コミックナタリー PowerPush - ナタリー×an 教えて!センパイ~あの頃のバイト生活~
大橋裕之の場合
「やっぱりできない」がマンガの糧になる
──大橋先生がこれまでバイトをされてきた中で学んだことや、勉強になったことを伺ってもよろしいですか?
やっぱり、いろんな人がいるっていうのを知れたことでしょうか。僕の場合はマンガを今描いているので、誰かがこんなものを売ってたら面白いんじゃないかとか、こういう変なおっさんがいたらとかいうふうにネタにできてしまうから、すごく意味はあったと思っているんですよ。でも本当に、できることなら、僕、あんまりバイトはしないほうがいいと思うんですよね。
──えっ!? それはどういう……。
バイトに時間をかけすぎないほうがいいというか。最低限の生活資金を稼ぐためにやるのはもちろんいいと思うんですけど……「このバイトは金を稼ぐためだけのものだな」と思ってるんだったら、あんまりバイトに時間かけず、そんなに稼ぎまくんないほうがいいとは思いますね。
──ほかにやりたいことがあって生活費のためにバイトをするというんだったら、そっちに注力したほうがいいんじゃないかということですか?
うーん、でも一概には言えないな……。例えば人によっては器用で、バイトもすごくできて、自分なりの新しいやり方をどんどん生み出していってとか、そういう人もいるじゃないですか。そういう人がバイトを中心とするのはありかなとも思うんですが。僕はそういう人とは真逆で、すべてのバイトが、自分がどれだけできないかっていうのを思い知るものだったので……(笑)。
──「俺はやっぱりできないんだ」という気持ちも、大橋先生のマンガの糧になっているように見えますね。
ああ、それはほんとにあります。つらいことがあっても、後から見るとみじめすぎて笑えるとかね。
期待しないほうがいいけど……
──最後にanとナタリーの読者に、アドバイスなどありましたら。
えっと……とにかく、バイトをする前は事前に偵察をしたほうがいいですよと。
──なるほど(笑)。
「アットホームな楽しいバイト先です」みたいなことがいろいろ書いてあっても、たぶん偵察してみたらそうでもないとこもいっぱいあるので(笑)。まあ、入ってみないとわからないところももちろんあるんですけど。
──過去の自分の行いで、ここはこうしたらもっとよかったなっていう部分はありますか?
やっぱり、もっとがんばってしゃべっておけばよかったなっていうのはありますね。もちろん結局輪に入れなくて傷付くこともあるかとは思うんですが、最初だけでもちょっとがんばって話しかけたほうが。もし1回だけだったとしても、それがきっかけですごく仲良くなれる可能性もあるので。
──確かに。
あと、アドバイスというわけではないんですが……。僕が珍しく仲良くなったバイト仲間で、よく「俺は決められた仕事をちゃんとやらない。やらないけど、周りの人が気付かない大事そうな部分は結構やっているんだ」と言っている人がいたんです。
──えっ、その方がご自分でおっしゃってたんですか?
はい、自分から(笑)。でも確かにその人、普段みんながあまり掃除していなかった場所をきれいにしてたりして、後からそれをありがたく感じることもあったんですよ。
──その人は、豪語していたとおりの仕事はされていたんですね。
そういう、みんなが見落としがちだったり、あまりやらないことだったりを意識的にやっていると、後々いいことがあったり、思いもよらず褒められたりすることがあるんだなと。もちろんあんまり期待はしないほうがいいんですけど、たまにいいこともあるし、いい人もいるという。アドバイスになってるのかな、これ(笑)。
「an」特設サイトではナタリーとの連動企画として、一般ユーザーから寄せられたバイトに関する悩みや相談にゲストが答えるコーナーを掲載。大橋裕之にはインタビューとあわせて、さまざまな質問に答えてもらった。
路線・駅・区間、職種、雇用形態、短期、高収入など、さまざまな条件からアルバイトを探すことができるWEB版「an」。バイトの検索方法は、地域を選び、チェックボックスに希望の条件を入力するだけ。自分にピッタリのバイトに出会おう!
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大橋裕之(オオハシヒロユキ)
1980年1月28日生まれ。愛知県蒲郡市出身。2005年から自費出版で活動を開始し、ミニコミやフリーマガジンなどに執筆する。代表作に「シティライツ」「夏の手」「音楽と漫画」「遠浅の部屋」など。「音楽と漫画」収録の「音楽」はアニメ映画化が決定している。また「シティライツ」を原作とした映画「超能力研究部の3人」が、乃木坂46のメンバー主演により2014年12月に公開される。
2014年12月26日更新