LaLa45周年特集第3回「学園ベビーシッターズ」時計野はり|私の思う「かわいい」が伝えられる絵になっていたらいいな

LaLa(白泉社)創刊45周年特集の第3回には、「学園ベビーシッターズ」「お兄ちゃんと一緒」で知られる時計野はりが登場した。2001年にデビューを果たした時計野は今年2021年でデビュー20周年。時計野にとってもLaLaにとっても、今年は記念すべきアニバーサリーイヤーにあたる。

コミックナタリーでは時計野に、LaLaで連載中の「学園ベビーシッターズ」で保育ルームに通う子供たち“ベビーズ”のベストエピソードを選んでもらい、コメント付きで紹介。また初連載作の「お兄ちゃんと一緒」の思い出、「学園ベビーシッターズ」の創作秘話などもたっぷりと聞いた。“かわいい”をギュギュッと詰め込んだような絵柄で、ほっこりと愛らしい物語を紡ぎ続ける時計野がマンガに懸ける思いを味わってほしい。

取材・文 / 増田桃子

時計野はりが選ぶ!「学園ベビーシッターズ」保育ルームの子供たちのベストエピソード

「学園ベビーシッターズ」118話より。
虎太郎のエピソード118話(22巻収録予定)

大好きなパンダの赤ちゃんを観に動物園へ行くことになった虎太郎。竜一はもちろん理事長、犀川さんも一緒ということでワクワクしながら当日を迎えるけれど……。

時計野はり

アニメで好きだった14話のお弁当を届ける話とか、いろいろ迷ったんですが、新しいものから選びました。虎太郎が興奮して珍しくいっぱいしゃべっているところとか、竜一と理事長と犀川さんとのお出かけなのもお気に入りポイントです。

「学園ベビーシッターズ」64話より。
鷹のエピソード64話(12巻収録)

5月5日のこどもの日、鯉のぼりの形をしたオモチャがどうしても欲しい鷹。駄々をこねるも母にも兄にも相手にしてもらえず、家出を試みるが……。

時計野はり

めいっぱい駄々をこねている鷹とか、蛇原先生とのやりとりとか、振り回される隼とかも描いていて楽しかった回です。シーンで選ぶなら76話の、隼にお腹わしゃわしゃされて喜んじゃってるところも気に入っています。

「学園ベビーシッターズ」15話より。
奇凛のエピソード15話(3巻収録)

保育ルームの男子たちがヒーローごっこに夢中な中、魔女になれると信じる奇凛は「ほーきでおちょらをとんでみちぇます!!」とほうきをまたぐが……。

時計野はり

魔女に憧れる女の子は絶対かわいいと思うので。危ない目に遭わせてしまったけど、エピソードを参考にさせてもらった元担当さんは元気に育って笑い話にしているので許してほしいです。でも真似したらダメですよ!

「学園ベビーシッターズ」20話より。
拓馬のエピソード20話(4巻収録)

数馬が風邪を引いて1人で保育ルームにやってきた拓馬。数馬ナシでもいつもどおりニコニコで元気いっぱいの拓馬だけど……。

時計野はり

いつもニコニコの拓馬が寂しいのを我慢してがんばるお話なので選びました。猫といるシーンとか鷹の靴下を掴んでるところとかお気に入りです。双子のお話なら46話の牛乳を買いに行く話も気に入っています。

「学園ベビーシッターズ」69話より。
数馬のエピソード69話(13巻収録)

床屋さんを怖がる数馬のために、代わりに母・海が双子の髪の毛をカット。ところが思ったよりも切りすぎてしまって……。

時計野はり

ぱっつんを嫌がる数馬を描くのが楽しかったです。小さい子のぱっつん前髪、素朴でかわいいですよね。このお話じゃないですが、ごくごくたまに数馬が怒ってたりするのを描くのも楽しいです。もちろん笑顔にもさせてあげたいですが!

「学園ベビーシッターズ」33話より。
美鳥のエピソード33話(7巻収録)

風邪を引いた兎田の代わりに保育ルームのメンバーのお世話をすることになった犀川さん。すぐにみんなと打ち解ける犀川さんだが美鳥ちゃんだけは違って……?

時計野はり

赤ちゃん中心のお話を考えるのが難しくて、あまりメインで描いてあげられていないんですが、とにかく大人を振り回していてほしいのと兎田さんに懐いていてほしいという私の願望が描けた回なので気に入っています。

「学園ベビーシッターズ」41話より。
その他のキャラクターのエピソード41話(8巻収録)

デパートで迷子になってしまった虎太郎と鷹。そこに初めて一緒にお出かけに来ていた猪又さんと牛丸さんがやってきて……。

時計野はり

女子の友情も好きなので、猪又さんと牛丸さんがちゃんとこれで腹を割って仲良しになれたはず!とこの回を描いて満足したのを覚えてます。

時計野はりインタビュー

20年間続けてこられた原動力は読者からの反応

──デビュー20周年おめでとうございます。現在の率直な思いを聞かせてください。

ありがとうございます。すごい長い間描いていたんだなあと思うのと同時に、当たり前のようにこの20年マンガを描き続けていられたことに感謝しないといけないなと改めて思いました。編集さんをはじめとした作品に関わってくださった方々、応援してくれている家族や友人、何より読者の皆さんに心から感謝をお伝えしたいです。

──20年間活動し続けてこられた原動力はなんだと思いますか?

やっぱり読者さんからの反応ですね。少しでも面白いと思ってもらえたらそれが何よりうれしいことなので!

──では時計野先生の活動を振り返ってお話を伺えればと思います。まずはマンガ家を志したきっかけを教えてください。

「学園ベビーシッターズ」より。

とにかく絵を描くのが好きで、自分で自信が持てることもそれくらいだったので、専門学校を卒業した頃は絵本作家やイラストレーターになりたいなと思っていました。でも実際に職業として目指してやっていけるかちょっと迷いが出たときに、絵でご飯を食べていくならマンガのほうがいいのではないかと思って、試しに投稿を始めたのがきっかけです。もともとマンガを読むのは好きだったのと、投稿を始めたらとても楽しかったのでがんばれました。

──2001年に「サンタのいる街」でデビューされましたが、なぜLaLaに投稿しようと思ったのでしょうか?

好きな作品がたくさんあったし、いろいろ自由に描けそうなイメージがあったからだと思います。

──マンガを描くうえで、影響を受けた作家さんや作品はありますか?

小中学生の頃は高橋留美子先生の「らんま1/2」が大好きだったんですが、そこで「マンガの主人公はモテるもの」「性別の逆転は面白い」みたいな価値観が刷り込まれた気がしてます。その頃読んでいた谷川史子先生や萩岩睦美先生のマンガにも憧れが詰まっているし、羅川真里茂先生の「赤ちゃんと僕」も高校生の頃読んで大好きでした。「赤僕」はかわいいうえに深みもあるお話なので程遠いですが、やっぱりたくさん影響を受けていると思います。あとは宇野亜由美先生の「オコジョさん」と鳥山明大先生の「Dr.スランプ」も大好きで、ニコニコ顔のキャラのイメージの原点な気がします。ずっとニコニコ顔のキャラクターという概念は間違いなく「オコジョさん」で学びました。佐伯兄妹、面白くて大好きです。

──拓馬や海ちゃんのニコニコ顔は、鳥山先生や宇野先生の影響だったんですね。ちなみに「時計野はり」というペンネームはとても印象的なのですが、どういった由来があるのでしょうか。

最初の2回くらいはほぼ本名で投稿していたんですが、つまらないなと思ったので、そのとき描いていたマンガの小道具の時計から連想して思い付きで決めました。そのお話で確か初めて5000円くらいの賞金をもらえて、縁起もいいしこれで行こうと決めた気がします。


2021年9月24日更新