ドラマ「海月姫」|ドラマ化記念!東村アキコ×少女マンガ芸人・別冊なかむらりょうこ対談 「海月姫」をめぐる恋愛と、女の子の生き方

悩める女子がアドバイス求める「サロン・東村アキコ」?

──「海月姫」では月海の亡くなったお母さんが「女の子はみんなお姫様になれるんだよ」と語る回想シーンが印象的ですが、そこにはそんな意味もあったんですね。

ドラマ「海月姫」より、芳根京子扮する月海と工藤阿須加扮する修。

東村 そうそう、「女帝になれ」という。だから、連載当初からテーマは変わってないんだけど、なかなか大声では言えないよね。だって少女マンガって、お姫様と王子様が1対1で結ばれて永遠に幸せに……というのが普通のテーマなわけだから。でもそんなの実際はそんなにないでしょ。

なかむら (笑)。確かに少女マンガは日常に疲れた人たちのための夢物語でもいい。だけど、東村先生が描く少女マンガは、読者の実生活のほうを引き上げてくれる力強さがめちゃくちゃあるから、リアルの世界で生きてる女性たちがみんな興奮して読むんだと思う。

東村 私も男の子大好きだし、「男に幸せにしてもらおうなんて思わない」ってわけでもないんだけど、その時期自分がやってることに合った男の人と、変革的に付き合っていくほうがいいと思うよ。1人の人にずっととらわれずにね。

なかむら 女としての幸せとか、結婚が優先順位の上位になりがちだけど、必ずしもそうじゃなくていいんですよね。

東村 そうよ。だけど私のスマホには、夜な夜な悩める女子からLINEとかLINE電話が来る(笑)。「彼氏がー、クリスマスは一緒に過ごせたんだけど、大晦日一緒に過ごせなくってー、あ、全然こいつあたしのこと好きじゃねえなって思っててー」とか。

なかむら (笑)。

東村 そういう感じなんよ(笑)。もうね、脳が毒されてる! 「愛される女になるための5か条」みたいないろんなメディアの情報に毒されているんですよ!

──ぜひ悩める女子が東村先生のアドバイスを仰ぐだけのイベント「サロン・東村アキコ」を開催してください。

東村 サロンはいいかもしれないね(笑)。

なかむら それ隣で見させてくださいよ。お金払うんで(笑)。

約9年の連載を経て、変わったこと・変わらないこと

──東村先生は去年、2008年からの約9年にわたる「海月姫」の連載を終えられたわけですが、その間にご自身の仕事観や恋愛観に変化はありましたか?

東村 仕事はずっと楽しいんです。今日も原稿やってて「ずっと描き続けていたい」って思ったし。私は仕事は「土日祝以外、平日の昼12時から19時まで」って決めて、ちょっと朝の遅い公務員みたいに生活してるから、19時になると「あ、もう終わんなきゃいけないんだ」って毎日残念に思ってるくらいお絵描きが楽しい、っていう感覚です。

なかむら すごい。

東村 で、恋愛は、やっぱ2年で飽きる。

なかむら (笑)。

東村アキコ

東村 だから慌てて結婚したらいかんと思う。やっぱり2年は付き合って、その先も一緒にいたいと思えるようにならないと。私、結構すぐ結婚して失敗しちゃってるから(笑)。

なかむら (笑)。飽きはどういうときに判断するんですか?

東村 一緒に旅行に行きたくなくなる。土日に彼と箱根の温泉に行くか、家で「ウォーキング・デッド」見るか、どちらかを選べと言われると、「家で海外ドラマ」を取るようになる。それはすでに飽きている(笑)。

なかむら なるほど(笑)。たしかに恋愛を趣味のひとつと捉えて同じような判断になってしまったら、それは飽きと呼びますね。

東村 そうそう。だってもともと恋愛感情なんて、衣食住しかない原始時代にはないからね。子作りしなきゃ、というのは本能的にあるけど、それと恋愛とは違うから。

──食うに困らなくなった時代の産物ということですね。

東村 そう、だから趣味のひとつということで。

なかむら だとしたら、楽しむときにめっちゃ楽しむのがいいと。

東村 みんな彼の言動が足りないとか、永遠を求めるけど、「そんなんねーから!」って思うのよね。

なかむら (笑)。気持ちいいですね。

マンガ「海月姫」より。

東村 だから親友を作るという考え方がいいと思う。最初は恋人で、そのあとは男の親友っていう。

なかむら 先生は「恋人から親友に」というのは、完璧にできるほうですか? 

東村 私は元カレみんな友達で、いまも全員仲がいいです。友人関係はずっと続けてるからね。

──ではこの9年で、仕事は変わらず楽しくて、恋愛に関しては、達観されたというか、趣味になったと。

東村 そうですね、趣味の一環ですね。だから、悩みがないです。悩んでる子たちがうらやましい。

なかむら (笑)。

──今後、ドラマ「海月姫」で楽しみにしているポイントを教えてください。

ドラマ「海月姫」より、北大路欣也扮する鯉淵慶一郎。

東村 ドラマの展開はもちろんだけど、私、北大路欣也さんの大ファンなんです。なので、北大路さんが鯉淵父をどう演じてくれるのかなと。まだお会いしてないので、撮影を見学に行って、北大路さんに挨拶するのが楽しみ。

なかむら 私は天水館のファッションショーのシーンが楽しみです。きっとまたここで人々の心が大いに揺さぶられるんだろうな、と。マンガのあのシーンでは、笑いやドタバタに加えて、蔵之介の切なさが描かれているので、ドラマではどう映像化されるのかが楽しみですね。

──修と稲荷さんの様子に気を取られている月海に対して、ムッとした蔵之介が「俺を見ろ、月海!」と叫ぶところですね。

なかむら そう、美しい! あそこで、キャラクターたちの心情が交錯してぶちまけられるんじゃないかな。最後までみんなでわいわい言いながら見たいな、と思います。

左から別冊なかむらりょうこ、東村アキコ。
ドラマ「海月姫」
ドラマ「海月姫」
フジテレビ系毎週月曜21:00より放送中
スタッフ
原作:東村アキコ「海月姫」(講談社「Kiss」所載) 
脚本:徳永友一
編成企画:渡辺恒也
プロデュース:小林宙
演出:石川淳一、山内大典
制作:フジテレビ/共同テレビ
キャスト
倉下月海:芳根京子
鯉淵蔵之介:瀬戸康史
鯉淵修:工藤阿須加
ジジ様:木南晴夏
ばんばさん:松井玲奈
まやや:内田理央
千絵子:富山えり子
稲荷翔子:泉里香
花森よしお:要潤
鯉淵慶一郎:北大路欣也
ほか
東村アキコ(ヒガシムラアキコ)
東村アキコ
1975年10月15日生まれ、宮崎県出身。1999年、ぶ~けDX NEW YEAR増刊(集英社)にて「フルーツこうもり」でデビュー。2001年、Cookie(集英社)で「きせかえユカちゃん」の連載を開始。ファッショナブルな登場キャラクターとライブ感のある話作りで人気を集める。2006年、モーニング(講談社)にて自身の家族のエピソードにフィクションを交えて描いた「ひまわりっ~健一レジェンド~」の連載を開始。代表作に「ママはテンパリスト」「海月姫」「かくかくしかじか」「東京タラレバ娘」などがある。現在はココハナ(集英社)にて「美食探偵 明智五郎」、ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて「雪花の虎」を連載中。
別冊なかむらりょうこ(ベッサツナカムラリョウコ)
別冊なかむらりょうこ
1986年5月6日生まれ、新潟県出身。ワタナベエンターテインメント所属。少女マンガ好きを生かしたあるあるネタや、「現実では見たことないが少女マンガにはよく見るシーン」などの少女マンガネタで人気を集める。2016年より「るんるん!少女漫画っ子サミット」を開催。2017年には中村涼子名義で「女芸人No.1決定戦 THE W」の決勝に進出した。