「スターダスト」がすごく好き（加藤）

──加藤さんはこれまでも2.5次元舞台に出演されてきましたが、今回パタリロというキャラを演じるにあたって特に大切にしたい部分はありますか？

加藤　原作があるものを扱うときは、やはり作品のファンの方にショックを与えないようにしたいと思っていますね。パタリロの場合は特に作品のパワーが強いので、気を引き締めています。美しくてとても上品な世界を、舞台でも面白く楽しく見せるために何ができるか。演出の小林顕作さんやスタッフの皆さんと話し合いながら、試行錯誤していければと思っています。

──2.5次元とそうではないときで、演じ方は変わりますか？

加藤　マンガやアニメのセリフって独特で、言葉遣いが日常会話ではないんですよ。キャラクターを崩さずに自然な人間の会話として見せる、というのが難しいですね。それに、表情の作り方やマンガ的な表現の再現も大変なんです。でも、「マンガと一緒だった！」って言ってもらえるのはうれしいです！

──加藤さんが原作の中でお好きなエピソードはありますか？

加藤　「スターダスト」はすごく好きです。バンコランが昔任務のために殺した恋人と瓜二つの少年が現われて……という話なのですが、1巻まるまる使って物語が展開して、ワクワクするし、ギャグもたくさん出てくるし、とても面白かったですね。

──「スターダスト」は劇場版アニメにもなっていますね。バンコランの見せ場がとても多いエピソードです。

加藤　あとは（単行本）16巻収録のタマネギ84号のエピソードですね。タイムパトロールをしている未来のアンドロイドと対決するやつ。「スターダスト」のような長いエピソードではないんですが、起承転結がしっかりしていてどんでん返しがあって好きです。

魔夜　……そんなのあったっけ？

娘　先祖と子孫といっしょにアンドロイドに立ち向かう話でしょ？ 「パタリロ三位一体!!」って。

加藤　そうです、そうです！

魔夜　あー、わかった。やっと思い出した。今、娘に言われて「そういえばそういう話もあったな」と気付きました。

──えっ、今助け舟を出してくださったそちらの方が、ファンの間でも有名な……。

娘　はい、魔夜の娘です。

行き当たりばったりなのが「パタリロ！」（魔夜）

魔夜　これまでの取材でも都度都度言ってますが、私、本当に自分の描いた内容を忘れてるんですよ。だからいつも娘に聞いているんです。最近は、それはそれでめんどくさくなってきて、自分で読み返すこともあるんですけど。

──ご自分で読み返すと、「ああ、これはやっぱり面白いなあ」とか思ったりするんでしょうか？

魔夜　うーん、どうなんだろう。「いいのかな？」って思いますね。さっき加藤くんは、僕のマンガを「起承転結がしっかりしてる」って言ってくれたけど、大半のエピソードについては全然そうじゃないんですよ。例えば30ページくらいの話を描くときは、「起」に20ページくらい使っちゃって、「承・転・結」を残りの10ページに詰めちゃうんだよね。「結」は本当にラスト３ページくらいで無理やりまとめてますから。

──それはオチから考えるんでしょうか？

魔夜　いやいや、何も考えずに始めてます。描いているうちに「大体こうなのかなあ」って、だんだん話の先が見えてくる。1話のページ数で終わらなかったら前後編にしちゃう。コミックス1冊になるようなときっていうのは、ずーっと終わらなくて、結果として1冊分になっちゃったの。

──最初から壮大な話として考えているわけじゃないと。

加藤　ネームは描くんですか？

魔夜　描かないんですよ。連載の最初の1年くらいは描いていたんですけど、担当編集から「ネームと上がってくる作品が一緒だからもうネーム描かなくていいです」って言われて。同じものを2度読む意味がないからって。

加藤　へえ～～！

魔夜　真っ白な原稿に向かったら、まずはパタリロとタマネギに自由に動いてもらう。何の脈絡もないギャグをやらせておいて、そのうちだんだん方向性を見つけていく。ですから最初の5ページなんてね、別にどこにも繋がってないんですよ。行き当たりばったりなの。それが「パタリロ！」なんです。