コミックナタリー PowerPush - えすとえむ×オノ・ナツメ
飲んだ喋った描いた4時間半 粋な女友達が酩酊お絵描き対談!
好きなもので共通するのは、コルト・マルテーゼとお酒(えすと)
えすと コルトは超カッコいいもんな! 好きなもので共通するのは、ほんとそれくらい。あとは……お酒?
──マグナムボトルのシャンパンが、もう空いてしまいましたね……。
えすと 泡は飲み飽きたから、次は別のいきたいっすねー。
オノ シェフ、ボトル空きました! 次は白かしら。
──同時発売を記念して、IKKIではおふたりのコラボ表紙が企画されています。実は今日の対談は、そのラフ案の打ち合わせも兼ねておりまして。編集部からのテーマは「粋な女、粋な男」だそうです。
えすと こんな飲んだ状態で、仕事の話キター(笑)。表紙ってガチの絵じゃないですか。色紙とか、おもろいラクガキとかじゃなく?
オノ 普通に考えると、コラボって言っても、時代も場所も違うのがハードルじゃないですか。「ゴロンドリーナ」は現代のスペイン、「ふたがしら」は江戸時代。そこを無視しちゃって宗次と弁蔵、チカが一緒にいるって無茶な感じが面白いのかな。……男女3人並べると、「レモン持たさなきゃ」みたいな気にならない?
えすと テレビジョンの表紙ね(笑)。ベタにやると、どうしても明星とかテレビジョン的になりますね。
ナツメさんの絵で自分のキャラ描いてもらうの泣けるわ(えすと)
えすと 粋な男女ってテーマだったら、酒場とかにいるといいんじゃないすかね。たとえば場所はスペイン、タイムスリップしてきた宗次と弁蔵がバルとかで飲んでる感じ。
オノ えむちゃんの絵、牛がバーテンダーしてる(笑)。っていうか「粋な男、粋な女」って「IKKI」とかけた駄洒落? いま気付いた!
えすと ……もう一度設定から考えましょうか。逆パターンで、江戸を舞台にして、宿場町とかにチカが行くっていうのは不自然かな。
オノ じゃあ江戸の町に暴れ牛が出て、チカがそこら辺にあった風呂敷でふぁっさーっとかわしてるっていうのは? 宗次と弁蔵は役立たずな感じで、呆気にとられてポカーンと。なにげに背景に「子連れ同心」とかも描いてみちゃったりして。
えすと おおっ、これは豪華でいいんじゃないですか? なにげに背景にセチュいるし。チカといい、ナツメさんの絵で自分のキャラ描いてもらうの泣けるわ。
オノ えむちゃんには「さらい屋五葉」の連載中に、松を描いてもらったよね。私は人に自分のキャラクターをよく描いてもらうのだけど、人様のキャラクター描くことはあんまりないんだ。ごめんよ……。
作品の中でキャラが成長するっていう感覚を初めて味わった(オノ)
えすと いやいや好きで描かせてもらっとるから。というか「五葉」はほんと、よく終わらせたよね。私、政の成長に泣いたもん。1人の主人公がちゃんとああやって独り立ちしてくって姿に。いままでにない感じを受けたから。
オノ や、それは私もマンガ描いててね、作品の中でキャラクターが成長するっていう感覚を初めて味わったというか。
えすと 正直はじめは政って存在感薄くて、脇役がたってたから、八木さんとか梅好きだーと思ってたんだけど、だからこそあの成長に感動したというか。
オノ 一種親的な、「うちの子がこんなに大きくなってー」っていう感動があったもん。だから作者的に「五葉」の中で一番好きなキャラってなると政なんです。けど、でもミーハーな気持ちで人に描いてもらいたいキャラってなると……私も松かな(笑)。
──「五葉」には宗次と弁蔵も登場していますよね。物語としては「ふたがしら」が前日譚に当たるのでしょうか。
オノ 「五葉」に登場する、もう引退した盗賊の頭領2人が若かりしころを「ふたがしら」では描いてます。描き始める前の打ち合わせでは「湘爆」とか「ビーバップハイスクール」みたいなヤンキーもの風な話が描きたいって話をしたんです。
えすと えっ「湘南爆走族」?
オノ ヤンキーの「上り詰めてやるぜ」みたいな気迫というか。すでに成り上がったやつらが、上を目指している段階の勢いみたいなものが描きたかった。前日譚であるとか、後との繋がりみたいなのは「五葉」読んでる人からしてみたらっていうくらいで。
闘牛士であり続けること。その困難な道。
見習い闘牛士としてデビューを果たしたチカ。しかし、その初戦は惨憺たる結果に。教えられた通りのことをこなしていながら、なぜ精彩を欠いた闘牛士しか出来ないのか……。そんな中、フラメンコを踊る老女の姿に一筋の光を見出したチカは……?
男達の中で一人輝く粋な女・チカ、その苦闘をたっぷりと描いた第3巻!
大坂の夜坂一味に合流した弁蔵と宗次。しかし、まずはその力量を試されることに。不案内な大坂の町をさまよい、なんとかその腕を見せようとするふたりだったが、そこにはとんでもない罠が……?
粋な男ふたり組、その魅力がたっぷり詰まった第3巻!
えすとえむ
2006年、東京漫画社から発売されたBL作品「ショーが跳ねたら逢いましょう」でデビュー。スタイリッシュな画風と情緒豊かな内容で人気を博す。フィー ル・ヤング(祥伝社)にて連載された「うどんの女」が「このマンガすごい!2012」のオンナ編第3位にランクイン。2011年からは月刊IKKI(小学 館)にて闘牛をテーマにした「Golondrina ゴロンドリーナ」を、2012年からはジャンプ改(集英社)にて若き靴職人を描く「IPPO」を連載。BL誌、女性誌のみならず、青年誌にまで活躍の幅を広げている。
オノ・ナツメ
2003年、COMIC SEED!(ぺんぎん書房)にて「LA QUINTA CAMERA」でデビュー。ヨーロッパの雰囲気を上手に切り出した、小粋でアンニュイな人間模様を描き人気を博す。2009年に代表作「リストランテ・パ ラディーゾ」がテレビアニメ化、続いて2010年に「さらい屋五葉」がTVアニメ化される。2011年5月、月刊IKKI(小学館)にて「ふたがしら」を連載開始。そのほかの著書に「つらつらわらじ」「GENTE(ジェンテ)」「逃げる男」「COPPERS」などがある。