コミックナタリー PowerPush - 山本英夫「HIKARI-MAN」

山本英夫、ヒーロー物で「垂れ流し卒業」?4年ぶりの週刊新連載、その思いを語る

人間を描くのなら人間を描けばいい

──新作「HIKARI-MAN」のテーマをひとことでズバリ言うとしたら、何になるんでしょう。

「HIKARI-MAN」第1話より。

ヒーローもの、ですかね。

──おお、「HIKARI-MAN」というタイトルから少し想像はしていましたが。

あとマンガに限らず映画でもなんでもそうだと思うんですが、例えば野球が題材になった作品って、野球を描くんではなくて、野球を通して人間を描いている。ちょっと不遜な物言いになってしまいますが、それってちょっと遠回りなんではないかな、と。人間を描くのなら人間を描けばいいじゃないのと思うんですよね。最初にそれを実行したのが「ホムンクルス」なんですが。

──なるほど。

で、今回は電気化している人間を描くことによって、それと対極な泥臭い感情というか、地の部分を描きたいなと。だから究極的には、人間をどう見せるか、どう描くかというのがテーマかもしれません。そのために今回は、キャラクターも際立たせられたらと思ってます。

──今作のキャラクターの造形で、気をつけた部分はありますか?

ちょっと、萌え系にしたりとか。秋葉原が主な舞台というのもあって、読者にスムーズに入るのはそのメロディというか、絵柄なんじゃないかなあと思ったんですよ。

──秋葉原とは電気街という点でも題材としてつながっていますよね。光や電気、というのはどこから着想を。

電気という科学現象は、人間の持ってる割り切れない感情とかとは対極のものじゃないですか。右脳か左脳かで言ったら左脳寄りで。だから、人間をより見せるためのキック力がある。

──人間の感情と対になるものとして、機械や電気を持ってきたと。

まあ、よくあるパターンですけどね。正義を描くのにも悪役というキック力が必要ですし。機械を制御するのは結局人間という点では、ロボットものとも共通しているかもしれない。それのちょっと変形バージョンというか。

現象としてヒーローを描く

──なるほど。「ヒーローもの」と一口に言っても、山本先生ならただでは済ませないだろうと読者は考えるでしょうね。

山本英夫

ああ、そういうのはうれしいです。映画で似たようなテーマを撮っていても「この監督なら何かやってくれるだろう」みたいなね。でもこの後の展開は、意外と普通かもしれない。

──正義のヒーローに変身して、悪と戦っていくという?

いや、変身はしないんです。

──あ、そうなんですか。てっきりアメコミのヒーローのようなものにバッと変化するのかと。

「HIKARI-MAN」のヒーロー像については、一時期かなり悩んで。僕、キャラクターデザインの才能がないので……。いろいろな映画を観たり、専門学校でキャラクターデザインをやっている先生のところに話を聞きに行ったり、それこそ有名なイラストレーターの方に頼めないかと思ったりとか、試行錯誤したんですよ。それぐらい自分の中にヒーロー像、というのがなかった。それでもう今回はキャラデザという概念を捨てて、現象を描こうと。

「HIKARI-MAN」第1話より。

──現象といいますと。

人の体の中に電気が流れるという科学現象ですね。単純にそれが起き、身体がリアクションした結果としてヒーローを描く。そういった意味では、いわゆるマスコットキャラクターにしづらいかもしれない。

──うーん、なるほど。まだ第1話の段階ではヒーローは出てきていませんから、果たしてどのようなビジュアルになるのかすごく興味をそそられますね。

結果としてどういう造型になっているか、というのは見てもらいたいところではあります。ちょっと気持ち悪いので、苦手な人は苦手かも。でも僕らしいヒーローもの、といったらそこらへんが特徴になるんじゃないですかね。

「週刊ビッグコミックスピリッツ 2015年2・3合併号」2014年12月8日発売 / 350円 / 小学館
掲載ラインナップ
  • 山本英夫「HIKARI-MAN」
  • 花沢健吾「アイアムアヒーロー」
  • 玉井雪雄「ケダマメ」
  • ゆうきまさみ「白暮のクロニクル」
  • 阿部潤「忘却のサチコ」
  • 河合克敏「とめはねっ!鈴里高校書道部」
  • 高橋のぼる「土竜の唄」
  • 真鍋昌平「闇金ウシジマくん」
  • 長月キュー「東伍郎とまろすけ」
  • 浅野いにお「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」
  • さだやす(ストーリー協力:深見真)「王様達のヴァイキング」
  • 曽田正人(原案:瑞木奏加)「テンプリズム」
  • 吉田戦車「おかゆネコ」
  • 小田扉「団地ともお」
  • せきやてつじ「火線上のハテルマ」
  • 丹羽庭「トクサツガガガ」
  • 高尾じんぐ「くーねるまるた」
  • こざき亜衣「あさひなぐ」
  • 手原和憲「夕空のクライフイズム」
  • 柳広司/渡辺雄介/霜月かよ子「ジョーカー・ゲーム」
  • 水口尚樹「小光先生の次回作にご期待ください。」
  • はまむらとしきり/村正みかど「エロゲの太陽」
  • ホイチョイ・プロダクションズ「気まぐれコンセプト」
  • 中崎タツヤ「じみへん」
  • 原克玄「るみちゃんの事象」

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山本英夫(ヤマモトヒデオ)

1968年生まれ。1989年、週刊ヤングサンデー(小学館)掲載の「SHEEP」でデビュー。以後「おカマ白書」「のぞき屋」「殺し屋1」「ホムンクルス」と、常に先鋭的な題材をテーマに、メガヒット作を連発。2014年12月発売の週刊ビッグコミックスピリッツ2・3合併号(小学館)より、4年ぶりとなる待望の巨弾新連載「HIKARI-MAN」をスタートさせる。