
前橋市を知って「前橋ウィッチーズ」をもっと楽しむ 第2回
前橋の“プロ”に聞いて、徒歩で巡る「前橋ウィッチーズ」聖地巡礼のススメ
商店街は360度再現、街中でキャラクターの足跡を感じる
2025年5月19日 12:00
群馬県前橋市を舞台にしたオリジナルアニメ「前橋ウィッチーズ」が4月から放送中だ。地元の女子高生5人が魔女を目指しながら成長していく姿を描く同作では、いたるところにリアルな前橋の風景が登場する。
コミックナタリーではアニメを観れば必ず訪れたくなる前橋の魅力を伝える記事を展開。「前橋ウィッチーズ」の制作にも深く関わる前橋観光コンベンション協会に協力いただき、聖地巡礼のおすすめコースを一緒に考えてもらった。記者が実際に前橋へ足を運んで体感した制作陣のこだわりや、街を歩いて感じた思いを写真とともに紹介する。ぜひ作品の舞台を巡る参考にしてほしい。
前橋観光コンベンション協会インタビュー
──オープニングだけ観ても前橋に関係ないカットのほうが少ないくらい、「前橋ウィッチーズ」は前橋要素が濃いですよね。
ありがたいことに、魔法の空間以外はほぼ全編で前橋をリアルに描いていただいています。スタッフの皆さんにはロケハンも熱心に周っていただきましたし、各話の制作ごとに前橋まで足を運んでくださって。本物の前橋よりもちょっとだけ素敵に描いていただいている気がします(笑)。商店街にお店を出している皆さんも大変喜んでくださっています。

「前橋まちなかマップ」に細かくメモ書きをしながらインタビューを受ける担当者。
──先行上映会が前橋のけやきウォークで開催された際に、商店街にも足を運んだのですが、いたるところに「前橋ウィッチーズ」のポスターが貼ってあって。地元の皆さんが作品を応援している気持ちを感じました。
実は、最初は貼ってくれるお店も少なかったんです。でも前橋ウィッチーズの皆さんが前橋でイベントをしてくださったりする中で、作品のことが広まっていってどんどんポスターを貼ってくれる店舗さんが増えていきました。声をかけている私たちとしても本当にありがたいです。
──ファンの方にはポスターが並ぶあの風景もぜひ見てもらいたいです。
JR前橋駅にも「前橋ウィッチーズ」のウェルカムボードがあるんですが、まずそこで感動していただいて。通りに出たらフラッグがあって、街中ではお店の人が作品を知っていて会話が生まれる。そんなことが起きたらうれしいですよね。

JR前橋駅に設置されているウェルカムボード。(写真提供:前橋観光コンベンション協会)
──本当ですね。作品の舞台として商店街はアニメの中にも特に多く登場しています。オープニングだけでも2つの商店街が映っていますよね。

左からオープニングに登場する中央通り商店街、弁天通り商店街。
前橋市に商店街は全部で9つあるんです。制作スタッフの皆さんは最終的に通りの場所と名前を完璧に覚えてくださって、制作の際のやり取りでも商店街の名前が飛び交っていました。なので、第2話でユイナたちがビラ配りのために出てきたシャッターはメインの通りでない場所のものになっていたり。私でも「ここかあ!」と驚くくらいニッチな場所を選んでましたね(笑)。アニメの中でユイナたちが歩いているルートもちゃんと考えられていて、それに合わせて背景が変わっているんです。
──すごいこだわり! アニメで名前が出てくるスポットもあるのですが、風景すべてが前橋なので、セリフなどでまったく触れられず「素敵な場所だけど、ここはどこなんだ?」という場所もありまして……。ぜひ聖地巡礼コースの作成にご協力お願いします!
コミックナタリーがオススメする「前橋ウィッチーズ」聖地巡礼コース
今回は前橋観光コンベンション協会が発行する「前橋まちなかマップ」を片手に街を歩いた。マップはJR前橋駅構内の観光案内所などに置いてあるので、散策のお供にしてほしい。なお本記事では各所の許可を得たうえで取材を実施。実際に作品の舞台を訪れる際は近隣の方や店舗の迷惑にならないようにマナーを守って楽しもう。
①JR前橋駅
今回は電車を使い前橋まで訪れるという想定で、スタート地点はJR前橋駅に設定した。スタート地点といっても、オープニング映像にもしっかり登場する作品の聖地。駅中には前橋ウィッチーズの巨大なウェルカムボードも掲示されており、歓迎される気分を味わえる。東京・新宿駅から新幹線などを使わなくとも約2時間で到着することもあり、小旅行気分を味わえるのもグッド。思わず買いたくなるお土産もたくさんなので、帰りのお土産代までしっかりと計算して前橋の街を楽しもう。

オープニングに登場するJR前橋駅。
②御菓子司 新妻屋
ここから長い道のりになるので、まずは糖分を確保してみるのはいかが? そんなときにおすすめなのが御菓子司 新妻屋。「前橋ウィッチーズ」のフラッグがはためく駅前の大通りを、5分ほど歩いたところに現れる明治15年創業の老舗和菓子店だ。

御菓子司 新妻屋
同店で一番古くから販売しているお菓子「繭玉まんじゅう」は、かつて製糸業で栄えた前橋の街の歴史も感じられる、蚕の繭の形が特徴的な逸品。店主いわく、かつて輸出のために神奈川県の横浜へと生糸が運ばれていた際に、お土産として重宝されていたとか。つくね芋に目の細かい米粉を合わせたもっちりとした生地と黒糖あんがマッチする、地元のファンも多いお菓子である。

「繭玉まんじゅう」
なお御菓子司 新妻屋は、アニメと前橋を紹介する「『前橋ウィッチーズ』前橋ガイドブック」の配布協力店。税込1500円以上の買い物をし、店員に表紙イメージを見せて声をかけると、ガイドブックをもらうことができる。聖地巡礼のお供にもぜひゲットしておきたい。
③中央通り商店街、オリオン通り
前橋ウィッチーズのメンバーが魔法の花屋・ドリーミードリーミーフラワー(仮)のビラを配る場面でたびたび登場するのが商店街だ。第2話に登場する洋品店・Marlは配置や外観も協力を得て再現されている。ここはハイブランドを取り扱うショップであり、アニメの設定にも沿った店舗だということがわかる。さらに驚きなのが、アニメでMarlを見つけたユイナの背景に映るアカギ商会の看板の位置。現地を訪れるとわかるが、Marlを正面に見た際に実際に看板が背後に位置するようになっており、店舗の配置まで商店街が360度再現されている。また前述した通りキャラクターが歩くルートまで考えられて背景が描かれているので、シーンごとの背景からキャラクターの足跡を想像してほしい。

第2話でユイナたちが立ち寄ったMarl。

Marlを見つめるユイナの背景に描かれていたアカギ商会。現実でもMarlの正面に位置している。※現在は取り壊し工事が行われている。
今回は第2話でユイナ、チョコ、キョウカがビラ配りで辿った道順を妄想して散策。前橋観光コンベンション協会の担当者が「フェンスの位置でわかった」という、3人がシャッターから出てきたスタート地点に始まり、「前橋ウィッチーズ」の垂れ幕が飾られている中央通り商店街の入り口付近へと回り、オリオン通り商店街の看板まで、さまざまなお店を横目に歩くだけでも、歴史を感じるレトロな雰囲気と、新しく商店街に根付いたオシャレなお店が融合する街の魅力を感じられた。筆者も個人的に気になったお店の名前をチェック。次はぜひプライベートで訪れたい。

第2話でユイナたちがビラ配りをスタートさせたシャッター。

中央通り商店街。奥には「前橋ウィッチーズ」の垂れ幕が飾られている。

第2話のビラ配りの最後に映るオリオン通り商店街の看板。
④パーラーレストラン モモヤ
昼休憩をするならこの商店街で済ませるのがベストだろう。個人店のカフェや、大衆的な食堂、コッテリかつ大ボリュームの大人気ラーメンチェーン店など多種多様なお店が揃っており、好みに合ったお店が必ず見つかるはず。今回はアニメ本編にも名前が登場し、レトロな雰囲気が目をひくパーラーレストラン モモヤさんにお邪魔した。

パーラーレストラン モモヤ
パーラーレストラン モモヤは昭和31年創業の洋食屋。その素敵な雰囲気から映画やバラエティ番組のロケ地になったことも。ナポリタン、オムライスなど定番の洋食屋メニューから、ラーメン、生姜焼き定食などを揃えており、取材日も平日にも関わらず常に人で賑わっていた。レトロな喫茶店といえばパフェなどのデザートでゆったりと過ごしたいが、この日は産出額が全国でもトップクラスだという前橋の名産品・豚肉を使ったメニューをチョイス。なお同店では食材にもこだわっており、ブランド豚である上州麦豚が料理に使用されている。

人気メニューの1つであるTONTONオムライス。
筆者は、前橋市民のソウルフード「ソースカツ」の名店を決める「まえばし推しカツNo.1」への参加メニュー「チーズソースカツ丼」を注文した。中央のゆで卵をヒレカツが囲う花のような盛り付けは、魔法の花屋で修行する「前橋ウィッチーズ」の聖地巡礼の世界観にピッタリ。フルーティなソースが、カツにマッチしすぐに平らげてしまった。豚肉を使ったメニューではこのほか、豚汁をメインに添えた「TONTON汁定食」や「TONTONナポリタン」「TONTONオムライス」などを提供中。ボリュームもたっぷりなので、何度も足を運んでメニューを制覇してもらいたい。
※パーラーレストラン モモヤも「『前橋ウィッチーズ』前橋ガイドブック」の配布協力店。

「チーズソースカツ丼」
⑤弁天通り商店街
パーラーレストラン モモヤを出て中央通り商店街をまっすぐ進み、大きな道路を渡った先にあるのが弁天通り商店街。中央通り商店街よりもさらに歴史を感じる生花店、金物店などが並ぶ。その素敵なロケーションから映画やドラマのロケ地になることも多いそう。第6話にてキョウカがユイナに自身の思いを打ち明けるシーンでは、背景に弁天通り商店街が印象的に使われている。

弁天通り商店街
⑥広瀬川
そんな弁天通り商店街を抜けると眼前に広がるのが、アニメでもたびたび登場する広瀬川と、そこにしだれる柳。取材を行った4月には桜も咲いており、最高のロケーショーンが筆者を迎えてくれた。弁天通り商店街を抜けたところにちょうどあるのが、オープニングや本編で印象的な形が目をひく比刀根橋だ。第5話にもこの橋が映り込んでおり、ユイナ、マイ、キョウカがこの川沿いを歩いていたことがわかる。なお第5話のアイキャッチにはこの川沿いにある萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館が登場している。

作中にもたびたび登場する広瀬川。

広瀬川に架かる比刀根橋。
川と柳のコントラストが本当に素晴らしく、川沿いのベンチに腰掛けて冒頭で購入した「繭玉まんじゅう」に舌鼓を打つのにも持ってこいのロケーションだ。
ここからは次の目的地に向けて川沿いを移動。その道中にもユイナの部屋に飾られていた写真の中の馬形埴輪、「詩のまち」らしい詩碑などが点在しており、道中も飽きることなく散策できた。

川沿いの馬形埴輪。第1話でユイナの部屋に飾られている写真をよく見ると同じものが写っている。
⑦前橋市中央児童遊園るなぱあく
広瀬川を東へとずっと進むと、道路沿いの窪んだ土地に見えてくるのが前橋市中央児童遊園るなぱあく。オープニング、エンディングにともに登場しており、前橋を語るうえで外せないスポットであることがわかる。1954年に開業した歴史ある遊園地で、取材日にも親子三代で園内を楽しむ姿が見られた。飛行機型の乗り物が上下する「ひこうとう」、小型ながら装飾が豪華な「メリーゴーランド」など子供の頃の思い出をくすぐる遊具が並ぶ。なお入場は無料。遊具に乗らずとも食事処のおむすびマムもあり、イベントも随時開催しているので、大人でも楽しめる。

前橋市中央児童遊園るなぱあく。オープニングにもエンディングにも登場するメリーゴーランドが置かれている。
⑧臨江閣・前橋公園 日本庭園
るなぱあくから歩くと程なく現れるのが、臨江閣と前橋公園 日本庭園。ここは第4話でアズがマイに気遣いつつ、マイが慕う幼なじみである優愛の言動への不満をキョウカとチョコにぶちまけるシーンに登場するスポットだ。このシーンを含め、アニメでは前述した広瀬川など、前橋の景色がケロッペによって魔法の花屋の中に映し出される様子がたびたび描かれる。広い池と手入れされた草木が美しい庭園には、第4話でマイと優愛が座る東屋が置かれている。

前橋公園 日本庭園。
また同シーンでチラッと映る木造建築が国指定の重要文化財・臨江閣だ。そんな貴重な建物も「前橋ウィッチーズ」を応援。アニメ放送期間中の毎週金・土曜日の18時30分から23時まで魔女見習いの5人とケロッペのカラーにライトアップが行われている。

臨江閣
⑨日本トーター グリーンドーム前橋
第1話で、ユイナが開けた魔法のシャッターの先にあったのが、ローズアベニュー、グリーンドーム前橋、群馬県庁の3つ。駅からもだいぶ遠くまで歩いてきたところで、最後はグリーンドーム前橋、群馬県庁を目指していく。

日本トーター グリーンドーム前橋
といっても臨江閣までくれば、グリーンドーム前橋は眼前に圧倒的な存在感で我々を待ち構えている。大きすぎて近く見えるのに、なかなか辿りつかない状態を数分続け、ついにオープニングや公式サイト、第1話で見慣れた景色を拝むことができた。ちなみにグリーンドーム前橋は競輪場としても使用される施設。競輪を嗜む人ならば「前橋」をそちらで知っている人も多いのではないだろうか。アイドルのライブイベントなどに使用されることもあり、キャストによるアイドルグループ・前橋ウィッチーズがいつかここに……と、ファンなら夢見てしまう。
⑩群馬県庁
オープニング、エンディング、本編で圧倒的な存在感を放つ群馬県庁。その足元までくると高さに驚くだけでなく、旧庁舎である昭和庁舎を含むおしゃれなデザインにも息を呑む。オープニングでアズが前に出て軽快に踊る場面に登場している昭和庁舎は、実際に中に入ることも可能。外見だけでなくモダンな内装も必見だ。

群馬県庁 昭和庁舎。

群馬県庁
また群馬県庁32階の展望ホールもおすすめのスポット。同フロアでは群馬県に本店があるコーヒー専門店・大和屋珈琲の直営店であるYAMATOYA COFFEE 32が営業しており、これまで歩いてきた前橋市街を眺めながら足を休めることができる。なおオープニングに登場する利根川、前橋県庁、グリーンドーム前橋をとらえたカットは空撮ではなく、ある近隣の建物から撮影した写真をもとに画に起こしたそう。そんな細部にまで “前橋愛”が詰まった「前橋ウィッチーズ」を観て、現地でもキャラクターの息吹を感じてほしい。
EX. ヒストリア前橋、前橋百貨、中央前橋駅
ここまで「前橋ウィッチーズ」に登場したさまざまなスポットを巡ってきたが、実はもう行けない場所も。それがオープニングに映る、今はなき前橋城や前橋駅の旧駅舎だ。そんな時間の壁を少しだけ解消してくれる施設が、JR前橋駅前の商業施設・AQERU前橋2階のヒストリア前橋。無料で入場できる館内では、“華都”と呼ばれ栄華を極めた時代から4つの危機を乗り越えて、今の前橋ができるまでの歴史を、壁面3面と床面を使用した映像の上映や趣向を凝らした展示で学ぶことができる。前橋駅の旧駅舎の写真も見られるほか、前橋城がなぜなくなったのかなど前橋の過去を深掘りするにはもってこいの施設だ。

左からオープニングに登場する前橋城、前橋駅の旧駅舎。
JR前橋駅から帰宅する際、まだお財布に余裕があるならば前橋駅の前橋百貨にも寄るべき。3月末にリニューアルされたばかりの物産館で、その際の記念イベントには前橋ウィッチーズも参加した。キャラクターの名前を縁に赤城フーズ、老舗三俣せんべいといった地元企業と「前橋ウィッチーズ」がコラボしたお土産も並んでおり、お財布の紐が緩むこと間違いない。

左から赤城フーズが販売する「TVアニメ『前橋ウィッチーズ』ユイナのあまずっぱ~い甘梅」、老舗三俣せんべいが販売する「TVアニメ『前橋ウィッチーズ』おせんべい」。
まだまだ前橋から帰りたくない! 「前橋ウィッチーズ」の舞台を楽しみたい!という方は、上毛電気鉄道の起点である中央前橋駅へ足を運ぼう。メインキャラクターである赤城ユイナ、新里アズ、北原キョウカ、三俣チョコ、上泉マイの名字が上毛電気鉄道の駅名から取られている縁から、中央前橋駅にはケロッペが、名前の由来となった上毛電気鉄道の各駅にはキャラクターのパネルが設置されている。
ふらっと行って、楽しく周って、安全に帰ろう
筆者が今回の取材のために前橋に到着したのはちょうど正午頃。都心からなら新幹線を使わずとも約2時間半もあれば前橋に到着してしまうが、その距離感が絶妙で小旅行気分も味わえる。今回、これだけのスポットを歩いて堪能したが、再びJR前橋駅に帰ってきたのは17時頃。日帰りでも十分に前橋を堪能できることがわかるだろう。これだけ“聖地”が密集しているアニメもそうそうないのではないだろうか。アニメの“聖地巡礼”をしたことがない人こそ、ふらっと軽い気持ちで前橋を訪れてほしい。その際には制作スタッフのように前橋愛を持って、マナーを守って楽しもう。
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2025年5月19日更新