「福山潤と内田雄馬が、霧ヶ峰の中であなたを見守っていた!」……思わず「なんて?」と聞き返してしまいそうな内容だが、そんな様子を映し出した映像が、去る10月に三菱電機の公式YouTubeチャンネルにて公開された。「あなたを見守る篇」と題したこの動画は、公開から約10日間で100万回以上の再生数を突破するなど、声優ファンを中心に話題を呼んでいる(参照:福山潤が霧ヶ峰の中でハイテンションに踊る!“監視係”の内田雄馬と実写動画で共演)。
コミックナタリーでは、同ムービーに出演している福山と内田それぞれにインタビューを実施。近年はともに「BANANA FISH」「ぐらんぶる」などに出演し、実写作品では初共演となる2人に、今回の映像に出演しての感想や裏話、そしてお互いの印象について語ってもらった。
取材・文 / 熊瀬哲子 撮影 / 須田卓馬
女優の杏、芸人の若林正恭(オードリー)が夫婦役を務めるテレビCMにも登場する「霧ヶ峰 ムーブアイmirA.I.(ムーブアイ ミライ)」の“中”を舞台とした同ムービー。福山潤は司令係のキリさん(35)、内田雄馬は監視係のガーくん(26)、俳優の才勝は操作係のミネさん(54)に扮し、霧ヶ峰のAI技術搭載赤外線センサー「ムーブアイmirA.I.」の部屋の中で、夫婦を見守りながらエアコンの運転を調節していく姿をコミカルに演じている。実写作品では初共演となる福山と内田。テレビディレクター風のキリさん役を担当した福山は、全身ピンク色の衣装を身にまとい、ラッキィ池田振り付けによるダンスを終始ハイテンションに踊り切っている。
僕、普段から顔うるさいですから
──霧ヶ峰というと、女優の杏さんと芸人のオードリー若林(正恭)さんが夫婦役で登場しているあのCMのイメージがあるのですが、福山さんは今回のWebムービーにご出演が決まったときはどのような感想を抱きましたか?
オファーをいただいたときは、「何がどうなってるんだ!?」というのが率直な感想でしたね。だって普通、霧ヶ峰のムービーに、顔出しの出演者として僕が候補に挙がることなんてまずないですから。だからほかのタレントさんがNGを出すようなことを要求されるのかなとか、いろんなパターンを想像しましたよね。
──実際にかなりインパクトのある映像に仕上がっていますが、福山さんご自身、完成した映像を観てのご感想はいかがでしょうか。
いやあ、面白かったですね。これまでにも実写映画にちょこっと出させていただく機会はあったんですけど、今回のようにはっちゃけた役ではなかったので、どういうふうに映るんだろうと気になっていたんです。今回は、僕がアニメのアフレコでハイテンションなキャラクターを演じるときとほぼ同じ状態で演じたんですが、アニメの収録のときは自分の顔を見ることはできないので「あ、俺けっこう楽しそうにやってるんだな」と思いましたね(笑)。
──マイク前でも普段からああいう感じなんですか?
あんな感じですよ。僕、顔うるさいですから(笑)。コミカルな役のときは特にしわくちゃになりながらやってますし、体も動きますし、マイクの位置から顔が動いてないっていうだけで、普段と変わらないです。
──ではアフレコ中の福山さんを覗いているような楽しみ方もできるかもしれませんね。現場の雰囲気はやはりアニメと実写とでは違うものでしたか?
そうですね。今回の現場は映像の通り、セットもしっかりとできあがっていたので、テンションが上がりました。アニメのアフレコだと、数人が入れる空間の中にモニターがあってマイクが立っていて、「1万人の軍勢がいます」という状況だとしても、実際には僕ら数人しかいないというのが当たり前なので。僕ら(声優)の場合、ものの大きさや人との距離も全部想像でやらなきゃいけないイマジネーションの世界なんですね。なので、セットがあって衣装も着て、共演者も横にいて、という中でのお芝居は大変楽しかったです。
僕が楽しいと思っていることだけが、楽しいことなはずがない
──福山さんは、最近ですと映画「兄友」にカフェの店長役としてご出演されるなど、実写作品へご出演される機会もありますよね(参照:実写版「兄友」に福山潤が出演、壮太に恋愛指南するカフェ店長役)。
そろそろ「こいつなんでもやるな」と思われている頃な気がしますが(笑)。楽しいこと、やったことないことに挑戦できるっていうのが好きなんですよね。声優業界で20年以上やらせてもらっていて、アニメーションや2次元に関するコンテンツの手法が新しいものになって来ている中で、声をあてるという僕らの仕事の基本は変わらないので、自分に求められるものや求められたものに対しての提示の仕方もだんだんと形が決まってくる。そうなると普段の仕事以外で新しい刺激を得て、それをどうフィードバックしていくかっていう作業も必要になってくると思うんです。
──それこそ最近は声優さんがいろんな場でご活躍されている印象です。
はい。昔に比べて声優という職業がどのようなものかを理解してくれる方が増えた時代で、僕らが出ていくインパクトが価値になるのであれば、それはどんどんパブリックな価値になっていくわけですよね。僕のことをどう見てくれるかは見てくれた人の自由なので、「僕は声優だから顔は出さない」って決めてしまうのももったいないと思うんです。僕が楽しいと思っていることだけが楽しいことなはずがない。やってみた結果、ただ楽しいだけじゃなく難しく感じることはわかっているけど、今からだってできないことは何もないというのをお仕事で知れるっていうのは大変ありがたいことだと思っているんです。なのでお話をいただいて、自分自身もできるタイミングであればとりあえず挑戦していこうっていうスタンスでいます。でも、慣れない実写のお仕事だとどうなるかわからないことも多いので、実は足が震えたりとかするんですよね。
──へええ! 信じられない。
めっちゃ緊張しますからね! あの、信じられないかもしれないですけど、僕、現場では真面目なんです(笑)。普段はくだらないことをしゃべってばかりですけど。
──あはは(笑)。いやいや、それはわかります。
こういう実写のお仕事って、例えば声の張り具合も、アフレコとは現場の環境も違うので、出し過ぎちゃうこともあるんですよね。それをどうやってバランスを取っていこうかと考えながら、逆にこちらのアプローチを受け入れてくださることもある。これまでの経験を活かさせてもらったり、今回の経験を自分のフィールドにフィードバックすることもできる。経験が浅いので今後もこういう機会をいただくたびに緊張はするでしょうけど、怖がることはないのかなと思っています。何より今回も楽しかったっていうのは大きいですね。
──確かに福山さん自身、すごく楽しんでらっしゃるように見えました。
楽しかったですよ! 全身使ってやりましたからね。これ、涼しい顔してますけど、全身汗でびっしょりでしたから(笑)。
夜中に駐車場で練習したダンス
──ダンスも猛特訓されたと伺っています。振り付けはラッキィ池田さんが担当されたんですよね。
池田さんには振り付けのパターンをいくつも用意していただいたんですよ。使うのは1パターンだけど、全身動かすパターン、上半身だけのパターンとか。それがカットごとに用意されていたんです。
──じゃあ映像で使われていない振り付けもたくさんあったんですね。それを全部練習されて。
そうですね。夏だったので、びっくりするぐらい汗をかきました(笑)。さすがに部屋の中でドタバタしたり大声を出したりはできなかったので、夜中に駐車場に行って、車のボンネットの上にパソコンを置いて練習したんです。車のガラスに写った自分の姿を見てバランスを確認して。
──あれを深夜の駐車場で練習していると想像したら、なかなかの不審者ですね(笑)。
誰かに見られたら「何号室のアイツ、ヤベえことしてるぞ」ってなると思います(笑)。だから自分とまったく縁のないコインパーキングまで車を出して練習したこともありました。
──そんな隠れた努力があったんですね。
努力というか、そういう場だと気兼ねなく練習できたという感じですね。そもそも昔からそういう練習の仕方をしていたんです。若いときは、声を張らなきゃいけない現場なのに緊張して変に力が入ったり、声が裏返ったりっていうことが多々あって。それをどう克服しようかと考えた結果、自転車に乗って甲州街道をひたすら走りながら「あーーー!」って声を出す練習をしてたんですよ。
──(笑)。
これだけ言うとヤバいやつなんですけど、ダンプとか走ってると歩行者にも気付かれないものなんです(笑)。そういうことをやってから現場に行くと、緊張しても「まあ、あのときに比べりゃこれくらい」って思える。そういう精神がいまだにあるんですよね。おかげで困ったときほどおもいっきりやって、「やりすぎだ」って言われたときに削いでいくようにしてます。ボソボソやって「もっと声出してください」って言われると、ちょっと心が負けちゃうじゃないですか。それを最初からガンと出して、「ちょっとやりすぎだよ」って言われるほうが、ニヤってできるんです(笑)。
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「俺の生き様見とけよ!」