コミックナタリー Power Push - 「ヒメアノ~ル」
古谷実ファンの吉田恵輔監督が語る“集大成に「ヒメアノ~ル」を選んだ理由”
俺、クソロリコン野郎なんですよ
──先ほど「原作から変えてる」とおっしゃっていましたが、森田と並んでユカも監督のオリジナリティが出ていましたね。佐津川愛美さん演じるユカは、安藤に好かれて、岡田と付き合って、森田に狙われるという物語のキーパーソンですが、原作のしっかりしたタイプの女性ではなく色気のある小悪魔キャラになっていました。
原作のユカが、タイプじゃないんだよな。俺、クソロリコン野郎なんですよ(笑)。
──クソロリコン野郎。
モデルさんみたいな女の人がすごく苦手というか。YUKIちゃんが永遠のアイドルなんです。映画ではユカが森田に襲われるけど、原作のお姉さんっぽいタイプよりも、幼い感じの女の人が鼻血出してるほうが、俺の中で「あかん!」って気持ちになる。
──映画のユカは清楚さとロリっぽさが出ていました。でも「経験人数10人」って言ってましたね。
10人じゃなくて「10人ちょい」ね。「ちょい」ってなんだよ!って。「ちょい」が何かわかんないから余計気になって眠れなくなる。「12人」とか言われたほうがいいわ、みたいな。
──失礼しました(笑)。確かに監督の「さんかく」でも、小野恵令奈さんが演じた桃は小悪魔な15歳でしたね。幼くも色気がありました。
俺はいやらしいおじさんかもしれないけど、その目線では撮ってないんだ。もし神様がいて願いを聞いてくれるなら、女の子になりたい。だから、自分が女の子になってやりたいことを撮ってる感覚。「無防備にお風呂上がりにこんな格好していることへの自覚がない私」、みたいな感じの女の子になりたい。
──天然で小悪魔な女の子になりたいんですね。じゃあ今回も佐津川さん演じるユカに……。
そう、ユカになりたい。
古谷さんのマンガを読んだことがない頭にリセットしたい
──古谷実さんは、イブニング(講談社)で3年ぶりの新連載「ゲレクシス」をスタートさせました。
読みました。俺は基本的に古谷さんの作品を穿った読み方でしか読めない。
──じゃあ、この一見“中年男性の恋愛”みたいな作品も……。
ただの中年の恋とか、モテないおじさんの珍道中みたいな話なんかじゃないでしょって思ってるから、すっごくドキドキしちゃう。で、案の定3話目で幽霊みたいなのが出てきて。これもギャグっぽく見せてるけど、ギャグなのかだいぶ怪しい。
──すべてを疑ってますね(笑)。
1回、古谷さんのマンガを読んだことがない頭にリセットしたいですね。素直に読んでみたい。警戒心が芽生えすぎている。
──騙されないぞって。
この導入、尋常じゃない力がありますよね。キャラクターのうまさとか、1話目の作り方とか本当に魅力的で。でも、めっちゃ面白いけど、これは仮の姿で、話が進むにつれて、胸が苦しくなるような悲惨な展開や頭がおかしいことになるとか……。
──ありえますね。
でも、逆にホントにただのギャグマンガでも、結局1本取られますよね。警戒して構えておきながら「ギャグだった!」って。どっちに転がっても振り回されるだろうな。3話まで読んで、すっごい笑いましたけど、心は警戒心でいっぱいです。
- 古谷実「ヒメアノ~ル」/ 全6巻 / 発売中 / 講談社 / コミック 各576円 / Kindle版 各540円
- 「ヒメアノ~ル」1巻
- 「ヒメアノ~ル」1巻 / Kindle版
- 「ヒメアノ~ル」2巻
- 「ヒメアノ~ル」2巻 / Kindle版
- 「ヒメアノ~ル」3巻
- 「ヒメアノ~ル」3巻 / Kindle版
- 「ヒメアノ~ル」4巻
- 「ヒメアノ~ル」4巻 / Kindle版
- 「ヒメアノ~ル」5巻
- 「ヒメアノ~ル」5巻 / Kindle版
- 「ヒメアノ~ル」6巻
- 「ヒメアノ~ル」6巻 / Kindle版
不安と不満が人間を作る──。やりがいや夢、大切な人、みんなが持ってる何かを僕は持っていない……。不安や不満を抱えた普通の人間と、快楽殺人者の心情を並行して描いたリアルストーリー。
映画「ヒメアノ~ル」 / 2016年5月28日よりロードショー
「なにも起こらない日々」に焦りを感じながら、ビル清掃会社のパートタイマーとして働く岡田(濱田岳)。同僚の先輩・安藤(ムロツヨシ)に、想いを寄せるユカ(佐津川愛美)との恋のキューピット役を頼まれ、ユカが働くカフェに向かうと、そこで高校時代の同級生・森田正一(森田剛)と出会う。ユカから、森田にストーキングされていると知らされた岡田は、高校時代、過酷ないじめを受けていた森田に対して、不穏な気持ちを抱くが……。岡田とユカ、そして友人の安藤らの恋や性に悩む平凡な日常。ユカをつけ狙い、次々と殺人を重ねるサイコキラー森田正一の絶望。今、2つの物語が交錯する。
- スタッフ / キャスト
- 原作:古谷実「ヒメアノ~ル」(ヤングマガジンKC所載)
- 監督・脚本:吉田恵輔
- 音楽:野村卓史
- 出演:森田剛、佐津川愛美、ムロツヨシ、濱田岳
吉田恵輔(ヨシダケイスケ)
1975年5月5日生まれ、埼玉県出身。東京ビジュアルアーツ在学中から自主映画を制作しており、塚本晋也監督の作品制作では照明を担当。現場では、映画のほかにプロモーション・ビデオ、CMの照明も経験。2006年に「なま夏」を自主制作、本作で同年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭・ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門でグランプリを獲得。その後も、塚本作品などで照明技師として活動する傍ら、2008年に小説「純喫茶磯辺」を発表、同年自ら映画化した。2013年に「ばしゃ馬さんとビッグマウス」「麦子さんと」、2014年に「銀の匙 Silver Spoon」などが公開。
©2016「ヒメアノ~ル」製作委員会
©古谷実/講談社