コミックナタリー PowerPush - マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 第1回 河原和音「俺物語!!」「青空エール」「先生!」

原作者としても活動する意義

違う考え方の人に触れると、起き上がってくるものがある

──ご自身の作品を読み返したりはなさいますか?

「先生!」カット

この前、部屋に「先生!」の文庫が落ちていたので読んでみたら……まずは絵が変だなあと。不思議なデッサンで描いてて。内容はずいぶん大人っぽいこと描いてるなって思いましたね。わかったような感じで描いてるなあって(笑)。

──かなり大人っぽい話ですよね。主人公が好きになる伊藤先生も27歳にしては大人な感じです。

当時は、自分が24歳くらいで、27歳はすごく大人だと思っていたんですよね。セリフが……なんかやたらこう……。

──「女が『好きだ』というのを信じてもいいと思ったのは島田が初めてだ」とか「だいぶ前から生徒じゃなかったよ 俺の中ではとっくにおまえは生徒じゃなかった」とか……とてもカッコいいですね。

今読むと不思議な感じですね(笑)。今は逆に迷いが出てきちゃってるのかもしれない。もっといろんな可能性も、立場もあるし……と思ってしまう。当時は言い切ってしまえる妙な強さがありましたね。だからあの時期に描いてるものは若干特別ですよね。今は今で、自分の中でまとまっていることもあるような気はするので、それを描いていけたらいいかなと思います。

──「女のプロ」と呼ばれる、色っぽい中島先生もいいですよね。

その時の言語感覚で描いたんだと思います。当時、友だちが知り合いを評して「女のプロって感じなの」みたいなことを言ってたんですよね。それを聞いて私は「女のプロか……」って何かをイメージしたんだと思う。そういうことがあると、「人」ができたりしますね。だから私は、周りの人と関わっていないと何も描けなくなっちゃうというか。誰かと話して、違う考え方に触れると、自分の中で起き上がってくるものがあるんです。

「すごくハートが強い人」を描いてみたい

──時間がない中で、人に会うのもなかなか難しいのでは。

いや……時間ない、のかな? 子どもを育てているので、周りの子どもとか、その子のお母さんと話したりもしています。お母さんたちの人生を聞いて、そこから勝手に想像したりして。いわゆる雑誌に載っているような人とは違う、私が思うかっこいいお母さんに会えたりすると、「見つけた!」っていううれしさもあったりします。それが猛男にちょっと反映したりもするんですけど。そうやっていろいろな考えに触れることで、自分自身もちょっとずつ変わっていきたいんですよね。自分の好きなこととか考え方とかが変わってかないと、作品も変われないですし。そんなに人付き合いが上手なほうではないと思うんですけどね……でも人付き合いが上手な人なんてあんまりいないですよね?

──確かに、一見スマートにやれていそうな人でも、人付き合いに多少のストレスはありますよね。

「俺物語!!」カット

だから逆に「俺、めっちゃ人付き合い好き!」みたいな人も描いてみたいですけどね。「めんどくさい人、俺のとこ来て!」みたいなすごくハートの強い人。私はハートが弱いので。実は今日も言えなかったことがあって……飛行機から降りるときに(註:河原先生は北海道在住)、私の後ろの席の人がピンクの携帯電話を見せながら「これ違いますか?」って私に言ってくれたんですけど、「違います」としか言えなくて……。本当は「ピンクの携帯電話落とした人いますかー!」って大きい声で言いたかったんです。きっとまだ機内にいるはずだから。結局CAさんに渡すことになったんですけど、私が大きな声で言える人だったらなあ……っていう思いを持ってここ(取材場所)まで来ました。だからマンガだと言える人を描いちゃうんですけど。

──まさに猛男! 彼は迷うことなく大声で叫んでくれますね。

そうそうそう!「電話落とした人!!」って(笑)。

私のマンガは「すっごい少女マンガだな」と思う

──でも多くの読者は自分が大声を出せないので、当たり前のように大声で叫ぶことができる猛男を素敵だなと思えるんですよね。河原先生の作品にはそういったことがあふれています。「青空エール」のつばさも、同じような場面に遭遇したら簡単には「大声」を出せないような女の子だから共感を呼ぶし、そんな彼女ががんばってやり遂げようとする姿が感動を呼ぶのだと思います。

河原和音

そこはわりと自分でも意識していて。突拍子もないことを描いていても、やっぱりちょっと、「そういうこと、あるよね」という部分を入れたいんですよね。そうじゃないと描いていて自分の気持ちも動かないし、読んでいる人の心も打たないかなと思って。まあ……でも自分に全然関係ないけど面白いっていうマンガも楽しいですよね。いろんなマンガを読んでいると、こっちはこっちで面白い、マンガってすごいな、幸せだ、っていつも思います。

──不幸なことばかり起きるとか、必ず不愉快な思いをさせられるマンガも面白いですよね。

「不愉快のプロ」がいるんですよね(笑)。1回話を聞いてみたいです。どんな心持ちで描いているのか。

──以前、「人を嫌な気持ちにさせようと思って描いている」と言っているマンガ家さんがいらして、そういうモチベーションもあるのか!と感動しました。

河原が「ときめきに徹している」と語る咲坂伊緒の代表作「アオハライド」。

そうかあ。考えたことなかったですけど、確かに、恐怖のどん底に陥れようみたいなマンガもありますしね。参考になるなあ。「徹する」っていいですね。例えば咲坂さんも、「ときめき」に徹してる感じがあっていいですもんね。

──咲坂さんがときめきだとすると、ご自身は何だと思いますか?

私ですか? 私は全然突き詰められていないと思いますが……ただ「すっごい少女マンガだな」って思います。少女マンガ以外のものは描いていない。男の子と女の子がいて、つきあったり、幸せになったり、っていう以外のものは描いてないので。やっぱりそれはもう、別マでデビューしたからだと思っています。25年も別マにいると、もう少女マンガの脳みそになっているなあと(笑)。最初はまだ、自分自身がふわっとしたものだったんですけど、編集さんにネームを見てもらったりしていくうちに枝が剪定されていったというか。

──「枝」ですか。

ここは少女マンガから離れるから刈り取って、ここはいいから伸ばしていこう、と。そうやって育てていただいた気がします。それといい先輩がいてくださったことが、本当にありがたいですね。中高生の時から大好きだった先生たちが、今もずっと素敵な作品を描いていらっしゃるんですよね。その時代に読みたいものを読ませてくださる。だから私も、変わっていきつつ、面白いと思う少女マンガをずっと描いていけたらと思っています。

河原和音オススメのマーガレット作品が読み放題!

ブックパスでは「俺物語!!」をはじめ、「青空エール」「先生!」「高校デビュー」「友だちの話」など、河原和音作品が6月30日までの期間限定で読み放題。またインタビューに登場した河原オススメのマーガレット作品もラインナップしているので、気になる作品がある人はこの機会にチェックしてみては。

  • いくえみ綾「ハニバニ!」
  • いくえみ綾「オススメボーイフレンド」
  • いくえみ綾「バラ色の明日」
  • きら「まっすぐにいこう。」
  • やまもり三香「シュガーズ」
  • 岩館真理子「遠い星をかぞえて」
  • 高梨みつば「悪魔で候」
  • 咲坂伊緒「BLUE」
  • 紡木たく「ホットロード」
  • 紡木たく「瞬きもせず」

ブックパス マーガレットコミックス特集

マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 特集一覧・連載作品年表はこちら
第1回 河原和音
第2回 咲坂伊緒
第3回 神尾葉子
第4回 中原アヤ
第5回 森下suu
第6回 あいだ夏波
第7回 やまもり三香
第8回 水野美波
第9回 幸田もも子
第10回 宮城理子
第11回 佐藤ざくり
第12回 椎名軽穂
第13回 小村あゆみ
第14回 いくえみ綾
第15回 ななじ眺
第16回 八田鮎子
番外編 マーガレット&別冊マーガレット編集長インタビュー

マーガレットコミックスが読み放題!

  • 原作:河原和音 作画:アルコ 「俺物語!!」
  • 河原和音「青空エール」
  • 河原和音「先生!」
  • 河原和音「高校デビュー」
  • 原作:河原和音 作画:山川あいじ「友だちの話」
ブックパス

スマートフォンやパソコンで利用できるauの電子書籍サービス。月額562円(税別)でマーガレット作品も読み放題!

アニメ「俺物語!!」日本テレビほかにて放送中! / Blu-ray&DVD Vol.1 / 2015年6月24日発売 / バップ
Blu-ray&DVD Vol.1 / 2015年6月24日発売 / バップ
Blu-ray Disc / 6264円 / VPXY-71391
DVD / 5184円 / VPBY-14421
河原和音(カワハラカズネ)
河原和音

1972年3月11日北海道滝川市生まれ。1991年別冊マーガレット(集英社)にて「彼の一番好きなひと。」でデビュー、以後同誌を中心に執筆活動を行う。1996年に「先生!」を連載、教師と生徒の恋愛を描きヒット作に。2003年には「高校デビュー」、2008年に「青空エール」を連載開始。「高校デビュー」は2011年に実写映画化を果たした。山川あいじ作画「友だちの話」、アルコ作画「俺物語!!」では原作を担当。「俺物語!!」は2013年「このマンガがすごい!」オンナ編1位、2013年に講談社漫画賞少女部門を受賞。2015年4月よりTVアニメが放送されているほか、実写映画化も決定している。


2016年1月22日更新