コミックナタリー Power Push -「甲鉄城のカバネリ」総集編

次回作にもつながる“フィジカルに訴える”総集編

「進撃の巨人」を手がけた荒木哲郎とWIT STUDIOがタッグを組んで制作されたオリジナルテレビアニメ「甲鉄城のカバネリ」。美樹本晴彦がキャラクター原案を務め、和風スチームパンクの世界観にゾンビパニックもの要素を取り入れた同作は、2016年4月から6月までフジテレビのノイタミナ枠で放送された。

そして2016年12月から2017年1月にかけ、総集編が前後編で劇場公開となる。コミックナタリーでは総集編の公開に合わせ、荒木監督と音楽を手がける澤野弘之の対談をセッティング。「進撃の巨人」「ギルティクラウン」とこれまでにもタッグを組んできた2人の出会いにはじまり、テレビアニメ版「甲鉄城のカバネリ」や澤野の劇伴、総集編の見どころ、先日制作が発表されたばかりの「甲鉄城のカバネリ」新作についてまでたっぷりと語ってもらった。

取材・文 / はるのおと 写真 / 佐藤友昭

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せっかちな澤野弘之と密かに熱い荒木哲郎の打ち合わせ

──「ギルティクラウン」「進撃の巨人」に続いて「甲鉄城のカバネリ」で3作目のタッグとなりますが、おふたりの最初の出会いは?

左から澤野弘之、荒木哲郎。

荒木哲郎 まず、最初に澤野さんのことを知ったのが「機動戦士ガンダムUC」の1話でした。クライマックスのユニコーンガンダム起動時にテーマ曲がかかるじゃないですか。それが身震いするほど気持ちよくて。「こんな曲を書く人が近くにいてくれたらなあ……」と滅茶苦茶羨ましく思いました。

澤野弘之 はい、おっしゃっていましたね。

荒木 その後に「ギルティクラウン」をやることになり、劇伴作家の候補に澤野さんがいらっしゃって。それで「ぜひ」とお願いしました。

澤野 確かオファーをいただいたのは「青の祓魔師」などの劇伴をやっていた頃ですね。

──それから5年ほど経って、お互いの人柄と仕事ぶりをどのように思われますか?

「甲鉄城のカバネリ」主人公の生駒。

澤野 荒木監督は普通に話すとちょっとクールな印象もありますが、作品を観ると皆さんもわかるでしょうけど、本当にすごく熱い方ですよね。監督の内側から出てくるエネルギーが毎回伝わってきて、そのエネルギーに影響されて自分も同じ熱量の音楽で返したいという気持ちになります。あと監督は僕が提出した音楽をすごく聴いてくださっていて、ありがたいですし、曲を預ける側としては安心できます。

荒木 そう言ってもらえるとすごくありがたいです。俺から見ると澤野さんはすごく軽い感じの人なのに、どうしてあんな重厚な曲を書けるんだろうかと不思議で(笑)。ライブのMCなんて、曲を台無しにするぐらい軽いのに……でもそれがいいんですよ。そんな澤野さんの劇伴のおかげでフィルムの格調が上がります。

澤野 いえいえ、とんでもないです。でもさすがに僕だって作曲しているときはこんな調子じゃないですよ(笑)。僕はせっかちなところがあって、どんどんしゃべっちゃうんですよ。

奥から澤野弘之、荒木哲郎。

荒木 せっかちで思い出しましたけど、澤野さんとの打ち合わせはすごく早く終わるんです。これまで澤野さんと2人で打ち合わせした時間を全部合わせても2時間にも満たないんじゃないかな。こちらが長く話そうと思っても、澤野さんが「はいはい! わかりました!」って言って(笑)。

澤野 何かの舞台挨拶で荒木監督が「澤野さん、すぐ帰ろうとするんですよ」とおっしゃっていたみたいですが、そういうわけじゃないですから!

荒木 でも、悪い感じはしないです。「伝わったな」って思っていますし。

澤野 作家さんによっては、劇伴のメニュー表について「これはどういう雰囲気にしましょう」とじっくり探ったり、アイデアを出したりという人もいるかもしれませんけど、僕は違って。その場でアイデアとかほとんど浮かばないから、とりあえずコンピュータの前に座って作業をして、できあがった曲を聴いていただくしかないんです。……でも今度はもうちょっと長くしゃべるようにがんばります(笑)。

自由に作られた劇伴で「甲鉄城のカバネリ」の世界が広がる

──ではテレビアニメ版の「甲鉄城のカバネリ」について伺います。この企画はどのように始まったのでしょうか?

荒木 「甲鉄城のカバネリ」を作っているWIT STUDIOのアニメーターが一番得意なのがアクションもので、彼らが活きるものを作るというのが最初のテーマでした。その上で自分が意図したのは、この多数のアニメが存在するシーンにおいていかにして目立つか。少なくとも同クールに似たような作品が存在しないことを目標に企画をスタートさせました。

──和風スチームパンクの世界観にゾンビというのも斬新でした。

「甲鉄城のカバネリ」の世界にはびこる不死の怪物・カバネ。噛まれた者は一度死んだのちにカバネとなって蘇り、人を襲う。

荒木 ヒロインが誰かを殺しちゃっても、彼女が嫌われないようにするにはどうすればいいか……それを考えていてゾンビになりました。ゾンビなら人間と比べて、殺しても嫌悪感を抱かれないだろうと。ほかにもいろいろと理由はありますが、一番大きいのはそこです。

──「甲鉄城のカバネリ」の音楽面についてはどんなオーダーを?

荒木 「和に寄り添い過ぎず、ご自由に」という感じですね。澤野さんにお願いするときはいつもそうですが、自由に作った劇伴で作品の幅を広げてほしいんです。そうして上がってきた曲を聴いて、「これ、すごいな!」「この曲、どうやって使えばいいんだろう」ってなり、こちらも燃えるんですね(笑)。だから作品のある程度のジャンルや絵柄から受けたインスピレーションを自由に鳴らしてほしいんです。

澤野 この受け皿の広さにいつも助けられて、本当に幸せだと思っています。もちろん細かく指定をもらう作品もありますが、僕の場合は自由にやらせていただけるほうが好きですね。もし「和にこだわってください」と言われると、音楽アプローチの幅が狭まり、似たり寄ったりの曲ばかりになる可能性もありますし。それよりはいろんなジャンルを取り入れて、その作品の世界観を表現したいです。

──「甲鉄城のカバネリ」の劇伴で特に印象的な曲は?

甲鉄城に乗って現れた謎の少女・無名は生駒たちと行動をともにすることに。

澤野 もちろんいっぱいありますが、強いてひとつを挙げるならやはりメインテーマの「KABANERIOFTHEIRONFORTRESS」ですね。力を入れて作りましたし、最初に生駒がカバネリになるシーンで鳴って、自分も観ていてすごく興奮しました。あとは劇伴の中には、アクセントになるようボーカル曲も入れていますが、荒木監督にも面白がって使っていただけて。無名が活躍するシーンで「Warcry」が流れたあたりも気に入っています。

荒木 最初にいただいて聴いたときはそんなに印象に残ってなかった曲も、シーンと合わせると、想像以上にエモーショナルに響くときがあるんです。つまり俺がこだわるのは、絵と曲をいかに合わせるかなんですよ。シーンの意図しているエモーションと、曲が出しているエモーション、そのチューニングが合ったときに快楽が何倍にもなるんです。「甲鉄城のカバネリ」においては、メインテーマがそういうエクスプロージョンをもっとも大きく起こしてくれた曲なのは間違いありませんね。戦いに勝つシーンがすべてあの曲なんですよ。あの曲の前奏が流れただけでもう勝つんだなってわかる(笑)。

群体化した巨大なカバネに襲われ、それまでバラバラだった甲鉄城の面々が結束して戦う。前半のクライマックスとなる6話のこのシーンをメインテーマが盛り上げた。

──6話ラストの戦闘シーンは特にそれを強く感じました。

荒木 あの回は本当にうまくいきましたね。あんなに気持ちいいフィルムって、この世にどれだけあるのかなって自分でも思うくらいです。

「『甲鉄城のカバネリ』総集編」

「甲鉄城のカバネリ」公式サイト

産業革命の波が押し寄せ、近世から近代に移り変わろうとした頃、世界はカバネと呼ばれる不死の怪物に覆い尽くされる。極東の島国・日ノ本の人々は、各地に駅と呼ばれる砦を築き、蒸気機関車、通称・駿城(はやじろ)を使い駅の生産物を融通しあうことで生活を保っていた。

そんなある日、カバネを倒すための武器「ツラヌキ筒」を独自に開発する蒸気鍛冶の少年・生駒は不思議な少女・無名と出会う。その夜、カバネに乗っ取られた駿城が生駒の暮らす顕金駅へと暴走しながら突入してきた。パニックに襲われる人々の波に逆らうようにして、生駒は走る。今度こそ逃げない、俺は、俺のツラヌキ筒でカバネを倒す!

前編「集う光」2016年12月31日(土)、
後編「燃える命」2017年1月7日(土)より
それぞれ2週間限定全国公開

スタッフ
  • 監督:荒木哲郎
  • シリーズ構成・脚本:大河内一楼
  • キャラクター原案:美樹本晴彦
  • アニメーションキャラクターデザイン・総作画監督:江原康之
  • 音楽:澤野弘之
  • アニメーション制作:WIT STUDIO
キャスト
  • 生駒:畠中祐
  • 無名:千本木彩花
  • 菖蒲:内田真礼
  • 来栖:増田俊樹
  • 逞生:梶裕貴
  • 鰍:沖佳苗
  • 侑那:伊瀬茉莉也
  • 巣刈:逢坂良太
  • 吉備土:佐藤健輔
  • 美馬:宮野真守
荒木哲郎(アラキテツロウ)

1976年11月5日生まれ、埼玉県狭山市出身のアニメーション監督・演出家。マッドハウスに入社後、「ギャラクシーエンジェル」シリーズなどの演出や絵コンテを手がける。2005年にOVA「おとぎ銃士 赤ずきん」で監督としてデビュー。その後「DEATH NOTE」「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」「ギルティクラウン」「進撃の巨人」「甲鉄城のカバネリ」などの監督を担当。最新監督作として「甲鉄城のカバネリ」総集編前編「集う光」が2016年12月31日、後編「燃える命」が2017年1月7日よりそれぞれ2週間限定で公開される。次回作は総監督を務める「進撃の巨人 Season2」。

澤野弘之(サワノヒロユキ)

1980年生まれ、東京都出身の作曲家、編曲家。「医龍」シリーズや、「アルドノア・ゼロ」「進撃の巨人」「キルラキル」「機動戦士ガンダムUC」シリーズなど、ドラマ、アニメ、映画など映像作品のサウンドトラックを中心に、楽曲提供や編曲をするなど精力的に音楽活動を展開している。2014年春からはボーカル楽曲に重点を置いたプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]を始動。2016年5月にアニメ「甲鉄城のカバネリ」のサウンドトラック、6月にSawanoHiroyuki[nZk]名義でアニメ「機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096」のオープニングテーマおよびエンディングテーマを収録したシングル「Into the Sky EP」、7月にはデジタルシングル「CRYst-Alise EP」をリリースした。