コミックナタリー Power Push - 創刊5周年記念 月刊ヒーローズ

"3カ月連続企画 第3回 白井勝也×高橋留美子 対談

“読者”だった高橋留美子が語るあの頃のマンガ、描き続けたいもの

“時代が求めるニューヒーロー”を輩出し続ける雑誌・月刊ヒーローズ(ヒーローズ)。「ウルトラマン」の後日譚となる「ULTRAMAN」や、マンガ版「仮面ライダークウガ」、「鉄腕アトム」の誕生までを描く「アトム ザ・ビギニング」など、さまざまな“ヒーローマンガ”を連載している同誌は、11月1日に創刊5周年を迎えた。

コミックナタリーではこれを記念し、3カ月連続となる連載企画を展開。今年6月にヒーローズの代表取締役社長に就任した白井勝也と、彼に縁のあるゲストとの対談を掲載していく。週刊少年サンデーの編集部に在籍後、1980年の創刊時より10年間、週刊ビッグコミックスピリッツ(ともに小学館)の編集長を務めた白井。連載企画の最終回となる第3回には、「うる星やつら」「らんま1/2」など数多くのヒット作を生み、スピリッツの創刊時より「めぞん一刻」を連載していた高橋留美子が登場する。白井と高橋、師弟関係とも呼べる2人が当時の思い出話に花を咲かせ、マンガのこれからについても語った。

取材・文 / 斎藤宣彦 撮影 / 佐藤友昭

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デビュー前に学んだこと

──おふたりが初めて会われたのはいつ頃でしょうか。

左から白井勝也、高橋留美子。

高橋留美子 1980年にビッグコミックスピリッツが創刊されて、「めぞん一刻」の連載2回目か3回目を描いていたときでしょうか。担当者と打ち合わせをしている小学館近くの喫茶店に白井さんが姿をあらわして、挨拶したのが最初だと思います。白井さんは「編集長です」とおっしゃっていた。そのときはそんなに会話はしなかったような気がします。

白井勝也 最初は挨拶だけのことが多いみたいですよ、あとで周囲に聞くと(笑)。

高橋 白井さんが週刊少年サンデーに在籍されていたときは、お会いしていないですよね。今日はいろいろお聞きしたいと思っているんですけど、白井さんが小学館に入社されたのはいつでしたか。

白井 1968年に入社して、サンデー編集部に配属されてから6、7年してビッグコミックに移ったんです。サンデーが売れてない時期に入社したから、そのときは「もうサンデーは解散する」と言われていた。

高橋 え、サンデーがですか!?

白井 編集部を解散して、学年誌と合併するという噂がありました。学年誌は幼稚園、小学1年生、小学2年生が各100万部前後の発行で、当時の小学館は“学年誌王国”だったんです。サンデー編集部員は会社の廊下の隅を、学年誌の人たちは真ん中を通る。そんな時代でした。

高橋 意外ですね。

白井 ライバル誌の週刊少年マガジン(講談社)は100万部に届こうというとき。そのうえ週刊少年キング(少年画報社)も、息遣いくらいが聞こえるところまで追いついてきていた。

高橋留美子

高橋 その頃私は完全に読者でした。少年誌はけっこう網羅して読んでいたかも。マガジンはもともと読んでいて、キングは「ワイルド7」(望月三起也)が始まってから読み出しました。

白井 1960年代中盤、ギャグマンガの「おそ松くん」「オバケのQ太郎」でサンデーの王国が築かれたんですよ。マガジンは内田勝さんという凄腕の編集長がストーリーマンガで勝負をかけてきた。「巨人の星」「あしたのジョ―」があり、水木しげる先生、石川球太先生……と、ラインナップがビシッとしていて隙間がない。一方のサンデーは、本格的なストーリーマンガがあまり得意ではなかったんです。

高橋 マガジンは横尾忠則さんが表紙を担当したりと、ビジュアルにも力を入れていましたよね。サンデーもなんとかしようとしている雰囲気は伝わってきました。

白井 表紙をいきなり変えたりね。

高橋 便器の中に卵がいっぱい詰まっている写真の表紙とか。

白井 ええ、現代美術風のシュールな表紙でしたね。70年代前半は売れ行きに苦戦しつつ、方向を模索していた時期でした。高橋先生は大学何年生のときにサンデーに投稿されたんですか。

高橋 大学2年生の冬に応募作を描いて、3年生になった年の6月に「勝手なやつら」でデビューしました。応募してまだ結果が出ていない頃、(ヒーローズの前社長でもある)担当編集者の三宅克さんが楳図かずお先生の担当もされていて、楳図先生の仕事場に呼ばれたことがありました。それが初めて見るプロの仕事場だったと思います。

白井勝也

白井 高橋先生は、マンガは独学で描かれたんですか。

高橋 いえ、小池一夫先生の劇画村塾(第1期生)で、大学2年生のときに半年間学びました。

白井 どんなことを教わりました?

高橋 子供の頃は、マンガそのものがテキスト(教科書)になりますよね。好きなマンガのコマ割りや構図を、理屈はわからないなりに真似して描いていた。小池先生は、その理屈を言葉にして教えてくれる人なんです。「これはなぜこうなっているか」「これはどういう効果があるか」という説明を細かくしてくださって、「ああ、そうだったのか!」とすごく納得できました。小池先生がよく言われるのは、「キャラクターを立てるとはどういうことか」について。“キャラクターが立っている(個性ある人物として特徴づいている)”具体例をいくつも挙げてくださるんですが、そうすると正解は無限にあることがわかるんです。キャラクターとなる要素はさまざまにあるし、作者の試行錯誤の結果“立ったキャラクター”は無数にいて、それぞれが正解です。だけどほかの人が考えて発表したものは新味がないので、既に出た正解は使っちゃいけないものになる。ですから答えはどんどん減ってゆくのだけれども、そんな中でも、キャラクターづくりの決まりごと・方程式はあるのだな、とわかってきました。

月刊ヒーローズ創刊5周年特集 Index
第1回 糸井重里×白井勝也
第2回 樹林伸×白井勝也
第3回 高橋留美子×白井勝也
「月刊ヒーローズ1月号」/ 2016年12月1日発売 / 200円 / 小学館クリエイティブ
「月刊ヒーローズ1月号」
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高橋留美子(タカハシルミコ)
高橋留美子

1957年10月10日新潟県生まれ。日本女子大学卒業。大学在学中の1978年に「勝手なやつら」で第2回小学館新人コミック大賞少年部門佳作を受賞し、同作が週刊少年サンデー(小学館)に掲載されデビューとなった。同年、同誌にて連載を開始した「うる星やつら」で、1981年に第26回小学館漫画賞、1987年には第18回星雲賞コミック部門を受賞。同作はテレビアニメ化もされ大ヒット、ヒロイン「ラムちゃん」は時代を超えて愛され続ける人気キャラクターとなった。また、劇場版となる「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」は押井守監督の出世作としても高い知名度を誇る。以降も「めぞん一刻」「らんま1/2」など歴史に残る人気作を数多く生み出し、代表作の殆どが映像化され、いずれも不動のヒットを記録している。2002年、「犬夜叉」にて第47回小学館漫画賞少年部門を受賞した。2009年より最新作「境界のRINNE」を執筆中。

白井勝也(シライカツヤ)

1942年生まれ。小学館最高顧問。1968年に小学館に入社し、少年サンデー編集部に配属され、「男組」(雁屋哲・池上遼一)、「まことちゃん」(楳図かずお)などを担当する。ビッグコミック副編集長を経て、1980年にはビッグコミックスピリッツの創刊編集長に就任。「めぞん一刻」(高橋留美子)、「美味しんぼ」(雁屋哲・花咲アキラ)などのヒット作を手がけ、創刊5年足らずで100万部雑誌に押し上げた。2016年、株式会社ヒーローズ代表取締役社長に就任。