コミックナタリー PowerPush - えすとえむ×オノ・ナツメ
飲んだ喋った描いた4時間半 粋な女友達が酩酊お絵描き対談!
「ゴロンドリーナ」は衣装すごいよね(オノ)
えすと あたし「五葉」のときは宗次派だったけど、「ふたがしら」では弁蔵がめっちゃカッコいいと思う。あのふたりが「仏の宗次」「鬼蜘蛛の弁蔵」になっていくんだね。
オノ おおまかな流れはもちろん決めているけど、描いてると弁蔵がどんどんいいやつになっていくのよね……。ふたりの関係がどう移り変わって「五葉」へと繋がるのか、結果が見えている状態に向かって話を進めていくというのも意外な緊張感が。
えすと 一度完成した「五葉」の世界を掘り返すってことですもんね。IKKIはよくチャレンジさせてくれたなと。私も「闘牛の話がやりたい!」って一心をぶつけて「ゴロンドリーナ」を描かせてもらってるし。好きなものをのびのび描ける場所っていうのは本当にありがたいです……ありがとうございます!
オノ せっかくチカを描くのだから闘牛士の格好をさせたいけど、わたし全然わからないな……。「ゴロンドリーナ」は衣装の描き込みがすごいよね。
えすと 今はアシスタントさんに結構描いてもらってるんだけど、やっぱ実物を見ながら描くのが一番だから、闘牛の服を作るところにまで行って、服の飾りの見本みたいなのを買ってきたのよ。あとはスペイン取材で撮ってきたた写真が山ほどあるけど、見る?
オノ 見る見る! うわ、これすごく近くで撮ってるけど、目線の高さが闘牛士と一緒じゃん、すごい。こんな席が取れるの?
えすと この日はね、贔屓にしてる闘牛士の試合だから100ユーロ払って良席ゲットしました。ただ闘牛の試合って、マタドールだけじゃなく牛も重要なんです。この日は相手の牛があまり良い牛ではなかったので、それが残念。最終的には良い試合になって、プエルタ・グランデができた(正面門から肩車で担がれて退場すること)からよかったけど。
この対談でのNGワードをあらかじめ決めておいたんです(オノ)
オノ へええ。スペインなんて一生のうちに何度も行ける場所じゃないんだから、良い席で観たいよね。
えすと いまスペイン闘牛界でもっともチケットが売れてる、ホセトマスの試合も見てきましたよ。正直、闘牛界って全体的には景気が悪い状況なのだけど、彼が出場するときだけは出場回数が少ないこともあって、スペイン全土からファンが押し寄せるっていう人気者。バルセロナでは闘牛が禁止されたりいろいろ厳しい状況ではあるけど、でも現地に行くとやっぱりいいものは見れますよ。
オノ えむちゃんの絵を見ててスゴいなって思うのが、金属とか物の質感なんだよね。盛り上がった感じとかがさ、どうやったら出せるんだろう。私が描いたら、これ(闘牛士の肩に付いたアクセサリー)菊みたいになったぜ?
えすと ナツメさんがチカを描くっていうこと自体がすごいことなんだから、いいですよ菊でも! これ、もらって帰っていいんですか?
──コピーしてお渡しします。というかこれをラフとしてイラストを描かなきゃいけないんですよ、このあと。
えすと そうでした(笑)。あー、結局ワイン何本空けました? 5本か。ナツメさんもほんとは結構飲んでるんじゃないですか?
オノ 私まだ飲めますよ。というのもね、私、この対談でNGワードを自分で決めといたの。で、あらかじめシェフに、その話題が私の口から出たら酔っ払った合図なので、水を出してほしいってお願いしてて。
えすと なにそれ、すごい。まだ水が出てないってことは、これだけ飲んでも自制心が効いてらっしゃると。
オノ そうなのよ! あのね、ほんとはずっと、えむちゃんとその話がしたくてしたくて、我慢してたの。あのね、最近ね……
シェフ お水をお持ちいたしました。
えすと 言っちゃった!
両作品の第1話がまるごと試し読みできる特設サイトはこちらから!
「Golondrina-ゴロンドリーナ」をさらに楽しむための闘牛解説ページも登場
闘牛士であり続けること。その困難な道。
見習い闘牛士としてデビューを果たしたチカ。しかし、その初戦は惨憺たる結果に。教えられた通りのことをこなしていながら、なぜ精彩を欠いた闘牛士しか出来ないのか……。そんな中、フラメンコを踊る老女の姿に一筋の光を見出したチカは……?
男達の中で一人輝く粋な女・チカ、その苦闘をたっぷりと描いた第3巻!
大坂の夜坂一味に合流した弁蔵と宗次。しかし、まずはその力量を試されることに。不案内な大坂の町をさまよい、なんとかその腕を見せようとするふたりだったが、そこにはとんでもない罠が……?
粋な男ふたり組、その魅力がたっぷり詰まった第3巻!
えすとえむ
2006年、東京漫画社から発売されたBL作品「ショーが跳ねたら逢いましょう」でデビュー。スタイリッシュな画風と情緒豊かな内容で人気を博す。フィー ル・ヤング(祥伝社)にて連載された「うどんの女」が「このマンガすごい!2012」のオンナ編第3位にランクイン。2011年からは月刊IKKI(小学 館)にて闘牛をテーマにした「Golondrina ゴロンドリーナ」を、2012年からはジャンプ改(集英社)にて若き靴職人を描く「IPPO」を連載。BL誌、女性誌のみならず、青年誌にまで活躍の幅を広げている。
オノ・ナツメ
2003年、COMIC SEED!(ぺんぎん書房)にて「LA QUINTA CAMERA」でデビュー。ヨーロッパの雰囲気を上手に切り出した、小粋でアンニュイな人間模様を描き人気を博す。2009年に代表作「リストランテ・パ ラディーゾ」がテレビアニメ化、続いて2010年に「さらい屋五葉」がTVアニメ化される。2011年5月、月刊IKKI(小学館)にて「ふたがしら」を連載開始。そのほかの著書に「つらつらわらじ」「GENTE(ジェンテ)」「逃げる男」「COPPERS」などがある。