊分は主人公の背中を押してまとめるんだけど、パタリロだけはいつまでもポーンと走っていきますからね。
加藤 ここまで長く続くと思ってました?
魔夜 思ってなかったですねえ。何にも考えてないから。ただ、連載を始めた頃は、編集長と「とりあえず10巻目指そう」とは話してましたね。それで10巻を超えたときには、「がきデカ」(山上たつひこ)が26巻まで出てたので26巻を目指そうと変わり、その次は「サザエさん」(長谷川町子)の60巻を目指そう、となって、ここまで来た。
──じゃあ今は100巻が目標でしょうか?
魔夜 一応はね。がんばってるというほどではないです。
加藤 「こち亀(こちら葛飾区亀有公園前派出所)」は200巻ですよね。
魔夜 まだまだ上には上がいるから、楽なんですよ。自分ひとりでこれだけ続けるのは大変だけど、あそこまでいっている人たちがいるから、できるかもしれないなと思える。「ゴルゴ13」なんて絶対終わらないでしょ!
加藤 あははは(笑)。
──これまで連載をしているなかで、「ここで終わったら美しいんじゃないか」と思ったことはないんですか?
魔夜 1話だけありましたね。パタリロが太陽に突っ込んでいくやつ。あれ、何ていう話だったっけ。
娘 世界を救うために突っ込む……。45巻の「言葉の問題」じゃないかな。
魔夜 そうだそうだ。当時「パタリロ!」が花とゆめから別冊花とゆめに移籍することになったんです。描いている側としてはね、「ここでやめてもいいのかな」という感じもあって、それでパタリロを太陽に突っ込ませたんですよ。ほら、「鉄腕アトム」も「サイボーグ009」も、みんな太陽や大気圏に突っ込んでるし。それで最終回にしようと思ったんだけど、途中で気が変わってね。やっぱり続けようと思って、結局パタリロも太陽から無理やり戻ってきちゃったの。
──気が変わってよかった! でもすごく「パタリロ!」らしいエピソードですね。
「FLY ME TO THE MOON」は狙ってた(魔夜)
──先ほど「60%でいい」という話がありましたが、先生がマンガを描くうえで、ほかに大切にしていることはありますか?
魔夜 意識しているのはハッピーエンドですね。基本的に楽しく終わればそれでいいかなと。
──それでも「パタリロ!」の中には、時折しみじみと終わる話もありますよね。今Webで公開されている「FLY ME TO THE MOON」なども、美しいけど悲しい話です。ハッピーエンドにならないのは、どういうときなんでしょう?
魔夜 狙ったときですね。僕は基本的にネームを作りませんが、「FLY ME TO THE MOON」のように泣かせるタイプの話はネームを作って考えて描いています。それで計算通り皆さんに泣いていただければ、「してやったり」という。でもね、パタリロが悲しんだりしんみりしているときっていうのも、そもそも芝居しているだけですからね。パタリロは本質的にそういうキャラではないから。
──すっかり騙されていました!
加藤 こうやってお話を聞いていても、「パタリロ!」という原作の偉大さがすごく感じられます。原作がすっごく面白いので、それに立ち向かっていくプレッシャーは本当に大きいですね。「舞台もいいじゃん」と思ってもらえるようにがんばりたいです。
連載を始めたとき、今の加藤くんと同じ26歳だった(魔夜)
魔夜 そういえば思い出したけど、僕が連載を始めたときって今の加藤くんと同い年だったんだよ。26歳。
──当時、プレッシャーはありましたか?
魔夜 あんまりなかったですね。かなり反響が大きくて「あ、こんなに読まれてるんだ」という手応えがあったので。バレンタインに2箱分チョコレートが来て感動しました。
加藤 それはバンコラン宛てとか?
魔夜 僕宛てですね。
加藤 さすが!
──そんな先生から、26歳の加藤さんへの応援の言葉をいただいてもいいでしょうか?
魔夜 これは私の勝手な願望ですけど、「パタリロ!」を代表作にしてもらいたいと思ってます。渥美清さんといえばフーテンの寅さん、というようなかたちで、加藤諒さんといえばパタリロとなってほしいですね。
加藤 がんばります!! 舞台って敷居が高くて行きづらいという人が多いかもしれないんですけど、「パタリロ!」をきっかけに舞台を好きになる人がいたらいいなあと思います。やはり目の前で役者が演じていて何かが起こっているというのを、肌で感じられるのがお芝居の魅力で、その生の感じを多くの人に楽しんでもらいたいです。
魔夜 こっちはこっちで、舞台をきっかけにまだ「パタリロ!」を読んでいない人に原作を読んでいただけるとうれしいですよね。決して昔の作品ではないし、今読んでも古くはない。さっき「母娘4代」読者のご家庭の話をしましたけど、子供さんにぜひ読んでほしいと思ってますから。教育上よくないところもあるけど、わからないところはぜひお母さんたちに聞いていただいて。
加藤 困った顔するかもしれないですけどね(笑)。
──さらに多くの「パタリロ!」ファンが生まれるのを楽しみにしています。ありがとうございました!
常春の国マリネラに雪が降る異常事態発生! 「ミーちゃん」も大活躍する全9編収録。
名作ばかりの9エピソードをセレクトしたベスト版。ファンは必携、「初めて読む『パタリロ!』」としてもオススメの1冊です。
収録
「墓に咲くバラ」「パタリロの1日」「雪がやんだら」「タマネギ!」「忠誠の木」「FLY ME TO THE MOON」「グリフィンのエッチング」「速解術」「果てなき旅路」「特別企画『魔夜峰央ロングインタビュー』原作者の知られざる顏に吉田豪が迫る!」
舞台「パタリロ!」
期間:2016年12月8日(木)~25日(日)
会場:紀伊國屋ホール
脚本:池田鉄洋
演出:小林顕作
キャスト
パタリロ:加藤諒
マライヒ:佐奈宏紀
タマネギ部隊:細貝圭、金井成大、石田隼、吉本恒生
魔夜メンズ:佐藤銀平、吉川純広、三上陽永、柴一平、香取直登(※柴と香取はWキャスト)
バンコラン:青木玄徳
声の出演:鈴木砂羽、池田鉄洋、西ノ園達大、大堀こういち
魔夜峰央(マヤミネオ)
1953年3月4日生まれ、新潟県出身。1973年にデラックスマーガレット(集英社)でデビュー。1978年、花とゆめ(白泉社)にて代表作「パタリロ!」の連載を開始。テンポの良いギャグと、博識に裏打ちされたなんでもありの世界観で大ヒット作となる。「パタリロ西遊記」などスピンオフ作品も多数。現在も「パタリロ!」を無料コミックサイト花LaLa online(白泉社)にて連載中。
加藤諒(カトウリョウ)
1990年、静岡県生まれ。NHK大河ドラマ「真田丸」、NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」や日本テレビ系ドラマ「ゆとりですがなにか」「怪盗 山猫」、フジテレビ系ドラマ「主に泣いてます」、映画「金メダル男」「デトロイト・メタル・シティ」といった数々の作品に出演。バラエティ番組でも個性あふれるキャラクターで人気を集めている。舞台俳優としても活躍しており、残酷歌劇「ライチ☆光クラブ」、ライブ・スペクタクル「NARUTO -ナルト-」などに出演。舞台「パタリロ!」パタリロ役で初座長を務める。
衣裳協力
長袖シャツ…BOHEMIANS
クロップドパンツ…BOHEMIANS
コート…BOHEMIANS
上記全て、
BOHEMIANS(03-5720-2460)
ボウタイ…kanekopopbowtie
上記1点、
kanekopopbowtie(050-5892-8138)
そのほかスタイリスト私物